退職を検討されている方、特に体調不良や病気を理由に会社を辞めたいと考えている方にとって、「診断書は必要なのだろうか?」という疑問は大きいかもしれません。また、一刻も早く退職したい場合の即日退職の可能性や、退職後の生活を支える失業保険との関係も気になるところでしょう。
本記事では、「退職時の診断書」にまつわる様々な疑問について、その必要性、即日退職への影響、取得方法、会社への提出、そして失業保険との関係まで、幅広く解説します。診断書をどのように活用すれば、あなたの退職が円滑に進み、その後の生活を少しでも安心して迎えられるのか、具体的な情報をお届けします。

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退職に診断書は必須ではない
まず結論からお伝えすると、退職する際に診断書を会社に提出することは、法的に義務付けられているわけではありません。 診断書がなくても退職の意思表示は可能ですし、手続きを進めることは原則としてできます。
会社との合意があれば診断書なしでも退職可能
日本の多くの会社員は、会社と「雇用契約」を結んでいます。この雇用契約を終了させる方法はいくつかありますが、最も一般的なのは「合意退職」と「辞職」です。
- 合意退職: 労働者と会社双方の合意によって雇用契約を終了させる方法です。退職日や条件について話し合い、双方が納得すれば成立します。この場合、診断書の提出は必須ではありません。会社が納得すれば、形式的な理由や書類は問われないことがほとんどです。
- 辞職(一方的な意思表示): 労働者が一方的に会社に対して「辞めます」と意思表示することで雇用契約を終了させる方法です。後述する民法の規定に基づき、労働者には退職の自由が認められています。この場合も、診断書がなくても意思表示自体は有効です。
つまり、会社があなたの退職を認め、話し合いによって退職日などがスムーズに決まるのであれば、診断書の提出を求められない限り、提出する義務も必要もありません。
民法上の退職の自由
雇用期間の定めがない正社員などの場合、民法第627条により、退職の意思表示をしてから2週間が経過すれば雇用契約は終了すると定められています。これは労働者の権利として認められているものです。
会社があなたの退職を認めない場合でも、この民法の規定に従い、2週間後には退職が成立します。この一方的な意思表示による退職においても、法的には診断書の添付は要求されていません。
診断書が退職を「認めさせる」ものではない
診断書は、あくまであなたの現在の健康状態や病状を医師が医学的に証明する書類です。退職という行為自体を会社に「認めさせる」ための魔法の書類ではありません。退職は、労働者の意思表示(または会社との合意)によって成立するものであり、診断書の有無が直接的に退職の効力を左右するわけではない、という点を理解しておくことが重要です。
もちろん、会社が就業規則で病気による退職に際して診断書の提出を義務付けているケースや、休職期間満了に伴う自然退職の判断材料として診断書を求めるケースはあります。しかし、それはあくまで会社内部のルールや手続き上の要請であり、法的に退職自体を妨げるものではありません。
診断書が退職交渉に役立つケース
退職に診断書が必須ではないとはいえ、特定の状況においては診断書が非常に有効なツールとなることがあります。特に、病気や体調不良を理由に退職する場合、診断書があることで退職交渉を円滑に進められる可能性が高まります。
病気・体調不良を客観的に証明できる
体調が悪い、働き続けるのが難しいと感じていても、その状態は目に見えないことが多く、会社側になかなか伝わりにくいことがあります。特に「つらいです」「しんどいです」といった主観的な訴えだけでは、「気の持ちようだ」「もう少し頑張れるはずだ」と受け止められてしまう可能性もゼロではありません。
診断書は、医師という第三者があなたの心身の状態を医学的な根拠に基づいて判断し、記載した公的な書類です。診断名、現在の症状、今後の見通し、そして就業上の配慮が必要である旨(例:休養が必要、業務量の軽減が必要、配置転換が必要、あるいは現在の業務継続は困難である等)が具体的に記載されます。これにより、あなたの体調不良が単なる怠慢や甘えではなく、医学的に診断された状態であることを客観的に証明できます。
