自分の気持ちを誰かに話そうとしたとき、言葉に詰まって涙が出てきてしまう——。
そんな経験はありませんか? 大切な人や信頼している相手に、自分の本音や抱えている問題、過去の辛かった出来事などを打ち明けようとすると、なぜか声が震え、涙が止まらなくなる。
話したいのに話せない、そんな自分が情けない、どうして涙が出てしまうんだろう、と悩んでいる方もいるかもしれません。
自分の気持ちを話すときに涙が出るのは、決してあなただけではありません。多くの人が経験する可能性のある、心理的、あるいは生理的な反応です。この記事では、「自分の気持ちを話そうとすると泣いてしまう」という現象の理由や、それが病気と関連する可能性、そして涙との向き合い方や具体的な対処法について詳しく解説します。
自分の気持ちを話すときに涙が出てしまう原因は一つではなく、心理的な要因と生理的な要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。ここでは、主な理由を掘り下げて見ていきましょう。
心理的な原因
涙は感情の表れですが、「自分の気持ちを話す」という行為が、特定の感情を強く引き起こしたり、感情のコントロールを難しくさせたりすることがあります。
感情の抑圧や我慢
普段から自分の感情を表に出さず、内に秘めて我慢する傾向がある人は、いざ気持ちを言葉にしようとした時に、抑え込んでいた感情が一気に溢れ出しやすくなります。コップに少しずつ水が溜まっていき、最後の一滴で溢れ出すように、長年積み重ねてきた感情や経験が、話そうとした瞬間に解放されてしまうのです。
例えば、職場で不満があっても言えず、家族にだけ話そうとしたときに涙が出る。
友人関係で嫌なことがあっても笑顔でやり過ごし、一人になったり、本当に信頼できる人にだけ話そうとしたりした時に涙が止まらなくなる。
これは、普段感情を抑え込んでいる反動とも言えます。自分でも気づかないうちに、心の中に大きな負担を抱えている可能性があります。
過去の経験やトラウマ
過去に自分の気持ちを話したときに、傷つくような経験をしたことがある場合も、涙が出てしまう原因となります。例えば、
- 自分の悩みを話したら否定された
- 真剣な気持ちを打ち明けたのに笑われた、からかわれた
- 弱みを見せたら利用された
- 話したことで関係が悪くなった
- 過去のトラウマ(いじめ、虐待、喪失体験など)に関連する話をしようとした
このような経験があると、「また同じように傷つくのではないか」「どうせ理解してもらえないだろう」という恐れや不安が潜在的に働き、話そうとした瞬間に過去の痛みがフラッシュバックしたり、自己防衛反応として感情が溢れ出したりすることがあります。特に、過去に話すことでひどく傷ついた経験がある場合、無意識のうちに心が「これ以上傷つかないように」と涙を出して、それ以上話すことを止めようとする防衛機制が働くことも考えられます。特定の話題や、特定の相手に対してのみ涙が出やすい場合は、過去の経験が強く影響している可能性があります。
緊張や不安、パニック
自分の気持ちを話すという行為は、相手に自分自身の内面を見せることであり、非常にデリケートなことです。「うまく伝えられるだろうか」「相手はどう思うだろうか」「拒絶されたらどうしよう」といった様々な緊張や不安が伴います。
特に、自分の弱みやネガティブな感情、深刻な悩みを話す場合、自分がどのように評価されるか、関係性がどう変わるかといったことへの不安が大きくなります。このような緊張や不安が高まると、交感神経が優位になり、心拍数が上がったり、呼吸が浅くなったりといった身体的な変化が起こります。そして、話そうとして言葉を探したり、相手の反応を気にしたりするうちに、感情的な負荷が限界を超え、涙腺が刺激されて涙が出てしまうことがあります。
また、極度に緊張や不安が高まると、パニック状態に陥ることがあります。パニック状態では、思考がまとまらなくなり、呼吸が乱れ、体のコントロールが難しくなります。この時、感情も不安定になりやすく、涙が溢れ出てしまうこともあります。特に、人前で話すことに強い苦手意識があったり、過去に人前で失敗して恥ずかしい思いをした経験があったりする場合に起こりやすいかもしれません。
