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パニック障害とは?症状・診断基準・セルフチェックで知る自分の心と体
パニック障害の症状に不安を感じている方へ。
もしかして、突然の動悸や息苦しさ、めまいなどに襲われた経験はありませんか?
それは、パニック発作かもしれません。
パニック障害は、このパニック発作が繰り返し起こり、また発作が起きるのではないかという強い不安(予期不安)や、発作を避けるための行動(回避行動)によって、日常生活に支障が出ることがある心の病気です。
パニック障害について、厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス」サイトhttps://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_panic.htmlでは、「突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えなどの体の異常が現れ、このまま死んでしまうのではないかというような強い不安感に襲われる病気」と説明されています。
済生会のウェブサイトhttps://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/panic_disorder/でも、詳しい症状や治療法について解説されています。
この記事では、パニック障害の症状、診断基準、初期サイン、そしてご自身でできるセルフチェックについて詳しく解説します。
自分の状態を知る第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。
ただし、この記事はあくまで情報提供であり、ご自身の状態を正確に判断するためには専門家への相談が不可欠です。
パニック発作の主な症状(DSM-5より)
パニック発作は、強い不安や恐怖とともに、様々な身体的・精神的な症状が突然ピークに達するエピソードです。
通常、数分以内に症状が最も強くなり、多くは20~30分、長くても1時間以内にはおさまります。
しかし、その間の苦痛は非常に強く、死ぬのではないか、気が狂うのではないか、といった恐怖を感じる方もいます。
アメリカ精神医学会が発行する精神疾患の診断・統計マニュアル「DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)」では、パニック発作で現れる可能性のある症状として13の項目が挙げられています。
これらのうち、4つ以上の症状が突然出現し、10分以内にピークに達する場合がパニック発作と定義されています
[参照元: 済生会、中野区立図書館資料より引用・要約]。
パニック発作で現れる13の身体的・精神的症状
パニック発作中に現れる可能性のある具体的な症状は以下の通りです。
これらの症状は、実際に身体の病気があるわけではないのに、脳の誤作動によって引き起こされると考えられています。
1. 動悸、心臓がどきどきする、または脈拍が増える:
心臓がバクバクと激しく打つ、心臓が飛び出しそうに感じるなど、心臓の動きが普段より速く、強く感じられます。
不安や恐怖が高まることで、心臓の拍動が異常に速くなる感覚です。
2. 発汗:
特別な運動や暑さがないにも関わらず、大量の汗をかきます。
冷や汗や、顔や手のひらにじっとりとした汗が出ることもあります。
3. 身震いまたはふるえ:
体全体や手足が小刻みに震えたり、カタカタと震えが止まらなくなったりします。
緊張や恐怖によって筋肉がこわばり、震えが生じることがあります。
4. 息切れ感または窒息感:
息を吸っても空気が入ってこない感じ、喉が締め付けられる感じ、息が苦しいと感じるなど、呼吸が困難になる感覚です。
実際に呼吸器に問題があるわけではなく、過呼吸(過換気)になることもあります。
5. 窒息しそうな感覚:
文字通り、息ができなくなり窒息してしまうのではないかという強い恐怖を感じます。
喉に何かが詰まったような感覚や、呼吸が止まってしまうような感覚を伴います。
6. 胸痛または胸部不快感:
胸のあたりに締め付けられるような痛みや圧迫感を感じます。
心臓発作ではないかと強い不安を感じることも多い症状です。
7. 嘔気または腹部不快感:
吐き気がする、お腹がムカムカする、お腹の調子が悪くなるなど、消化器系の不調を感じます。
強い不安が胃腸の働きに影響を与えます。
8. めまい、ふらつき、頭が軽くなる感じ、または今にも倒れそうな感じ:
周囲が回っているように感じたり、自分がグラグラ揺れているように感じたりします。
立っていられなくなる、倒れてしまうのではないかという不安を伴います。
脳への血流の変化などが関係していると考えられています。
9. 寒気または熱感:
体温調節がうまくいかなくなり、急に体が冷えたり、逆に熱っぽく感じたりします。
悪寒が走る、ゾクゾクするといった感覚や、顔や体が熱くカーッとなる感覚があります。
10. 感覚麻痺またはピリピリ感:
手足や顔などがしびれたり、チクチク、ピリピリとした感覚異常が現れます。
過呼吸などによって、体内の酸素や二酸化炭素のバランスが崩れることで起こることがあります。
11. 現実感消失(現実でない感じ)または離人感(自分から離れている感じ):
周囲の現実感がなくなり、夢の中にいるような、ぼやけて見えるような感覚(現実感消失)。
あるいは、自分が自分の体から離れて、外から自分を見ているような感覚(離人感)。
強いストレスや不安によって、自分や周囲とのつながりが感じられなくなる感覚です。
12. コントロールを失うこと、または狂ってしまうことに対する恐れ:
このまま自分を抑えきれなくなってしまうのではないか、気が狂って発狂してしまうのではないか、という強い恐怖を感じます。
パニック発作中の異常な身体感覚や精神状態によって引き起こされます。
13. 死ぬことに対する恐れ:
パニック発作中の胸痛や息苦しさから、心臓発作などで死んでしまうのではないかという強い恐怖を感じます。
特に初めての発作では、これが非常に強く現れます。
これらの症状は、パニック発作が起こるたびに全てが現れるわけではなく、個人によって現れる症状の種類や強さは異なります。
また、同じ人でも発作ごとに症状が違うこともあります。
重要なのは、これらの症状が「突然」現れ、短時間でピークに達し、強い苦痛や恐怖を伴うという点です
[参照元: 済生会]。
パニック障害の診断基準とは(DSM-5を参考に解説)
パニック障害は、単にパニック発作が起きるだけでなく、それが繰り返し起こり、その後の心理状態や行動に影響を及ぼすことが診断の重要なポイントとなります。
DSM-5では、パニック障害の診断基準として以下の点が挙げられています
[参照元: 済生会、中野区立図書館資料より引用・要約]。