会社からの理解を得やすい
診断書を提示することで、会社はあなたの状況をより深刻に受け止めやすくなります。「この従業員は本当に健康上の問題を抱えているのだな」と認識することで、単なる「辞めたい」という希望ではなく、「現在の環境では働き続けることが困難なのだ」というやむを得ない事情があることを理解してもらいやすくなります。
これにより、会社側も退職の申し出に対して真摯に向き合い、「引き止めにくい状況である」と判断しやすくなるため、スムーズに退職のプロセスに入れる可能性が高まります。特に、人手不足などを理由に強く引き止められそうな場合や、感情的な話し合いになりそうな場合に、診断書が冷静な話し合いを促す効果を発揮することもあります。
精神的な病気(うつ病・適応障害など)の場合
精神的な病気(うつ病、適応障害、不安障害など)を理由に退職を考える場合、診断書は非常に重要な役割を果たします。これらの病気は外見からは分かりにくく、周囲から理解されにくい傾向があるためです。
診断書に病名や症状、そして「現在の職場環境での就業は困難であり、休養が必要」といった内容が記載されていれば、会社はあなたの状況をより深く理解し、必要な配慮や対応(この場合は退職手続きへの協力など)を検討するきっかけになります。また、精神的な不調が業務に影響を与えていることを示す証拠となり、会社側のリスク管理の観点からも退職を受け入れやすくなることがあります。
ただし、精神的な病気の場合、診断書の取得自体が難しいと感じることもあるかもしれません。その場合は、信頼できる医師に正直に相談し、現在の状況を伝えることが第一歩となります。
診断書で即日退職は可能か
体調不良が深刻な場合や、現在の職場環境にいることが病状を悪化させる場合など、「今すぐ辞めたい」と即日退職を望むケースもあるでしょう。診断書は、このような即日退職の可能性にどのように影響するのでしょうか。
原則は2週間前の意思表示が必要
先ほども触れた通り、雇用期間の定めがない労働者の場合、退職の意思表示をしてから原則として2週間後に退職が成立するのが民法のルールです。これは会社が後任の手配や引き継ぎを行うための期間として設けられています。したがって、原則として退職の意思表示をしたその日に即日退職することはできません。
やむを得ない事由としての診断書
しかし、民法第628条には、「やむを得ない事由」がある場合には、いつでも雇用契約を解除できる、という規定があります。この「やむを得ない事由」に、労働者の病気や怪我によって業務の遂行が不可能になった場合が含まれると解釈されることがあります。
診断書があれば即日退職が認められやすい理由
病気や怪我によって「業務の遂行が不可能」であることを客観的に証明する強力な証拠となるのが、医師の診断書です。診断書に「現在の業務を継続することが著しく困難である」「直ちに休養が必要である」といった内容が明確に記載されていれば、「やむを得ない事由」に該当すると会社や裁判所が判断する可能性が高まります。
これにより、会社側も「法的に即日解除されうる状況である」と認識し、トラブルを避けるために労働者の即日退職の申し出に応じる可能性が高まります。診断書は、即日退職を強行するためのものではなく、あくまで「やむを得ない事由」の存在を証明し、会社との合意形成を助けるためのツールとして機能するのです。
即日退職が認められるケース・難しいケース
診断書がある場合でも、即日退職が必ず認められるわけではありません。診断書の内容や会社の状況によって判断が分かれます。
即日退職が認められやすいケース | 即日退職が難しい(または慎重な対応が必要な)ケース |
---|---|
診断書に「直ちに現在の業務からの離脱が必要」「業務継続は不可能」と明確に記載されている | 診断書に「〇ヶ月程度の休養が必要」「業務内容の軽減が必要」など、復職の可能性や代替手段が示唆されている |