生理的な原因
感情は心理的な要因だけでなく、私たちの体内の状態にも深く関わっています。脳や神経系、ホルモンバランスといった生理的な側面も、感情の表現、特に涙として現れることに影響を与えます。
自律神経の乱れ
感情と自律神経は密接に関わっています。自律神経は、私たちの意識とは関係なく、内臓の働きや体温調節、心拍、呼吸などを調整している神経系です。交感神経と副交感神経の二つがあり、ストレスや緊張を感じると交感神経が優位になり、リラックスしている時には副交感神経が優位になります。
「自分の気持ちを話す」という行為は、多かれ少なかれ緊張やストレスを伴います。話している間は交感神経が優位になり、心臓がドキドキしたり、手に汗をかいたりすることがあります。そして、話終えたり、少し落ち着いたりした時に、緊張が解けて副交感神経が優位になります。この「緊張からの解放」のタイミングで、感情の制御が緩み、涙が出やすくなることがあります。
また、日頃からストレスが多い生活を送っている場合や、睡眠不足、不規則な生活などで自律神経のバランスが崩れていると、感情の揺れ幅が大きくなり、些細なことでも涙が出やすくなることがあります。気持ちを話そうとした時の緊張が引き金となり、不安定な自律神経が過剰に反応して涙が出てしまう、ということも考えられます。
ホルモンバランス
ホルモン、特に女性ホルモンは感情の安定に大きな影響を与えます。女性の場合、生理前や生理中、妊娠・出産期、更年期など、ホルモンバランスが大きく変動する時期には、感情が不安定になりやすく、些細なことでイライラしたり、悲しくなったり、涙が出やすくなったりすることがあります。
特に、感情を司る脳の部位はホルモンの影響を受けやすいと言われています。自分の気持ちを話そうとしたときに、ただでさえ感情が揺れ動きやすい状況で、ホルモンバランスの乱れが加わることで、感情のコントロールがより一層難しくなり、涙が止められなくなる可能性があります。これは病気というよりは、ホルモン周期に伴う自然な体の反応の一つと言えますが、日常生活に支障が出るほど感情の波が大きい場合は、婦人科や精神科に相談することも検討できます。
男性においても、男性ホルモン(テストステロン)のバランスが感情に影響を与える可能性が指摘されていますが、一般的には女性ホルモンほど感情の揺れとの関連が強く語られることは少ないかもしれません。しかし、男性もホルモンバランスの乱れから体調や精神状態に影響が出ることはあり得ます。
HSP(非常に感受性が強い人)との関連
HSP(Highly Sensitive Person)とは、生まれつき非常に感受性が強く、周囲の刺激を深く処理する特性を持つ人のことです。病気や障害ではなく、気質、パーソナリティの一つと考えられています。HSPの人は、五感からの情報、他人の感情、雰囲気などを敏感に察知し、深く考え込む傾向があります。
HSPの特性を持つ人は、自分の内面や感情にも非常に敏感です。そのため、自分の気持ちを話そうとしたときに、その感情を深く感じ取り、それに伴う身体的な反応(心臓がドキドキするなど)も強く認識しやすい傾向があります。また、相手の表情や声のトーン、場の雰囲気なども敏感に察知し、それが自分の話している内容とどう関連しているかを深く処理しようとします。
このような深い処理や高い感受性ゆえに、自分の気持ちを言葉にする過程で、様々な感情や思考が同時に湧き上がり、それが一気に溢れ出す形で涙として現れやすいと考えられます。HSPの人は、相手に共感しすぎて感情が揺さぶられたり、自分自身の感情の機微を捉えすぎて圧倒されたりすることもあるため、気持ちを話すという行為が感情的な負荷となり、涙につながることがあります。
HSPであること自体は問題ではありませんが、その特性によって日常生活で困難を感じている場合は、HSPの理解を深めたり、相談できる専門家を見つけたりすることが役立つことがあります。

- 当日受診OK!平日0時まで対応可能
- スマホで完結通院・待合室ゼロ
- 即日診断書発行!休職・傷病手当サポート
- うつ・適応障害・不眠など精神科対応
- 100%オンライン薬の配送まで完結
自分の気持ちを話すと泣いてしまうのは病気?
