パワハラによる心身への影響に苦しんでいませんか?
職場での強いストレスは、私たちの心だけでなく、身体にも様々な不調を引き起こすことがあります。
特に、突然の動悸や息苦しさは、パワハラの被害者が訴えることの多い症状の一つです。
なぜパワハラで動悸がするのか、その原因と具体的な症状、そして今すぐできる対処法や医療機関での相談について、詳しく解説していきます。
つらい状況から抜け出し、心身の健康を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。
パワハラが原因で動悸が起きる場合、その背景には複雑なメカニズムがあります。
これは、単に心臓の病気というわけではなく、精神的なストレスが身体に直接影響を与えることによって引き起こされることが多いのです。
ストレスによる自律神経の乱れが引き起こす動悸
パワハラは、受け手にとって非常に強いストレス源となります。
常に緊張や恐怖を感じる環境にいると、私たちの身体は「闘うか逃げるか(fight or flight)」という本能的な反応を示します。
この反応を司っているのが、自律神経系です。
自律神経には、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経があります。
パワハラによる強いストレスにさらされると、身体は危険な状況だと判断し、交感神経が過度に活性化します。
交感神経が優位になると、心拍数を上げて全身に血液を送り出し、筋肉を緊張させていつでも動けるように準備します。
これにより、動悸(心臓がドキドキする、バクバクする感覚)、息苦しさ、発汗、手足の震えといった身体症状が現れます。
また、ストレス反応としてコルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されます。
これらのホルモンも心拍数や血圧を上昇させる作用があり、動悸の一因となります。
パワハラが継続的に行われると、自律神経のバランスが慢性的に乱れ、動悸などの身体症状が頻繁に起こるようになるのです。
心因性の動悸とその仕組み
医療機関で検査を受けても、心臓に器質的な問題が見つからないにも関わらず動悸がする場合、それは「心因性」の動悸である可能性が高いです。
心因性の動悸は、文字通り、心理的な要因によって引き起こされる身体症状です。
パワハラによって引き起こされる心理的な苦痛(不安、恐怖、怒り、絶望感など)は、脳の情動を司る部分に大きな影響を与えます。
特に、扁桃体と呼ばれる部分は恐怖や不安を感じると活性化し、これが自律神経系を介して心拍数を増加させ、動悸を引き起こすと考えられています。
例えば、パワハラを行った上司の顔を見ただけで、あるいは関連する場所や状況に置かれただけで、過去の嫌な経験がフラッシュバックし、強い不安や恐怖を感じて動悸が始まることがあります。
これは、条件付けられた恐怖反応とも言えます。
また、動悸そのものに対する不安が、さらに動悸を悪化させることもあります。
「また動悸が起きたらどうしよう」「このまま心臓が止まってしまうのではないか」といった予期不安は、交感神経をさらに刺激し、動悸のスパイラルを生み出すことがあります。
パワハラによる動悸は、このようにストレスと心理的な要因が複雑に絡み合い、自律神経を介して身体に現れる典型的な心身症の一つと言えます。
単なる気のせいではなく、身体がストレスに対して発しているSOSのサインなのです。

- 当日受診OK!平日0時まで対応可能
- スマホで完結通院・待合室ゼロ
- 即日診断書発行!休職・傷病手当サポート
- うつ・適応障害・不眠など精神科対応
- 100%オンライン薬の配送まで完結
パワハラによる動悸の具体的な症状
パワハラによる動悸は、単に心臓が速く打つというだけでなく、様々な身体的・精神的な症状を伴うことが多いです。
これらの症状は、パワハラによるストレスが全身に及んでいることを示しています。
息苦しさや他の身体症状との併発
パワハラによる動悸を経験している方は、しばしば他の身体症状も同時に訴えます。
中でも多いのが息苦しさです。