精神的な病気(うつ病、適応障害など)で、職場環境自体が病状悪化の原因となっていると医師が判断している | 業務内容とは直接関連しない病気・怪我である場合 |
労働者の病状が生命に関わる危険がある、または他者へ感染リスクがある場合 | 労働者の病状が回復に向かっており、短期間の休職で対応可能な場合 |
会社が労働者の病状を理解し、即日退職に同意する場合 | 会社が診断書の内容に疑義を唱え、退職に同意しない場合 |
雇用契約書や就業規則に即日退職に関する特別な規定がある場合 | 重要なプロジェクトの遂行中で、労働者の離脱が会社に多大な損害を与える可能性がある場合(損害賠償リスクは低いが、交渉は難航しやすい) |
重要なのは、即日退職はあくまで例外的な措置であるということ、そして法的なトラブルを避けるためには、会社との丁寧な話し合いが必要であるという点です。診断書を提示した上で、現在の健康状態ではすぐに業務を離れる必要があることを誠実に伝えることが大切です。会社が即日退職に同意しない場合でも、民法の2週間ルールに基づき、退職の意思表示から2週間後には退職が成立します。ただし、体調が非常に悪く、2週間すら出社できない場合は、欠勤扱いとなることを覚悟する必要があるかもしれません。
診断書の取得方法
実際に退職のために診断書が必要になった、あるいは役立てたいと考えた場合、どのようにして診断書を取得すれば良いのでしょうか。
医師への正直な相談が重要
診断書を発行してもらうためには、まず医療機関を受診し、医師にあなたの現在の症状や体調不良について正直に伝えることが何よりも重要です。曖昧な表現ではなく、具体的にどのような症状があるのか、いつから始まったのか、日常生活や仕事にどのように影響しているのかを詳細に伝えましょう。
特に、体調不良が仕事に関連している、あるいは仕事が原因で体調を崩した可能性がある場合は、その旨も医師に伝える必要があります。
退職理由や仕事内容を具体的に伝える
診断書を退職のために利用したいと考えている場合は、医師にその目的を正直に伝えることも有効です。診断書は様々な目的に応じて記載内容が変わることがあります(例:休職のため、配置転換のため、障害年金申請のためなど)。退職(あるいは現在の業務からの離脱)のために必要であることを伝えれば、医師もそれに沿った内容を検討してくれます。
また、あなたの具体的な仕事内容や、どのような点が心身の負担になっているのかを伝えることで、医師が診断書に「就業上の配慮」として具体的な内容(例:「〇〇といった業務の遂行は困難」「在宅勤務であれば可能だが、通勤を伴う出社は困難」など)を記載しやすくなります。これにより、診断書の説得力が増し、会社への提出時に意図が伝わりやすくなります。
診断書の発行にかかる費用と期間
診断書の発行は、保険適用外の自費診療となるのが一般的です。費用は医療機関によって異なりますが、概ね3,000円~1万円程度が相場とされています。特に、詳細な記載が必要な場合や、特定の様式がある場合は、費用が高くなる傾向があります。事前に医療機関に費用を確認しておくと良いでしょう。
発行にかかる期間も、医療機関や診断書の内容によって異なります。簡単なものであれば診察当日に発行してもらえることもありますが、詳細な検査結果を待つ必要がある場合や、医師が慎重に内容を検討する場合は、数日から1週間程度かかることもあります。時間に余裕を持って依頼することが望ましいです。
診断書に記載される内容
診断書に記載される一般的な内容は以下の通りです。
- 患者氏名、生年月日など
- 傷病名(病名)
- 発病または診断年月日
- 現在の症状、病状の経過
- 今後の見通し(例:治癒、軽快、不変、悪化など)
- 治療内容、必要な期間(例:加療を要する、〇ヶ月の休養を要するなど)
- 就業上の注意、配慮事項(例:現在の業務は困難、業務量の軽減が必要、自宅での療養が必要など)
- 診断書発行日、医師の氏名、医療機関名、所在地、押印