自分の気持ちを話すときに涙が出ることは、多くの場合は一時的な感情の溢れや心理的な反応であり、それ自体が直ちに「病気」と診断されるわけではありません。しかし、特定の状況や、他の症状と合わせて現れる場合には、何らかの精神的な不調や疾患のサインである可能性も考えられます。
どのような場合に病気の可能性を考えるべきか
涙が出る以外にも、日常生活に支障が出ているかどうかが、病気を考える上での重要な判断基準となります。例えば、以下のような状態が続く場合は、専門家(精神科医や心療内科医)に相談することを検討してみましょう。
- 涙が出ることで、大切な人間関係を築くことや維持することが困難になっている
- 仕事や学業に集中できない、行けなくなるなど、社会生活に支障が出ている
- 以前はできていたことができなくなる、興味や関心が失われる
- 食欲や睡眠に大きな変化がある
- 強い倦怠感や体の不調が続いている
- 自分自身を責めたり、価値がないと感じたりすることが多い
- 死について考えることがある
このような症状が複合的に見られる場合、単なる「涙もろさ」ではなく、背景に何らかの精神的な問題が隠れている可能性があります。
感情調節困難
感情調節困難とは、自分の感情の強度や持続時間をコントロールすることが難しい状態を指します。感情の起伏が激しかったり、一度特定の感情(怒り、悲しみ、不安など)に囚われるとそこから抜け出しにくかったりします。自分の気持ちを話す際に涙が止まらなくなるのも、感情調節困難の一症状として現れることがあります。
感情調節困難は、様々な精神疾患(例:境界性パーソナリティ障害、双極性障害の一部など)の症状として見られることがあります。また、発達障害(ADHDやASD)の特性として、感情の調整が苦手な場合もあります。感情調節困難が疑われる場合は、専門家による適切な診断と治療によって、感情との向き合い方やコントロール方法を学ぶことが有効です。
特定の精神疾患(例: 適応障害、うつ病など)
自分の気持ちを話すときに涙が出やすい、という症状は、特定の精神疾患のサインの一つとして現れることがあります。
- 適応障害: 明確なストレスの原因(人間関係の悩み、仕事の変化、喪失体験など)があり、それに対して過剰に反応し、抑うつ気分、不安、不眠、体の不調などと共に、感情のコントロールが難しくなり涙が出やすくなることがあります。ストレスの原因から離れると症状が改善することが多いのが特徴です。
- うつ病: 気分が強く落ち込み、興味や喜びを感じられなくなることに加え、些細なことでも涙が出やすくなることがあります。思考力や集中力の低下、食欲不振や過食、不眠や過眠、倦怠感、自分を責める気持ち、絶望感なども伴います。自分の気持ちを話そうとしても、言葉が出てこなかったり、感情が溢れ出して泣き崩れてしまったりすることがあります。
- 不安障害(社会不安障害など): 特定の状況(人前での発表、初対面の人との会話など)で強い不安や緊張を感じ、それが身体症状(動悸、発汗、震えなど)として現れる障害です。自分の気持ちを話すという行為自体が強い不安を伴い、それが高まることで涙が出てしまうこともあります。
これらの疾患は、自己診断が難しく、放置すると症状が悪化する場合もあります。もし、涙が出ること以外にも気になる症状があったり、日常生活に支障を感じていたりする場合は、早めに心療内科や精神科を受診し、専門医の診断を仰ぐことが大切です。適切な診断に基づいた治療やサポートを受けることで、症状を改善し、より穏やかな生活を送れるようになる可能性が高まります。
涙を抑えるための具体的な対処法・改善策
自分の気持ちを話すときに涙が出てしまうことに対して、一時的に涙を抑えるための「対処法」と、根本的に涙が出やすい体質や心理状態を改善していくための「改善策」があります。これらを組み合わせて試していくことが効果的です。
話す前にできる準備
話す前に心の準備をすることで、いざ話し始めた時の感情的な負担を軽減し、涙が出にくくすることができます。
感情を整理する練習
自分の気持ちを言葉にする練習を事前にしておくことは非常に有効です。
- ジャーナリング(書くこと): 誰かに話す前に、自分の気持ちや考えを紙に書き出してみましょう。頭の中だけで考えていると感情がぐちゃぐちゃになりがちですが、書き出すことで客観的に自分を見つめ、感情を整理することができます。「今どんな気持ちか」「何が辛いか」「どうしたいか」などを自由に書き出してみましょう。感情を言語化する練習になり、いざ話すときに言葉が出やすくなります。
- 話す内容をまとめる: 自分が伝えたいこと、話したいポイントを箇条書きなどでまとめてみましょう。話している途中で感情的になり、何が言いたかったのか分からなくなるのを防ぎます。話す順番を決めておくのも良いでしょう。