診断基準(DSM-5参考):
A. 予期せぬパニック発作の繰り返しがある。
B. 少なくとも1つの発作の後に、1ヶ月以上にわたって以下のいずれか1つ(またはそれ以上)がある。
1. その後のパニック発作またはその結果(例:コントロールを失う、心臓発作を起こす、狂ってしまう)について持続的に心配する。
2. 発作に関連した行動において、著しい不適応的な変化を示す(例:パニック発作を避けるような行動、運動を避ける、慣れない場所を避ける)。
C. この障害が、物質(例:薬物乱用、医薬品)または他の医学的状態(例:甲状腺機能亢進症、心血管疾患)の生理学的作用によるものではない。
D. この障害が、他の精神疾患(例:社交不安症で社会的な状況に反応して生じるパニック発作、強迫症で強迫観念に反応して生じるパニック発作、心的外傷後ストレス障害で外傷的な出来事の想起に反応して生じるパニック発作、分離不安症で愛着の対象から離れることへの暴露に反応して生じるパニック発作、広場恐怖症で広場恐怖の状況に反応して生じるパニック発作)によってうまく説明されない。
簡単に言うと、パニック障害は「思いがけずパニック発作が何度も起こり、そのせいでまた発作が起きるんじゃないかと常に不安になったり、発作が怖いから特定の場所や状況を避けるようになったりして、日常生活に困っている状態」と言えます。
パニック発作が繰り返し起こる
診断基準の最初のポイントは、「予期せぬパニック発作」が「繰り返し」起こることです。
「予期せぬ」というのは、特に不安になるような状況やストレスがかかる状況ではない時に、突然発作が起こるという意味です。
例えば、自宅でリラックスしている時、寝ている時、買い物をしている時など、何のきっかけもなく発作が始まることがあります。
パニック発作は誰にでも一度くらい起こりうる可能性はありますが、パニック障害と診断されるためには、複数回、予期せぬ発作を経験している必要があります。
最初の発作は、強い身体症状に驚き、救急車を呼んだり、病院で検査を受けたりすることが多いです。
そこで身体的な異常が見つからない場合、初めて精神的な原因が考えられるようになります。
発作後の予期不安や回避行動
パニック障害の診断において、パニック発作そのものと同じくらい、あるいはそれ以上に重要視されるのが、発作が起こった後の心理状態と行動の変化です
[参照元: 済生会]。
予期不安(Anticipatory Anxiety):
これは、「またパニック発作が起こるのではないか」という、発作が起こっていないときにも持続的に感じる強い不安です。
一度激しいパニック発作を経験すると、「次にいつ、どこで、どんな発作が起きるのだろうか」という恐れが頭から離れなくなり、常に緊張感や不安感を抱えるようになります。
この予期不安は、発作そのものがない間も続くため、日常生活の質を著しく低下させます。
回避行動(Avoidance Behavior):
予期不安が強くなると、パニック発作が起こりそうな場所や状況を避けるようになります。
例えば、過去に電車の中で発作を起こした場合、電車に乗るのを避けるようになる、といった行動です。
回避行動は、発作を恐れるあまり、行動範囲を狭めてしまい、結果的に社会生活や仕事、学業に支障をきたします。
回避行動の例:
- 電車やバス、飛行機などの公共交通機関を避ける
- 人混みや狭い場所(劇場、映画館、スーパーなど)を避ける
- 一人で外出するのを避ける
- 高速道路やトンネルを避ける
- 美容院や歯医者など、すぐにその場を離れられない場所を避ける
- 運動や入浴など、心拍数が上がることを避ける
- アルコールやカフェインを避ける
- 家に引きこもりがちになる
これらの回避行動は、一時的には安心感をもたらすかもしれませんが、長期的には不安を強化し、パニック障害を悪化させることにつながります。
回避すればするほど、「あの場所は危険だ」「一人では大丈夫ではない」という誤った学習が強化されてしまうからです。
パニック障害の診断では、これらの予期不安や回避行動が1ヶ月以上続いているかどうかが確認されます。
単に一度か二度発作があっただけではパニック障害とは診断されません
[参照元: 済生会]。
パニック障害かもしれない?セルフチェックリスト
ご自身の症状がパニック障害によるものかもしれないと不安に思っている方もいるかもしれません。
ここで紹介するセルフチェックリストは、パニック障害によく見られる症状や傾向をまとめたものです。
ご自身の状態を振り返るための参考にしてみてください。
ただし、このチェックリストはあくまで目安です。
これだけでパニック障害と診断することはできません。
チェックリストに多く当てはまる場合や、日常生活に支障が出ている場合は、必ず専門家の診断を受けるようにしてください。
チェックリストの活用方法と注意点
セルフチェックリストに取り組む前に、以下の点に注意してください。
- 最近1ヶ月間の症状や経験を振り返ってみましょう。
- 当てはまる項目の数だけでなく、それぞれの症状の頻度や強さ、それによって日常生活にどれくらい困っているかも考えてみましょう。
- もし過去にパニック発作のような経験がある場合、その時だけでなく、その後の心理状態や行動の変化(また発作が起きるのではないかという不安や、特定の場所を避けるようになったかなど)も思い返してみましょう。
- これは医療行為ではなく、自己診断のためではありません。
あくまでご自身の状態を整理し、専門家への相談を検討するためのツールとして活用してください。 - チェック結果に過度に囚われすぎず、不安が強い場合は早めに専門家(精神科や心療内科など)に相談しましょう。
セルフチェック項目
以下の項目について、ご自身に当てはまるかチェックしてみましょう。
過去1ヶ月間に、特に理由がないのに、突然以下の症状のうち4つ以上が一度に現れ、すぐにピークに達したことがありましたか?(パニック発作の経験)
項目 | はい/いいえ |
---|---|
( ) 心臓がドキドキしたり、脈が速くなったりする | |
( ) 汗をたくさんかく | |
( ) 体が震えたり、身震いしたりする | |
( ) 息苦しさを感じる、息が吸えない感じがする | |
( ) 喉が詰まったように感じる、窒息しそうな感覚がある | |
( ) 胸が痛い、または胸に不快感がある | |
( ) 吐き気がする、お腹の調子が悪い | |
( ) めまいがする、ふらつく、倒れそうになる | |
( ) 寒気や熱感がある | |
( ) 手足や体がしびれたり、ピリピリしたりする | |
( ) 周囲の現実感が薄れる、自分が自分ではない感じがする | |
( ) コントロールを失ったり、気が狂ったりするのではないかと怖い | |
( ) 死んでしまうのではないかと怖い |
上記のパニック発作のような経験をした後、以下のいずれかの状態が1ヶ月以上続いていますか?