退職に役立てるためには、「現在の業務の継続が困難である」といった内容が具体的に記載されていることが望ましいです。医師とよく相談し、必要な内容を盛り込んでもらえるように依頼しましょう。ただし、医師は医学的な判断に基づいて記載を行うため、あなたが希望する通りの内容にならない場合もあります。
会社への診断書提出について
診断書を取得した場合、会社には提出しなければならないのでしょうか。提出義務の有無や、提出する場合のタイミングと伝え方について解説します。
提出の義務はないが多くの場合で有効
繰り返しになりますが、法的に会社へ診断書を提出する義務はありません。しかし、退職の理由が病気や体調不良である場合、診断書を提出することは任意ではありますが、多くの場合で有効な手段となります。
会社が診断書の提出を求める理由
会社が診断書の提出を求めるのは、主に以下のような理由からです。
- 労働者の病状を正確に把握するため: 会社として労働者の健康状態を把握し、適切な対応(休職、配置転換、退職手続きなど)を検討するための客観的な資料として必要とします。
- 休職や退職の判断材料とするため: 就業規則に基づき、病気による休職の可否や期間、あるいは休職期間満了後の退職判断などに診断書の内容を参考にします。
- やむを得ない事由を証明するため: 即日退職や短期間での退職を受け入れる際に、「やむを得ない事由」があることを証明する書類として保管しておきたい場合があります。
- 退職後の手続き(傷病手当金など)に関する情報提供のため: 退職者が傷病手当金などの申請を行う際に、会社が記載する書類の参考とするため。
- トラブル回避のため: 後に労働者から「病気なのに無理やり働かされた」「適切な対応がなかった」といった主張があった場合に、会社が診断書に基づいて誠実に対応したことを証明するため。
このように、会社側にも診断書を必要とする正当な理由があることがほとんどです。
診断書を提出するタイミングと伝え方
診断書を提出するタイミングは、退職の意思を伝える際、あるいは退職交渉の過程で体調不良について説明する際が良いでしょう。
伝え方としては、「現在の体調が優れず、医師に診察してもらったところ、このような診断を受けました。この診断書に記載の通り、現在の業務を続けることが難しいため、退職を希望いたします。」といったように、診断書の内容を退職理由の根拠として説明するのがスムーズです。
感情的にならず、あくまで医学的な事実に基づき、現在の健康状態では働き続けることが困難であるという点を冷静に伝えることが重要です。診断書は、あなたの言葉を補強し、会社に状況を理解してもらいやすくするための資料として活用しましょう。
診断書提出のメリット・デメリット
診断書を会社に提出することには、メリットとデメリットの両方があります。提出するかどうかは、これらの点を踏まえて慎重に判断する必要があります。
診断書提出のメリット
円滑な退職手続き
診断書を提出することで、あなたの体調不良が客観的に証明され、会社側が状況を理解しやすくなります。これにより、退職の必要性についてスムーズに納得してもらいやすくなり、退職日や引き継ぎなどの話し合いが円滑に進む可能性が高まります。
会社からの引き止めを避けられる
体調不良が深刻であり、医師から休養や業務からの離脱が必要と診断されている場合、会社は無理な引き止めが難しいと判断することが多いです。特に、病状が業務に影響を与えている、あるいは職場環境が病状を悪化させているといった状況が診断書によって示されれば、会社は引き止めよりも退職手続きへの協力を優先する傾向があります。
傷病手当金や失業保険の手続きに有利になる可能性
退職後に健康保険から傷病手当金を受給する場合や、雇用保険から失業保険を受給する場合に、診断書が有利に働くことがあります。特に、自己都合退職の場合でも、病気や怪我によって働くことができなくなったことを診断書で証明できれば、「特定理由離職者」として扱われ、失業保険の受給開始時期が早まったり、給付期間が長くなるなどのメリットが得られる可能性があります(詳細は後述)。
診断書提出のデメリット
- 自身の病歴を会社に開示することになる
- 悪用リスクや信頼関係への影響
自身の病歴を会社に開示することになる