- 信頼できる人との予行練習: もし可能であれば、本当に信頼できる家族や友人に、本番の相手ではないと断った上で、練習として話を聞いてもらえないか頼んでみましょう。安全な場で話す練習をすることで、少しずつ慣れていくことができます。相手からのフィードバックがあれば、伝え方のヒントにもなります。
リラックス方法を試す
話す直前や話す少し前に、心身の緊張を和らげるリラックス方法を取り入れることで、感情の高ぶりを抑えることができます。
- 深呼吸: ゆっくりと鼻から息を吸い込み、お腹を膨らませ、口から細く長く吐き出す腹式呼吸を数回繰り返しましょう。呼吸に意識を集中することで、心拍数が落ち着き、リラックス効果が得られます。
- 筋弛緩法: 体の各部分(手、腕、肩、顔、首、背中、お腹、足など)に順番に力をぐっと入れ、数秒キープしてから一気に力を抜く、というのを繰り返します。体の緊張が和らぐのを感じられます。
- ストレッチや軽い運動: 体を動かすことで、溜まった緊張やエネルギーを解放することができます。話す前に少し散歩をしたり、簡単なストレッチをしたりするのも良いでしょう。
- 音楽を聴く: 落ち着いた音楽や好きな音楽を聴くことで、気分を落ち着かせることができます。
これらの準備をすることで、「話すこと」に対する心のハードルを下げ、落ち着いて臨めるようになります。
話している最中にできる工夫
話している最中に涙が出そうになったり、言葉に詰まったりした時に、その場でできる工夫です。
呼吸を整える
涙が出そうになったら、まずは意識的に呼吸を整えましょう。焦って浅い呼吸を繰り返すと、かえって感情が高まってしまいます。
- 一度話すのを中断し、ゆっくりと鼻から息を吸い込み、口から「ふーっ」と長く吐き出します。これを数回繰り返します。
- 呼吸に意識を集中することで、感情から少し注意をそらし、冷静さを取り戻す助けになります。
- 相手に「すみません、少し落ち着かせてください」などと伝えても大丈夫です。正直に伝えることで、相手も理解を示してくれるかもしれません。
視線をそらす
相手の目を見つめながら話すと、感情的な繋がりが強くなり、涙が出やすくなることがあります。
- 涙が出そうになったら、一時的に相手の目から視線を外し、少し遠くの壁や床などを見つめてみましょう。
- 視覚からの情報刺激を減らすことで、感情的な高ぶりを少し抑える効果が期待できます。
- これも、「少し考え事をしながら話しますね」などと相手に断りを入れ
ても良いでしょう。
(追加)水を飲む
手元に水があれば、一口ゆっくり飲んでみましょう。
- 水を飲むという行為は、生理的な活動であり、感情的な高ぶりから意識をそらすのに役立ちます。
- 喉を潤すことで、声の震えを落ち着かせる効果も期待できます。
- 間を置くことで、冷静になる時間を作ることができます。
これらの工夫は、あくまで一時的な「涙を止める」ためのテクニックです。完全に涙をなくすわけではありませんが、話すことを継続するための助けになることがあります。
根本的な改善を目指す方法
涙が出やすい状態を長期的に改善していくためには、心理的な側面や、必要であれば生理的な側面からのアプローチが必要です。
専門家(カウンセラー、医師)に相談する
自分一人で解決するのが難しいと感じる場合は、専門家を頼ることが最も有効な方法の一つです。
- カウンセラー: 心理カウンセラーは、感情のメカニズムや自分のパターンを理解する手助けをしてくれます。認知行動療法(CBT)やアクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)など、様々な手法を通じて、感情との向き合い方、思考パターンの改善、コミュニケーションスキルの向上などをサポートしてくれます。過去のトラウマが影響している場合は、EMDRのようなトラウマ専門の療法を行うカウンセラーもいます。
- 精神科医・心療内科医: 涙が出ることに加えて、うつ症状、強い不安、パニック発作、不眠など、他の精神的な不調を伴う場合は、精神科医や心療内科医を受診しましょう。医師は診断を行い、必要に応じて薬物療法を提案することがあります。例えば、不安や気分の落ち込みが強い場合に、抗うつ薬や抗不安薬が涙が出やすい状態を改善する助けとなることもあります。また、精神疾患が背景にある場合は、その疾患自体の治療が根本的な解決につながります。
- 専門家選びのヒント: どのような専門家に相談すれば良いか分からない場合は、まずはかかりつけ医に相談してみるか、地域の精神保健福祉センターなどに問い合わせてみるのも良いでしょう。カウンセリングと医療機関、どちらが良いかは状況によりますが、迷う場合はまず心療内科や精神科を受診して相談してみるのが一つの方法です。
信頼できる人に話す練習をする