項目 | はい/いいえ |
---|---|
( ) 「またパニック発作が起こるのではないか」と、発作が起きていない間も常に不安を感じている(予期不安) | |
( ) パニック発作が起きそうな場所や状況(例:電車、人混み、一人での外出など)を避けるようになった(回避行動) | |
( ) 上記の症状によって、日常生活(仕事、学校、家事、人付き合いなど)に支障が出ている |
上記の症状や不安は、薬や病気(例:甲状腺の病気、心臓の病気など)が原因ではないと思いますか?
- ( ) はい
- ( ) いいえ
上記の症状や不安は、他の心の病気(例:強い人見知り、特定の怖いもの、トラウマ体験など)によって説明できるものではないと思いますか?
- ( ) はい
- ( ) いいえ
チェック結果について:
パニック発作の項目で4つ以上当てはまる経験があり、さらにその後の心理状態・行動の変化の項目にも1つ以上当てはまるものが1ヶ月以上続いている場合、パニック障害の可能性が考えられます
[参照元: DSM-5診断基準より]。
これらの症状が、薬や他の病気、他の精神疾患ではうまく説明できない場合、よりパニック障害の可能性が高まります。
繰り返しになりますが、これは自己診断ではありません。
チェックリストの結果に一喜一憂せず、不安を感じる場合は専門家への相談を検討してください。
パニック障害の初期症状や前触れ
パニック障害は、多くの場合、突然のパニック発作から始まります。
それまで特に心の病気の経験がない人が、ある日突然、激しい動悸や息苦しさ、めまいなどに襲われ、強い恐怖を感じるという形で最初の発作を経験することが多いです。
最初の発作は突然起こることが多い
最初のパニック発作は、本当に予期せぬ状況で起こることが多いです。
例えば、電車に乗っている時、買い物中にレジに並んでいる時、会議中、あるいは自宅でくつろいでいる時など、特に「怖い」と感じるような明確なきっかけがないのに、急に身体の異常を感じ始めます。
この時、多くの人は「心臓発作だ」「このまま死んでしまう」と考え、非常に強い恐怖に襲われます。
救急車を呼んだり、病院の救急外来を受診したりするケースがよく見られます。
病院で様々な検査を受けても、身体には異常が見つからず、「ストレスですね」「疲れでしょう」などと言われることも少なくありません。
しかし、本人の苦痛や恐怖は本物であり、身体的な問題がないと分かっても、「あの苦しさがまたいつ襲ってくるか分からない」という不安が残ります。
これが、後に続く予期不安や回避行動の始まりとなることがあります。
最初の発作の前に、漠然とした体調不良や、少しのめまい、動悸などを感じていたという人もいますが、多くの場合は「青天の霹靂」のように突然起こります。
予期不安が現れる時期
パニック障害の診断基準でも述べたように、パニック障害は単発のパニック発作だけではありません。
繰り返しパニック発作が起こること、そして発作を経験した後に「また発作が起きるのではないか」という予期不安が現れることが特徴です。
予期不安は、最初の発作の後、または数回の発作を経験した後に現れることが多いです。
一度強い恐怖を伴う発作を経験すると、脳はその時の状況や身体感覚を「危険なもの」として記憶します。
そして、似たような状況になったり、少しでも身体に異変を感じたりすると、「これもしかして発作の前触れでは?」と過敏に反応するようになります。
予期不安が強くなると、常に緊張感があり、リラックスできなくなります。
ちょっとした身体のサイン(例:心臓が少しドキドキする、少し息苦しい)に過剰に反応し、それがさらなる不安を引き起こすという悪循環に陥ることもあります。
また、予期不安と並行して、あるいは予期不安の結果として回避行動が現れます。
「あの場所で発作が起きたから、もう二度と行かない」「一人だと発作が起きた時に助けを呼べないかもしれないから、一人で外出しない」といった形で、行動範囲が徐々に狭まっていきます。
初期の段階では、パニック発作はたまにしか起きないかもしれませんし、予期不安や回避行動もまだ軽いかもしれません。
しかし、これらのサインが見られる場合は、パニック障害に発展する可能性があるため、注意が必要です。
早めに自分の状態に気づき、専門家への相談を検討することが、症状の悪化を防ぎ、早期回復につながります。
軽度のパニック障害の症状
「パニック障害」と聞くと、激しい発作で寝込んでしまうような重い状態をイメージするかもしれません。
しかし、パニック障害の症状の程度には幅があり、比較的軽度な状態で経過する人もいます。
軽度のパニック障害の場合でも、パニック発作は起こりますが、頻度が少なかったり、症状が比較的軽く短時間でおさまったりする場合があります。
また、発作後の予期不安や回避行動も、重度の場合ほど顕著ではないことがあります
[参照元: 済生会]。
軽度でも現れる身体症状
軽度の場合でも、パニック発作の際にはDSM-5で挙げられているような身体症状が現れます。
ただし、症状の数や強さが少ない場合があります。
例えば、激しい動悸や息苦しさだけでなく、めまいや吐き気、手足のしびれといった症状が中心だったり、「あれ?いつもと違うな」と感じる程度の身体の異変で済んだりすることもあります。
軽度なパニック発作の例:
- 電車に乗っていると、急に少し心臓がドキドキし始めて、息が詰まるような感じがしたが、数分で自然におさまった。
- 人混みの中で、フワフワとしためまいを感じ、少し吐き気がしたが、すぐにその場を離れたら楽になった。
- 自宅でリラックスしている時、突然手がピリピリし始めて、軽い寒気を感じたが、横になっていたら落ち着いた。
これらの症状は、一時的な体調不良や気のせいだと見過ごされてしまうこともあります。
しかし、もしこれらのエピソードが繰り返し起こり、その度に「またあの症状が出たらどうしよう」という不安が残るようになったり、その状況を避けるようになったりする場合は、軽度であってもパニック障害のサインである可能性があります。
症状の程度は個人差がある
パニック障害の症状は、個人によって現れ方が大きく異なります
[参照元: 済生会]。