診断書には、あなたの傷病名や病状などが記載されます。これを会社に提出するということは、あなたの個人的な健康情報を会社に開示することを意味します。会社はプライバシーに配慮する義務がありますが、完全に情報が漏れない保証はありませんし、社内で情報が共有される可能性はあります。病気について職場の人に知られたくない場合や、将来的に会社との関係がどうなるか不透明な場合は、提出をためらう理由となるかもしれません。
悪用リスクや信頼関係への影響
極めて稀なケースではありますが、会社が悪意を持って診断書の内容を不当に扱ったり、他の従業員に漏洩させたりするリスクも理論上はゼロではありません。また、診断書を提出したにも関わらず、会社が適切な対応を取らなかったり、不信感を持ったりするようなことがあれば、会社との信頼関係に悪影響を与える可能性があります。ただし、多くの善良な企業においては、労働者の健康情報を慎重に取り扱い、適切な対応に努めます。
診断書を提出するかどうかは、これらのメリット・デメリットを比較検討し、あなたの状況や会社との関係性、そしてあなたが退職によって最終的に何を得たいのか(円滑な退職か、プライバシー保護かなど)を考慮して判断することが重要です。迷う場合は、会社の就業規則を確認したり、労働組合や弁護士などの専門家に相談したりするのも良いでしょう。
診断書と失業保険(ハローワーク)
退職後の生活を考える上で、失業保険(雇用保険の基本手当)は非常に重要な収入源となります。病気や体調不良を理由に退職し、診断書がある場合、失業保険の受給において有利になることがあります。
自己都合退職と会社都合退職の違い
失業保険の受給資格や給付内容は、離職理由によって大きく異なります。
- 自己都合退職: 労働者自身の都合による退職です(例:転職、結婚、引越し、キャリアアップなど)。この場合、失業保険を受給するためには原則として7日間の待期期間に加え、2ヶ月または3ヶ月の給付制限期間があります。また、被保険者期間の要件も会社都合より厳しくなる場合があります(離職日以前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上必要)。
- 会社都合退職: 会社側の都合による退職です(例:倒産、解雇、ハラスメント、労働条件の重大な相違など)。この場合、7日間の待期期間のみで、給付制限期間はありません。また、被保険者期間の要件が緩和されます(離職日以前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上必要)。
診断書があれば特定理由離職者になれる可能性
病気や怪我、心身の障害によって退職した場合、たとえ労働者自身の意思による退職(自己都合退職)であっても、ハローワークの判断により「特定理由離職者」として扱われる可能性があります。特定理由離職者とは、正当な理由のある自己都合退職をした方を指し、会社都合退職に準じた扱いを受けることができます。
この「正当な理由」の中に、病気や怪我により働くことが困難になったことが含まれます。この事実を客観的に証明するために、医師の診断書が非常に有効な書類となります。
特定理由離職者と失業保険の受給資格
診断書を提出し、ハローワークに特定理由離職者として認められた場合、失業保険の受給において以下のようなメリットが得られます。
- 給付制限期間がない: 自己都合退職の場合にある2ヶ月または3ヶ月の給付制限期間がありません。7日間の待期期間満了後、すぐに失業保険の受給が開始されます。
- 被保険者期間の要件緩和: 離職日以前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あれば受給資格を満たす可能性があります(自己都合退職の原則は2年間で12ヶ月)。
- 給付日数が増える可能性: 離職時の年齢や被保険者期間によっては、所定給付日数(失業保険がもらえる期間)が自己都合退職よりも長くなることがあります。
ハローワークで特定理由離職者として認められるためには、提出された診断書の内容や、離職に至る経緯などを総合的に判断されます。診断書には、病名、症状、今後の治療見込み、そして「就労が困難である」旨などが具体的に記載されていることが望ましいです。