動悸によって心拍数が上がると、身体はより多くの酸素を必要とすると感じ、呼吸が速く浅くなることがあります。
しかし、これは実際に酸素が不足しているわけではなく、ストレスによる過呼吸傾向や胸部の筋肉の緊張が原因である場合が多いです。
息苦しさは、「うまく息が吸えない」「胸が締め付けられる感じ」「喉が詰まる感じ」などとして感じられます。
動悸と息苦しさが同時に起こると、強い不安感や恐怖感を伴い、パニック発作に発展することもあります。
パニック発作は、突然激しい動悸、息切れ、めまい、発汗、吐き気、手足のしびれなどが現れ、「死ぬのではないか」「気が狂ってしまうのではないか」といった強い恐怖を感じる状態です。
パワハラという極度のストレスは、パニック発作の引き金となることが知られています。
その他にも、パワハラによる動悸と併発しやすい身体症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- めまい、ふらつき: 血圧の変動や過呼吸による脳血流の変化などが考えられます。
- 吐き気、腹痛、下痢: ストレスは消化器系の働きにも影響を与えます。
- 頭痛、肩こり: 筋緊張によるものです。
- 手足の震え、しびれ: 交感神経の活性化や過呼吸によるものです。
- 異常な発汗、冷や汗: 自律神経の乱れによる体温調節機能の異常です。
- 全身の倦怠感、疲労感: 慢性的なストレス反応や不眠によるものです。
これらの身体症状は、それぞれ単独で現れることもありますが、複数同時に起こることで、患者さんの苦痛をより一層強くします。
特に、いつ症状が出るか分からないという不安感は、日常生活を著しく困難にさせることがあります。
精神的な影響(不安、うつ)との関連
パワハラによる動悸は、身体症状であると同時に、深刻な精神的な影響と密接に関連しています。
パワハラを日常的に受けている環境では、常に強い不安、恐怖、緊張を感じています。
これにより、以下のような精神症状が現れることがあります。
- 強い不安感: パワハラが行われる状況への恐怖、将来への不安、自分への自信喪失など。
- 抑うつ気分: 常に気分が沈んでいる、何もする気が起きない、喜びを感じない、希望が持てないといった状態。
- イライラ、怒り: 感情のコントロールが難しくなる。
- 集中力・判断力の低下: 仕事のパフォーマンスに影響が出ます。
- 記憶力の低下: ストレスホルモンの影響などが考えられます。
- 不眠、過眠: 寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝早く目が覚める、日中に強い眠気を感じるなど、睡眠障害を伴うことが多いです。
- 食欲不振、過食: ストレスが食行動に影響を与えます。
- ひきこもり、人との交流を避ける: 対人関係への恐怖や、気力が湧かないことから生じます。
動悸や息苦しさといった身体症状は、これらの精神症状、特に不安感を高める要因にもなります。
「また発作が起きたらどうしよう」という不安から外出を控えたり、会議への出席を避けたりするなど、日常生活が制限されてしまうことも珍しくありません。
長期にわたるパワハラは、単なる一過性のストレス反応ではなく、適応障害やうつ病、不安障害、さらには心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった精神疾患に発展する可能性があります。
パワハラによる動悸は、これらの精神的な苦痛が身体に現れたサインの一つとして捉えることが重要です。
身体の症状だけでなく、心の状態にも目を向け、適切なケアを行うことが回復には不可欠です。
パワハラによる動悸への対処法
パワハラによる動悸がつらい場合、いくつかの対処法があります。
症状が出た時のセルフケアから、根本的な解決に向けた外部への相談まで、段階に応じて様々なアプローチが考えられます。
セルフケアとストレス軽減方法
動悸や息苦しさが起きた時に、まずは自分でできることがあります。
また、日頃からストレスを軽減するためのセルフケアを取り入れることも重要です。
症状が出た時の対処法:
- 深呼吸(腹式呼吸): 慌てずに、ゆっくりと鼻から息を吸い込み、お腹を膨らませるイメージで。