発作の頻度、強度、症状の種類、予期不安の強さ、回避行動の範囲など、全ての人に全く同じ症状が現れるわけではありません。
症状の程度の違いの例:
- 発作の頻度: 週に何度も発作が起こる人もいれば、月に数回、あるいは数ヶ月に一度しか起こらない人もいます。
- 発作の強度: 寝込んでしまうほど激しい発作が起こる人もいれば、少し不快な程度でおさまる人もいます。
- 予期不安: 常に発作への強い恐れを感じている人もいれば、発作が起きた状況に関連する時だけ少し不安になる人もいます。
- 回避行動: 家から一歩も出られなくなる人もいれば、特定の場所(例:電車)だけを避ける人もいます。
たとえ症状が軽度であっても、繰り返し起こるパニック発作や、それに伴う予期不安、回避行動は、本人の苦痛が大きく、生活の質を低下させる可能性があります。
また、軽度の状態から、ストレスや体調によって症状が進行し、重度になる可能性も否定できません。
「これくらい大したことないだろう」と自己判断せず、少しでも気になる症状がある場合は、専門家に相談してみることをおすすめします。
早期に適切な対応を始めることで、症状の悪化を防ぎ、回復への道を歩み始めることができます。
パニック障害になりやすい人の特徴
パニック障害は誰にでも起こりうる可能性のある病気ですが、特定の性格傾向や気質、あるいは環境要因が関わっていると考えられています。
ただし、これらに当てはまる人が必ずパニック障害になるわけではなく、あくまで「なりやすい傾向がある」ということです。
性格や気質
パニック障害になりやすい人の性格や気質としては、以下のような傾向が挙げられることがあります。
- 繊細で感受性が強い: 物事を深く考えすぎたり、他人の感情に敏感だったりする人は、ストレスや不安を感じやすい傾向があります。
- 真面目で責任感が強い: 「こうあるべきだ」という理想が高く、手を抜くことが苦手な人は、自分自身にプレッシャーをかけやすく、ストレスを溜め込みやすい可能性があります。
- 完璧主義: 全てを完璧にこなそうとしすぎると、失敗への恐れが強くなり、不安を感じやすくなります。
- 心配性: 未来の出来事や起こるかどうかも分からないことを過度に心配する傾向がある人は、不安を感じやすい状態にあると言えます。
- 内向的で感情を内に溜め込みやすい: 自分の感情をうまく表現したり、他人に頼ったりするのが苦手な人は、ストレスや不安を一人で抱え込みがちになります。
- 人に頼るのが苦手: 困った時に人に助けを求めるのが苦手な人は、孤立感を感じやすく、ストレスへの対処が難しくなることがあります。
- 身体の感覚に敏感(内受容感覚過敏): 自分の心臓の動きや呼吸、胃腸の動きなど、身体内部の感覚に人一倍気づきやすく、少しの変化にも過剰に反応しやすい傾向がある人もいると考えられています。
これらの性格傾向は、必ずしも悪いものではありません。
しかし、これらの傾向が強い場合、ストレスや不安に対処する際に工夫が必要になることがあります。
ストレスや環境要因
性格や気質だけでなく、人生における様々なストレスや環境の変化も、パニック障害の発症に関わっていると考えられています
[参照元: 済生会]。
主なストレス・環境要因の例:
- ライフイベント:
身近な人との死別や離別
結婚、出産、育児
引越し、転職、異動
人間関係のトラブル(家族、友人、職場の同僚など)
経済的な問題
大きな病気や怪我 - 慢性的ストレス:
仕事での過労や責任過多
育児や介護の負担
長期間にわたる人間関係の悩み - 身体的要因:
睡眠不足、不規則な生活
疲労の蓄積
カフェインやアルコールの過剰摂取
喫煙
風邪やインフルエンザなどの感染症
女性ホルモンの変動(月経周期、妊娠、産後、更年期など)
特定の薬の副作用 - 過去の経験:
幼少期のトラウマ(虐待、ネグレクト、いじめなど)
過去に経験した強い恐怖体験
これらのストレスや環境要因が重なることによって、心身のバランスが崩れ、パニック障害を発症しやすくなると考えられています。
特に、ストレスをうまく解消できなかったり、頼れる人がいなかったりする状況では、リスクが高まる可能性があります。
しかし、ストレスや環境要因はあくまできっかけの一つであり、それだけでパニック障害になるわけではありません。
生物学的な要因や心理的な要因など、様々な要素が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
パニック障害の原因とは
パニック障害の原因は一つだけではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
大きく分けて、「生物学的要因」と「心理・社会的要因」があります
[参照元: 済生会]。
生物学的要因
パニック障害の発症には、脳の機能や神経伝達物質の異常といった生物学的な要因が関わっていると考えられています。
- 脳機能の異常:
パニック障害の患者さんでは、脳の特定の領域(扁桃体や海馬など、情動や記憶に関わる部分)の活動に異常が見られるという研究報告があります。
特に、恐怖や不安を感じる脳の警報システムが過剰に反応してしまうことがパニック発作につながると考えられています
[参照元: 済生会]。 - 神経伝達物質のバランスの乱れ:
脳内の神経伝達物質、特にセロトニンやノルアドレナリン、GABA(γ-アミノ酪酸)などのバランスが崩れることが関与していると考えられています
[参照元: 済生会]。
セロトニン: 感情や気分の調節に関わっています。
セロトニンの機能異常が不安を引き起こす可能性があります。
ノルアドレナリン: 覚醒やストレス反応に関わっています。
「闘争か逃走か」反応に関わる物質で、パニック発作時の心拍数増加や発汗などの身体症状に関与していると考えられています。
GABA: 脳の興奮を抑える働きがあります。
GABAの機能が低下すると、脳が過剰に興奮しやすくなり、不安やパニック発作を引き起こす可能性があります。 - 遺伝的要因:
パニック障害は、家族の中にパニック障害や他の不安障害の人がいる場合に発症しやすいという研究報告があります
[参照元: 済生会]。