傷病手当金と失業保険
病気や怪我で働くことができない状態が続いている場合、健康保険から傷病手当金を受給できる制度があります。傷病手当金は、病気療養のために労務不能となった期間、給与の約3分の2が支給されるものです。退職後も、一定の要件を満たせば引き続き傷病手当金を受給できる場合があります。
傷病手当金と失業保険(基本手当)は、同時に受給することはできません。 なぜなら、傷病手当金は「働くことができない状態であること」が支給要件であるのに対し、失業保険は「働く意思と能力があるにも関わらず、仕事が見つからない状態であること」が支給要件だからです。両者は全く異なる状態を前提とした制度です。
病気や怪我で退職後、まだ働くことが難しい状態であれば、まずは傷病手当金の受給を検討するのが一般的です。病状が回復し、「働く意思と能力」が備わってから、ハローワークで求職の申し込みを行い、失業保険の受給手続きに進むことになります。この際、傷病手当金を受給していた期間は、失業保険の受給期間(原則離職日の翌日から1年間)に算入されないように申請(受給期間の延長申請)することが可能です。
ハローワークでの手続きの際には、退職理由や病状について詳しく説明し、診断書を提出することが重要です。ハローワークの担当者によく相談し、適切な手続きを進めましょう。
診断書なしで退職できるか
ここまで診断書が役立つケースを見てきましたが、診断書がなくても退職は可能です。どのような場合に診断書なしで退職できるのかを改めて確認しておきましょう。
合意による退職または期間の定めのない雇用の場合
冒頭でも触れた通り、最も一般的な退職方法は、会社との話し合いによる合意退職です。会社があなたの退職の意思を受け入れ、退職日や条件について合意できれば、診断書の有無に関わらず退職は成立します。たとえ病気や体調不良が理由であっても、会社が納得すれば診断書の提出は不要です。
また、雇用期間の定めがない正社員などの場合は、民法第627条に基づき、退職の意思表示から2週間で退職が成立します。この場合も、診断書の提出は法的な要件ではありません。会社が引き止めたり、理由を詳しく尋ねたりすることはありますが、あなたの意思表示から2週間が経過すれば、強制的に引き止められることはありません。
体調不良で欠勤が続く場合の退職
診断書がない場合でも、体調不良が原因で欠勤が続き、事実上就労が困難な状態が会社に理解されれば、退職に至るケースもあります。ただし、この場合は無断欠勤とならないよう、会社に体調不良で出社できない旨を連絡し続ける必要があります。
欠勤が一定期間続くと、会社の就業規則に基づき、休職扱いになったり、そのまま自然退職となったりする場合があります。しかし、このプロセスは会社によって異なり、労働者にとって不利な条件で退職となる可能性(自己都合退職扱いなど)もゼロではありません。また、診断書がない場合、病状の深刻さや就労困難性が会社に正確に伝わらず、不必要なトラブルに発展するリスクも考えられます。
診断書なしで退職する場合でも、会社とのコミュニケーションは非常に重要です。現在の体調や、なぜ働き続けることが難しいのかを誠実に伝え、退職に向けて協力をお願いするのが望ましいでしょう。
診断書に関するよくある疑問
退職と診断書に関する、その他のよくある疑問について回答します。
診断書に「退職」と書いてもらう必要はあるか
診断書に「この者は退職を要する」といった文言を直接書いてもらう必要はありません。 診断書はあくまで医学的な観点から病状や就業上の配慮について記載するものであり、退職は雇用契約に関する事項だからです。
医師に依頼すべきなのは、「現在の病状により、現在の業務を継続することが困難である」「長期間の休養が必要である」「自宅での療養が必要である」といった、就労が困難であることを示す医学的な所見を記載してもらうことです。これらの記載があれば、会社やハローワークが「現在の環境で働くことが難しい状況である」と判断するための根拠となります。