そして、口からゆっくりと、吸うときの倍くらいの時間をかけて息を吐き出します。
これを繰り返すことで、過剰に興奮した交感神経を落ち着かせ、副交感神経を優位にする助けになります。
座るか横になるかして、楽な姿勢で行いましょう。 - 安全な場所に移動する: 可能であれば、一時的にパワハラ加害者から離れる、または静かで落ち着ける場所に移動しましょう。
物理的に距離を置くことで、心理的な緊張が和らぐことがあります。 - リラクゼーション: 肩や首の力を抜く、手足のグーパー運動をするなど、軽いリラクゼーションを試みてください。
筋肉の緊張を和らげることで、心身のリラックスにつながります。 - 感覚に意識を向ける: 今、自分が触れているものの感触、聞こえてくる音、見える景色など、外部の五感に意識を集中させることで、不安な思考から注意をそらすことができます。
日頃のストレス軽減方法:
- 質の高い睡眠: 十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活を心がけましょう。
睡眠不足はストレス耐性を低下させます。 - バランスの取れた食事: 栄養バランスの取れた食事は、心身の健康の基本です。
特定の栄養素(ビタミンB群、マグネシウムなど)はストレス対策に良いとも言われますが、まずは規則正しくバランス良く食べることを目指しましょう。 - 適度な運動: ウォーキング、ジョギング、ヨガ、ストレッチなど、自分が楽しめる運動を継続的に行うことは、ストレス発散に非常に効果的です。
- リラクゼーションを取り入れる: 趣味の時間を持つ、音楽を聴く、入浴する、アロマセラピーなど、自分がリラックスできる時間を作りましょう。
- カフェインやアルコールの制限: これらは自律神経を刺激し、動悸や不安を悪化させる可能性があります。
特に症状が強い時は控える方が良いでしょう。 - 思考の整理: 不安や悩みを紙に書き出す、信頼できる人に話すなどして、感情や思考を整理することも有効です。
セルフケアは症状の緩和やストレス耐性の向上に役立ちますが、根本的な解決にはパワハラ問題そのものへの対処が必要です。
職場内での相談や対策
パワハラによる動悸が頻繁に起こるほど苦しい状況にある場合、職場内で問題を解決するための行動をとる必要があります。
- 信頼できる同僚や上司に相談する: 一人で抱え込まず、信頼できる人に話してみましょう。
共感やアドバイスが得られることで、精神的な負担が軽減されることがあります。
ただし、相手を選ぶことが重要です。 - 社内の相談窓口を利用する: 多くの企業には、ハラスメント相談窓口やコンプライアンス窓口が設置されています。
産業医や保健師に相談できる場合もあります。
専門の担当者が対応してくれるため、プライバシーに配慮しつつ、具体的なアドバイスや解決に向けた動きを期待できます。
匿名での相談が可能な場合もあります。 - 人事部への報告: 問題が深刻な場合、人事部に直接状況を報告することも検討しましょう。
人事部は、社内の秩序維持や労働者の環境整備を行う部署として、適切な対応を取る責任があります。 - 労働組合への相談: 労働組合がある場合、組合に相談するのも有効な手段です。
組合は労働者の権利を守るために会社と交渉する力を持っています。 - 証拠の記録: パワハラがあった日時、場所、具体的な言動、それによって生じた心身の症状(動悸、不眠など)を詳細に記録しておきましょう。
可能であれば、録音やメールなどの客観的な証拠も集めておくと、相談や交渉、あるいは外部機関を利用する際に非常に有力となります。
これらの職場内でのアクションは、パワハラ行為を止めさせたり、自身の労働環境を改善したりするための第一歩です。
しかし、職場内に適切な相談先がない場合や、相談しても状況が改善されない場合は、外部機関への相談を検討する必要があります。
外部機関への相談
職場内での解決が難しい場合や、より中立的な立場で専門的なアドバイスを受けたい場合は、外部機関への相談が有効です。
外部機関は、それぞれの専門性に応じて様々なサポートを提供しています。
相談機関 | 主な役割と特徴 | 期待できること |