これは、パニック障害になりやすい体質や気質が遺伝する可能性を示唆していますが、特定の遺伝子だけで発症が決まるわけではありません。
遺伝的な素因に、後述する心理・社会的要因やストレスが加わることで発症すると考えられています。 - 呼吸・循環系の過敏性:
パニック障害の患者さんの中には、呼吸や心拍数の変化に過敏に反応しやすい人がいます。
例えば、軽い息切れや動悸でも、「息ができない」「心臓がおかしい」と過剰に恐れ、それがさらなる身体症状や不安を引き起こし、パニック発作につながることがあります。
心理・社会的要因
生物学的な素因がある人に、以下のような心理的・社会的な要因が加わることでパニック障害が発症したり、症状が悪化したりすると考えられています。
- ストレス:
就職、転勤、結婚、出産、親しい人との離別や死別など、人生における大きな変化や、慢性的なストレス(仕事での過労、人間関係の悩みなど)は、パニック障害の強力な誘因となり得ます
[参照元: 済生会]。
ストレスによって心身のバランスが崩れ、脳の不安システムが過剰に反応しやすくなると考えられています。 - 認知の歪み:
パニック障害の患者さんには、身体の感覚を破局的に解釈する傾向が見られることがあります。
例えば、軽い動悸を「心臓発作だ」と判断したり、少しのめまいを「倒れてしまう」と判断したりするなど、実際よりもはるかに危険だと捉えてしまう考え方です。
このような認知の歪みが、身体症状を過度に恐れ、パニック発作を引き起こしたり悪化させたりすることにつながります。 - 不安感への恐れ(Fear of Fear):
パニック発作を経験した後、「またあの怖い思いをするのではないか」という不安(予期不安)自体を過度に恐れるようになることがあります。
不安を感じることそのものが怖くなり、不安を避けるために行動を制限するようになります。 - 学習:
一度パニック発作を経験した場所や状況(例:電車の中、人混み)と、強い恐怖や身体症状が結びついて学習されます(条件付け)。
その結果、その場所や状況に近づくだけで不安を感じたり、避けるようになったりします。 - 過去のトラウマ体験:
幼少期に虐待やネグレクト、親との早期離別などのトラウマ体験がある人は、パニック障害を含む不安障害を発症するリスクが高まるという報告があります。
パニック障害は、これらの要因が単独で働くのではなく、複数の要因が相互に影響し合いながら発症すると考えられています。
そのため、治療においても、薬物療法で脳のバランスを整えるアプローチと、精神療法で考え方や行動パターンを変えていくアプローチ、そして生活習慣の改善といった多角的なアプローチが有効とされています
[参照元: 済生会]。
パニック障害に似た病気との見分け方
パニック障害の症状は、他の様々な病気と似ていることがあります。
そのため、正確な診断のためには、これらの病気との鑑別が非常に重要です。
専門家は、問診や検査を通じて、他の可能性を除外しながら診断を行います
[参照元: 済生会]。
身体的な病気との鑑別
パニック発作で現れる身体症状(動悸、息切れ、胸痛、めまい、吐き気など)は、身体の病気の症状と非常に似ています。
そのため、パニック障害が疑われる場合でも、まずは身体的な病気がないか確認することが大切です
[参照元: 済生会]。
パニック障害と似た身体的な病気の例:
- 心臓の病気:
不整脈、狭心症など。
パニック発作の動悸や胸痛と症状が似ています。
心電図検査や心エコー検査などで鑑別が必要です。 - 呼吸器の病気:
喘息、過換気症候群(過呼吸)など。
息苦しさや呼吸困難感がパニック発作と似ています。
過換気症候群はパニック発作の一症状として起こることもありますが、呼吸器の病気自体も鑑別の対象となります。
呼吸機能検査などが行われることがあります。 - 内分泌系の病気:
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)。
動悸、発汗、手の震え、体重減少など、パニック発作と共通する症状が多くあります。
血液検査で甲状腺ホルモンの値を調べることが重要です。 - 神経系の病気:
てんかん(特に側頭葉てんかん)、めまい症など。
突然の意識障害や発作、めまいといった症状がパニック発作と似ていることがあります。
脳波検査やMRI検査などが行われることがあります。 - 低血糖:
特に糖尿病治療中の患者さんで起こりうる低血糖では、動悸、発汗、手の震え、めまい、不安感などの症状が現れることがあります。
血糖値を測定することで鑑別できます。 - カフェイン中毒:
カフェインを過剰に摂取すると、動悸、手の震え、落ち着きのなさ、不安感などの症状が出ることがあります。
これらの身体的な病気を見落とさないために、パニック発作のような症状で医療機関を受診した場合、医師はまず問診で症状の詳細を確認し、必要に応じて心電図、血液検査、レントゲン検査などの身体的な検査を行います。
これらの検査で異常が見られない場合に、精神的な原因、特にパニック障害が疑われることになります。
他の精神疾患との鑑別
パニック障害は他の精神疾患、特に不安障害と症状が似ている部分があるため、鑑別が重要です
[参照元: 済生会]。
パニック障害と似た他の精神疾患の例:
- 広場恐怖症:
パニック障害の診断基準にも含まれる概念ですが、DSM-5では独立した診断名としても挙げられています。
「すぐに逃げ出すことが困難な場所」や「助けが得られない可能性のある場所」に対する強い恐怖と回避が特徴です。
例えば、公共交通機関、広い場所(駐車場、市場)、閉鎖空間(店、映画館)、列に並ぶこと、人混みの中などに恐怖を感じ、避けます。
パニック障害に伴って現れることが多いですが、パニック発作がなくても広場恐怖症と診断される場合もあります。 - 特定の恐怖症:
特定の対象や状況(例:高所、閉所、昆虫、飛行機)に対する強い恐怖とその対象の回避が特徴です。
その対象に暴露された際に、パニック発作のような症状が起こることがあります。
パニック障害との違いは、恐怖の対象が明確に限定されている点です。 - 社交不安症(社会不安障害):