ただし、医師は医学的な判断に基づいて記載を行うため、あなたが希望する通りの内容にならない場合もあります。
診断書はいつまで有効か
診断書の「有効期限」は、法律で明確に定められているわけではありません。しかし、診断書は発行時点での患者の病状や健康状態を証明するものです。時間の経過とともに病状は変化する可能性があるため、あまりに古い診断書は現在の状態を正確に反映していないとみなされ、効力が弱まる可能性があります。
一般的には、発行日から概ね3ヶ月~6ヶ月以内の診断書が有効とみなされることが多いようです。ただし、会社やハローワークによっては独自の基準がある場合もあります。提出先から期間の指定がないか確認し、必要であれば最新の診断書を取得するようにしましょう。
嘘の診断書を使うリスク
体調不良ではないのに、退職を円滑に進めるため、あるいは失業保険の受給で有利になるために、嘘の病状を伝えて医師に診断書を書いてもらう、あるいは偽造した診断書を使用することは、絶対にやめてください。
- 医師法違反: 医師が虚偽の診断書を作成することは、医師法により禁止されています。
- 詐欺罪: 偽りの診断書を提出して会社やハローワークを欺き、不当に退職の承認を得たり、給付金等を受給したりすることは、詐欺罪に問われる可能性があります。
- 懲戒解雇: 会社に提出した診断書が嘘であることが判明した場合、就業規則違反として懲戒解雇となる可能性が高いです。懲戒解雇となると、その後の転職活動に著しく不利になりますし、失業保険の受給においても不利な扱いを受けることになります。
- 信頼の失墜: 嘘がばれた場合、会社や周囲からの信頼を完全に失います。これはその後の人間関係やキャリアにも大きな影響を及ぼす可能性があります。
正直に退職の意思を伝え、必要に応じて診断書を取得することは正当な手続きですが、虚偽の申告や書類偽造は重大な犯罪行為であり、大きなリスクを伴います。絶対にそのような行為に手を染めないでください。
【まとめ】退職時の診断書、必要性と活用法
退職時に診断書が必要かどうかは、あなたの状況や会社との関係によって異なります。法的に提出が義務付けられているわけではありませんが、特に病気や体調不良を理由に退職する場合においては、診断書が円滑な退職交渉や退職後の手続きに役立つ強力なツールとなる可能性があります。
診断書は、あなたの体調不良を客観的に証明し、会社に状況を理解してもらいやすくする効果が期待できます。これにより、無理な引き止めを避けたり、即日退職が認められる可能性を高めたりすることが可能です。また、ハローワークでの失業保険手続きにおいて、特定理由離職者として有利な扱いを受けるためにも重要な書類となります。
診断書を取得するには、医師に正直に症状や仕事内容を伝え、退職のために診断書が必要であることを相談しましょう。診断書の発行には費用と期間がかかること、そして記載内容には限界があることを理解しておく必要があります。
会社への診断書提出は任意ですが、多くの場合で有効です。提出する際は、診断書の内容を根拠に、現在の健康状態では就労が困難であることを誠実に伝えましょう。
診断書を提出することには、円滑な退職や手続きの優遇といったメリットがある一方で、病歴を会社に開示するというデメリットも存在します。これらのメリット・デメリットを比較検討し、ご自身の状況に合わせた最善の選択をすることが重要です。
体調不良による退職は、心身ともに大きな負担がかかるものです。診断書の活用を含め、利用できる制度や書類を理解し、少しでも負担を軽減できるよう手続きを進めてください。もし判断に迷う場合は、会社の担当者、産業医、労働組合、ハローワーク、あるいは弁護士などの専門機関に相談することをお勧めします。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的なアドバイスや個別のケースに対する判断を示すものではありません。個別の状況については、必ず専門家(医師、弁護士、社会保険労務士、ハローワークなど)にご相談ください。掲載情報は記事公開時点のものであり、法改正などにより変更される可能性があります。