安全だと感じられる関係性の中で、少しずつ自分の気持ちを話す練習を重ねることは、自信をつける上で非常に重要です。
- 共感的な聞き手を見つける: 自分の話を否定せず、批判せず、ただ「聴いてくれる」人を見つけましょう。話している最中に涙が出ても、「泣いちゃったんだね」と受け止めてくれるような相手です。
- 小さなことから始める: 最初から深刻な悩みを話す必要はありません。「今日あった嬉しかったこと」「ちょっとムカついたこと」など、日常の些細なことから話す練習を始めてみましょう。
- 話せた自分を褒める: 上手に話せなくても、涙が出てしまっても、話そうとしたこと、話せたこと自体を肯定的に捉えましょう。
自己肯定感を高める
自己肯定感が低いと、「どうせ自分の気持ちなんて理解してもらえない」「自分が悪いんだ」といった否定的な思い込みにとらわれやすくなります。これが話すことへの不安や恐れにつながり、感情の不安定さを引き起こすことがあります。
- 自分を受け入れる練習: 完璧でなくても、失敗しても、ありのままの自分を受け入れる練習をしましょう。自分の良いところだけでなく、欠点や弱みも自分の一部だと認めます。
- 成功体験を積み重ねる: 小さな目標を設定し、達成する経験を積み重ねることで、自信がつきます。例えば、「今日は一言でも自分の意見を言ってみよう」といった簡単な目標から始められます。
- ポジティブなセルフトーク: 自分に対して否定的な言葉(「どうしていつもこうなんだ」「やっぱりダメだ」)を使うのをやめ、「大丈夫」「次はきっとできる」といった肯定的な言葉を意識的に使うようにしましょう。
(追加)感情表現のスキルを学ぶ
自分の感情を認識し、それを適切に言葉で表現するスキルを学ぶことも有効です。
- 感情のボキャブラリーを増やす: 「嬉しい」「悲しい」だけでなく、「もどかしい」「心強い」「虚しい」など、様々な感情を表す言葉を知り、自分の感情に名前をつける練習をします。
- アサーティブコミュニケーション: 相手を尊重しつつ、自分の気持ちや意見を正直に伝えるコミュニケーション方法を学びます。これは、自分の感情を押し殺すことなく、かといって攻撃的になることもなく、健全に自己表現するためのスキルです。関連書籍を読んだり、セミナーに参加したりすることもできます。
これらの対策を一つずつ試していくことで、少しずつでも変化を感じられる可能性があります。焦らず、自分のペースで取り組むことが大切です。
まとめ:涙が出てしまう自分と向き合う
自分の気持ちを話そうとすると涙が出てしまう現象は、決してあなたが弱いからでも、おかしいからでもありません。それは、あなたの心が一生懸命に感情を処理しようとしているサインであり、もしかしたら長年蓋をしてきた感情や、抱えきれないほどの緊張や不安が溢れ出しているのかもしれません。涙が出ることは、あなたの感情が豊かであること、そしてその感情を大切にしようとしている証とも言えます。
感情を抑圧しすぎることは、心身の健康にとって良いことではありません。涙として感情が外に出ることは、ある意味でカタルシス(感情の浄化)になり得る側面もあります。だからといって、TPOをわきまえずに泣いてしまうことで困っている場合は、やはり対処法を知り、練習を重ねる必要があります。
この記事で解説したように、涙が出てしまう原因は心理的なもの、生理的なもの、あるいはHSPのような気質的なもの、またはそれらが複合的に影響している可能性があります。そして、それが一時的な反応なのか、あるいは何らかの精神的な不調のサインなのかを見極めることも重要です。
もし、涙が出ることによって日常生活に大きな支障が出ている、または他の気になる症状(気分の落ち込み、不眠、食欲不振など)を伴う場合は、一人で悩まずに専門家(カウンセラーや精神科医)に相談することを強くお勧めします。専門家は、あなたの状況を理解し、適切な診断や、感情との向き合い方、コミュニケーション方法など、あなたに合ったサポートを提供してくれます。
また、話す前に感情を整理したりリラックスしたりする準備、話している最中に呼吸や視線をコントロールする工夫など、実践できる対処法はたくさんあります。そして、信頼できる人との間で少しずつ話す練習を重ねたり、自己肯定感を高めたりといった、根本的な改善に向けた取り組みも長期的にあなたを助けてくれるでしょう。
涙が出てしまう自分を否定したり、責めたりしないでください。まずは「こんな自分もいるんだな」と受け止めることから始めてみましょう。そして、一つずつ、できることから対策を試してみてください。あなたの心が少しでも楽になり、穏やかな気持ちで自分の気持ちを表現できるようになることを願っています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。ご自身の状況については、必ず医療機関を受診し専門医の診断を仰いでください。