人前での言動や他人からの評価に対する強い不安と、そのような状況の回避が特徴です。
人前で話す、食事をする、字を書くといった特定の状況で強い不安を感じ、動悸、発汗、震えなどの身体症状が現れることがあります。
パニック発作との違いは、不安や症状が「社会的な状況」に限定されている点です。 - 全般性不安障害:
特定の状況だけでなく、様々なことに対して過剰で持続的な心配や不安を感じる病気です。
常に緊張していたり、落ち着きがなかったり、疲れやすかったりといった症状が現れます。
パニック発作のような急激で激しい症状よりも、慢性的で比較的軽い不安が続くのが特徴です。 - 心的外傷後ストレス障害(PTSD):
生命の危険に関わるような恐ろしい出来事(例:事故、災害、暴力)を経験した後に発症する可能性のある病気です。
その出来事を思い出させるような刺激に触れると、フラッシュバックや強い身体反応(動悸、発汗など)、パニック発作に似た症状が現れることがあります。
パニック障害との違いは、発作や不安が特定のトラウマに関連している点です。 - 強迫症(強迫性障害):
不合理だと分かっていても繰り返してしまう考え(強迫観念)と、その不安を打ち消すための行為(強迫行為)が特徴です。
強迫観念による強い不安が高まった時に、パニック発作に似た症状が現れることがあります。 - うつ病:
気分の落ち込み、興味や喜びの喪失が中心的な症状ですが、不安や焦燥感を伴うことも多く、パニック発作のような症状が一時的に現れることもあります。
これらの鑑別は専門的な知識を要するため、ご自身だけで判断するのは非常に困難です。
似たような症状がある場合でも、必ず専門家(精神科医や心療内科医)の診察を受け、正確な診断を得ることが治療の第一歩となります。
セルフチェックだけで判断せず専門家へ相談を
ここまでパニック障害の症状やセルフチェックリストについて解説してきましたが、繰り返し強調したいのは、この記事やセルフチェックリストはあくまで情報提供であり、自己診断のためではありませんということです。
自己判断の危険性
セルフチェックで多くの項目に当てはまったとしても、「やはり自分はパニック障害だ」と断定することは危険です。
その理由はいくつかあります。
- 他の病気の可能性を見落とす:
前述のように、パニック発作に似た症状は、心臓病、甲状腺機能亢進症、てんかんなど、他の身体的な病気によって引き起こされている可能性があります。
自己判断で「パニック障害だろう」と思い込んでしまい、これらの身体的な病気の発見が遅れてしまうと、適切な治療が受けられず、健康に重大な影響を及ぼす可能性があります。 - 他の精神疾患の可能性を見落とす:
パニック障害と症状が似ている精神疾患は他にも多くあります。
診断が異なれば、当然治療法も異なります。
自己判断で間違った病名に辿り着いてしまうと、適切な治療が受けられず、症状の改善が見られないだけでなく、かえって症状が悪化してしまうこともあります。 - 不正確な情報に基づく不安の増大:
インターネット上の情報やセルフチェックリストは、あくまで一般的な情報です。
個々の状況に合わせた正確な判断はできません。
自己判断で「自分は重症だ」と思い込んでしまい、不必要な不安を抱えたり、根拠のない治療法に手を出してしまったりする危険性があります。 - 適切な治療の開始が遅れる:
パニック障害は、適切な治療を受けることで症状の改善や寛解が見込める病気です。
しかし、自己判断で受診をためらったり、間違った対処法を続けたりしていると、症状が慢性化したり、日常生活への影響が大きくなってしまったりする可能性があります。
どこに相談すればいい?(精神科・心療内科など)
もし、ご自身の症状がパニック障害かもしれないと不安を感じたり、セルフチェックで多くの項目に当てはまったりした場合は、迷わず専門家に相談してください
[参照元: 厚生労働省、済生会]。
パニック障害や不安障害に関する相談先としては、主に以下の医療機関や専門家が挙げられます。
- 精神科:
精神科医は、精神疾患の診断と治療を専門としています。
パニック障害の正確な診断、薬物療法、必要に応じて精神療法などを提供できます。
パニック障害の治療経験が豊富な医師が多くいます。 - 心療内科:
心療内科は、心と体の両面から不調を診る診療科です。
特に、ストレスなどが原因で身体に症状が現れる「心身症」を専門としますが、パニック障害や他の不安障害なども診察の対象となります。
パニック発作による身体症状が強く、「まずは身体の病気ではないか心配」という方や、「ストレスによる体調不良かもしれない」と考えている方にとっては、心療内科が相談しやすいかもしれません。 - 精神保健福祉センター:
都道府県や指定都市が設置している公的な機関です。
心の健康に関する様々な相談に応じており、専門の相談員(精神保健福祉士、心理士など)が対応してくれます。
医療機関を受診する前に、まずは話を聞いてほしい、どこに相談すれば良いか知りたい、といった場合に利用できます。
費用がかからない場合が多いのも特徴です
[参照元: 厚生労働省 みんなのメンタルヘルス]。 - カウンセリングルーム/心理相談室:
臨床心理士や公認心理師などの心理専門家がカウンセリングを行います。
診断や薬の処方はできませんが、認知行動療法など、パニック障害の精神療法を受けることができます。
医師の診察と並行して利用することも有効です。
最初のステップとしては、まずお近くの精神科または心療内科を受診することをおすすめします。
そこで医師がしっかりと問診を行い、必要であれば身体的な検査や他の精神疾患の可能性も考慮しながら、正確な診断をつけてくれます。
診断がついた後は、その診断に基づいた適切な治療計画が立てられます。
一人で悩まず、専門家の助けを借りることが、パニック障害を乗り越えるための最も確実な方法です。
パニック障害の治療法
パニック障害の治療は、薬物療法と精神療法(心理療法)を組み合わせるのが一般的です
[参照元: 厚生労働省、済生会]。
これらの治療に加えて、生活習慣の改善も非常に重要です。
適切な治療を受けることで、多くの人が症状の改善や寛解(症状が落ち着いて安定した状態)を経験できます。
薬物療法について
薬物療法は、パニック発作の頻度や強度を減らし、予期不安を和らげることを目的として行われます。
脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで、脳の不安システムが過剰に反応するのを抑えます
[参照元: 済生会]。
パニック障害の治療に用いられる主な薬の種類は以下の通りです。
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):
現在、パニック障害の治療において第一選択薬とされることが多い薬です
[参照元: 済生会]。
脳内のセロトニンという神経伝達物質の働きを高めることで、不安や抑うつ気分を改善します。
効果が現れるまでに通常2週間~数週間かかりますが、依存性は少なく、長期的な治療に適しています。
副作用として、飲み始めに吐き気や下痢、眠気、不安感の増強などが現れることがありますが、通常は数日で軽減します。
(例)パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラムなど - セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):
SSRIと同様に、脳内のセロトニンとノルアドレナリンの働きを高めることで効果を発揮します。
SSRIで効果が不十分な場合などに用いられることがあります。
(例)ミルナシプラン、ベンラファキシンなど - ベンゾジアゼピン系抗不安薬:
脳内のGABAという神経伝達物質の働きを強めることで、不安や緊張を一時的に和らげます。
即効性があるため、パニック発作が起きそうな時や、予期不安が強い時などに頓服薬として使用されることがあります
[参照元: 済生会]。
しかし、依存性があり、長期連用には注意が必要です。
そのため、SSRIなどの効果が現れるまでの初期段階や、どうしても不安が強い場合に限定して使用されることが多いです。
(例)アルプラゾラム、ロラゼパム、ジアゼパムなど
薬物療法は、医師の指示に従って決められた量と期間、継続して服用することが非常に重要です
[参照元: 済生会]。
症状が改善したからといって自己判断で中断すると、再発のリスクが高まります。
薬の種類や量は、患者さんの症状や体質に合わせて医師が慎重に調整します。
副作用についても、医師とよく相談しながら進めることが大切です。
精神療法(認知行動療法など)について
精神療法は、薬物療法と並んでパニック障害治療の柱となります。
特に認知行動療法(CBT)は、パニック障害に効果が高いことが証明されている治療法です
[参照元: 済生会]。
認知行動療法(CBT):
パニック障害における認知行動療法では、主に以下の点に取り組みます。
- パニック発作や身体症状に対する誤った認知(考え方)の修正:
「動悸がするのは心臓発作だ」「めまいは脳腫瘍のサインだ」といった破局的な考え方を、「不安による身体の反応だ」という現実的な考え方に変えていく練習をします。
身体症状が起きるメカニズムを正しく理解することも含まれます。 - 回避行動の克服(暴露療法):
パニック発作を恐れて避けている場所や状況(例:電車、人混み)に、段階的に慣れていく練習をします。
最初は不安を感じにくい状況から始め、徐々に不安を感じやすい状況に挑戦していきます。
安全な環境で不安を感じる体験をすることで、「怖い場所でも発作は起きない」「発作が起きても大丈夫だ」ということを学びます。 - 不安を管理するためのコーピングスキル(対処法)の習得:
リラクセーション法(腹式呼吸など)、不安を感じた時の考え方の工夫、問題解決スキルなどを学び、不安に効果的に対処できるようになることを目指します。
認知行動療法は、通常、数ヶ月にわたって週に1回程度のセッションを行います。
心理専門家(臨床心理士や公認心理師など)の指導のもとで行われます。
薬物療法で症状が安定してきた段階で導入されることも多いですが、症状が比較的軽い場合は精神療法単独で行われることもあります。
生活習慣の改善も重要
薬物療法や精神療法に加え、日々の生活習慣を見直すことも、パニック障害の症状改善や再発予防に役立ちます
[参照元: 済生会]。
- 規則正しい生活:
十分な睡眠時間を確保し、毎日決まった時間に寝起きするように努めましょう。
睡眠不足は不安を増強させる可能性があります。 - バランスの取れた食事:
偏りのない食事を心がけましょう。
特に、カフェインやアルコール、ニコチンはパニック発作を誘発したり、不安を増強させたりする可能性があるため、摂取を控えるか、医師に相談してください。 - 適度な運動:
ウォーキングやジョギング、ストレッチなどの有酸素運動は、ストレス解消や気分転換になり、不安の軽減に効果があることが分かっています。
ただし、パニック発作中に動悸などを経験した人は、運動で心拍数が上がることに不安を感じることがあります(運動回避)。
専門家と相談しながら、無理のない範囲で徐々に取り組むことが大切です。 - リラクセーション:
腹式呼吸、筋弛緩法、瞑想など、心身をリラックスさせる方法を日常的に取り入れると、不安や緊張を和らげるのに役立ちます。 - ストレスマネジメント:
自分にとってどのようなことがストレスになるのかを把握し、効果的なストレス解消法を見つけることが重要です。
趣味や好きなことに時間を割く、親しい友人と話す、十分な休息を取るなど、自分に合った方法でストレスを解消しましょう。 - 喫煙・飲酒の制限:
喫煙は心拍数を上げ、不安を増強させる可能性があります。
過度の飲酒は、一時的に不安を紛らわせるように感じても、長期的には心身に負担をかけ、症状を悪化させる可能性があります。
禁煙・節酒を心がけましょう。
パニック障害の治療は、これらの様々なアプローチを組み合わせて、患者さん一人ひとりの状態やペースに合わせて進めていくことが重要です。
焦らず、医師や心理専門家と協力しながら治療に取り組むことが、症状の改善と回復につながります。
パニック障害は治る?治るきっかけは?
パニック障害は、適切な治療を受けることで、症状が改善し、多くの場合、症状がほとんどない状態(寛解)に至ることが期待できる病気です。
決して「治らない病気」ではありません
[参照元: 厚生労働省、済生会]。
治癒までの道のりや期間は個人差がありますが、治療を継続することで、パニック発作の回数が減ったり、症状が軽くなったり、予期不安が和らいだり、避けていた場所に行けるようになったりするなど、着実に回復していくことが可能です。
治るきっかけや回復のポイント:
- 正確な診断と適切な治療の開始:
最も重要なきっかけは、自分がパニック障害であることを正しく理解し、精神科や心療内科を受診して、医師による正確な診断に基づいた適切な治療(薬物療法や精神療法)を開始することです。
「これは病気なんだ」と認識し、専門家のサポートを受けることが、回復への第一歩となります。 - 薬の効果の実感:
SSRIなどの抗不安薬は、飲み始めてすぐに効果が出るわけではありませんが、数週間から数ヶ月かけて効果が現れてきます。
パニック発作の頻度や強さが減り、身体の異常な感覚が和らいでくるのを実感すると、「良くなっているんだ」という希望が持て、予期不安も軽減されます。 - 精神療法(認知行動療法など)での気づきと変化:
認知行動療法などを通じて、パニック発作や身体症状に対する考え方の歪みに気づき、より現実的な考え方ができるようになることも大きなきっかけとなります。
また、避けていた場所や状況に少しずつ挑戦し、不安を感じながらも「大丈夫だった」という成功体験を積み重ねることで、自信を取り戻し、行動範囲が広がっていきます。 - 身体的な健康の回復:
睡眠不足や疲労、カフェインの過剰摂取など、身体的な状態がパニック障害に影響を与えることがあります。
生活習慣を改善し、身体的な健康を取り戻すことも、症状の改善につながります。 - ストレスへの対処方法を身につける:
ストレスはパニック障害の誘因や悪化要因となります。
自分なりのストレス解消法を見つけたり、ストレスの原因に対して適切に対処したりできるようになることも、再発予防につながります。 - 周囲の理解とサポート:
家族や友人、職場の理解とサポートは、回復過程において非常に大きな力となります。
一人で抱え込まず、信頼できる人に話を聞いてもらったり、サポートをお願いしたりすることで、安心感が得られます。 - 再発予防のための継続的なケア:
症状が落ち着いた後も、自己判断で治療を中断せず、医師と相談しながら薬の減量や中止、精神療法の継続などを進めることが大切ですし、厚生労働省のウェブサイトなどでも、こうした継続的なケアの重要性が示唆されています
[参照元: 厚生労働省]。
再発のサインに早めに気づき、対処する方法を身につけることも、長期的な安定につながります。
パニック障害の回復は、直線的なものではなく、波があるかもしれません。
症状が良い日もあれば、そうでない日もあるかもしれません。
しかし、諦めずに治療を続け、専門家と二人三脚で取り組むことで、必ず回復への道は開けます。
「治る」というのは、パニック発作や予期不安が完全になくなり、以前と同じように日常生活を送れるようになることを意味します。
多くの人が、適切な治療によってこの状態に到達しています。
もし今、パニック障害の症状で苦しんでいても、希望を持って治療に取り組んでください。
まとめと受診のすすめ
この記事では、「パニック障害 症状 チェック」というキーワードを中心に、パニック障害の症状、診断基準、セルフチェックの方法、初期症状、軽度の場合の症状、なりやすい人の特徴や原因、他の病気との鑑別、治療法、そして治る可能性について詳しく解説しました。
これらの情報は、厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_panic.htmlや済生会のウェブサイトhttps://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/panic_disorder/、中野区立図書館の資料https://library.city.tokyo-nakano.lg.jp/lib/files/egotapath201949.pdfなどを参考にしています。
パニック障害は、突然の激しいパニック発作(動悸、息切れ、めまい、強い恐怖など)が繰り返し起こり、その後の予期不安や回避行動によって日常生活に支障をきたす心の病気です。
DSM-5という診断基準に基づいて診断されますが、自己判断は危険です。
ご自身の症状がパニック障害かもしれないと不安を感じる場合、この記事で紹介したセルフチェックリストは、あくまでご自身の状態を整理し、専門家への相談を検討するためのツールとして活用してください。
チェックリストに多く当てはまる場合でも、「〇〇の病気だ」と自己診断せず、必ず専門家(精神科医や心療内科医など)の診察を受けてください。
パニック発作に似た症状は、心臓病や甲状腺機能亢進症など、他の身体的な病気によって引き起こされている可能性もあります。
また、他の様々な精神疾患と症状が似ていることもあります。
正確な診断を受けることが、適切な治療につながる第一歩です。
パニック障害は、薬物療法と精神療法(特に認知行動療法)を組み合わせ、生活習慣の改善にも取り組むことで、多くの人が症状を改善させ、以前と同じように日常生活を送れるようになります
[参照元: 厚生労働省、済生会]。
決して一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら、焦らず治療に取り組むことが大切です。
もし、少しでもパニック障害の可能性があるかもしれないと感じたら、あるいは漠然とした不安や体調不良が続いていて心配な場合は、勇気を出して精神科や心療内科、または精神保健福祉センターなどの専門機関に相談してみてください。
早期に適切な対応を始めることが、回復への近道となります。
あなたの不安が和らぎ、心穏やかな日々を取り戻せるよう願っています。
【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。
パニック障害の診断や治療については、必ず専門の医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。
本記事の情報に基づくいかなる損害についても、当社は責任を負いかねます。