---|---|---|
弁護士 | 法的な観点からのアドバイス、加害者や会社との交渉、損害賠償請求、訴訟手続きの代行。 | 法的な権利の主張、金銭的な補償、加害者や会社への責任追及。 |
労働基準監督署 | 労働基準法に基づき、労働条件や職場の安全衛生に関する相談・指導を行う。パワハラが労働者の安全配慮義務違反にあたる場合に対応。 | 会社への立ち入り調査や是正勧告。ただし、民事的なパワハラそのものへの介入は限定的。 |
法テラス(日本司法支援センター) | 法的なトラブル解決に向けた情報提供、無料の法律相談(収入等に条件あり)、弁護士・司法書士費用の立て替え制度。 | 弁護士へのアクセス支援、経済的な負担の軽減。 |
総合労働相談コーナー | 各都道府県の労働局や労働基準監督署内に設置されている、労働問題に関するワンストップ相談窓口。 | 労働問題全般(解雇、賃金不払い、ハラスメント等)についての情報提供や相談。必要に応じて他の機関を紹介。 |
NPO/NGO、各種支援団体 | パワハラ被害者向けのカウンセリング、ピアサポート(同じ経験を持つ人との交流)、情報提供など。 | 精神的なサポート、孤立感の解消、問題解決に向けた具体的な情報やヒント。 |
精神科医、心療内科医 | パワハラによる精神的・身体的な不調(動悸、うつ、不安など)の診断と治療。必要に応じて診断書の発行。 | 症状の改善、診断書の取得。 |
どの機関に相談すべきかは、抱えている問題の内容や、どのような解決を目指すかによって異なります。
まずは総合労働相談コーナーや法テラスで一般的な情報を得ることから始めるのも良いでしょう。
法的な解決を目指す場合は弁護士、精神的なケアや身体症状の改善を最優先する場合は医療機関への相談が適しています。
医療機関での受診と診断書
パワハラによる動悸が続く場合、自己判断せずに必ず医療機関を受診することが重要です。
動悸の原因がストレスだけでなく、他の病気である可能性も否定できないからです。
何科を受診すべきか(心臓内科、心療内科など)
動悸を感じた際にまず検討すべきは、循環器内科(心臓内科)の受診です。
動悸は、不整脈や心不全、狭心症といった心臓の病気のサインである可能性もあります。
特に、安静時にも動悸がする、胸の痛みや圧迫感を伴う、失神やめまいを伴うといった場合は、速やかに循環器内科を受診してください。
専門医による心電図検査、心臓超音波検査、ホルター心電図(24時間心電図)などを受け、心臓に器質的な問題がないかを確認することが最も重要です。
循環器内科で検査の結果、心臓に異常が見つからなかった場合、動悸はストレスや精神的な要因(心因性)によるものである可能性が高くなります。
この場合は、心療内科または精神科を受診することを検討しましょう。
心療内科は、心理的な問題が身体症状として現れる「心身症」を専門としています。
パワハラによるストレスが原因で動悸、息苦しさ、胃腸の不調などが起きている場合に適しています。
精神科は、うつ病、不安障害、PTSDなどの精神疾患全般を扱います。
動悸だけでなく、強い不安感、抑うつ気分、不眠といった精神症状が前面に出ている場合は、精神科の方が専門的な治療を受けられる可能性があります。
どちらを受診すべきか迷う場合は、かかりつけ医に相談するか、初診予約時に症状を詳しく伝えて適切な科を教えてもらうと良いでしょう。
症状が多岐にわたる場合は、まず心臓の検査を受け、問題がなければ心療内科や精神科へ紹介してもらうという流れが一般的です。
診断書が必要なケースともらい方
パワハラによる心身の不調が原因で、仕事を休む、配置転換を希望する、あるいは労災申請を検討するといった場合、医療機関からの診断書が必要になることがあります。
診断書が必要になるケース:
- 休職: 心身の不調により就労が困難な場合、会社に休職を申請するために必要です。
- 配置転換・部署異動: 現在の部署や業務内容がパワハラと関連しており、心身の負担になっている場合、配置転換を希望する際に提出することがあります。
- 時短勤務・業務内容の変更: フルタイムでの勤務や特定の業務が難しい場合に、労働時間の短縮や業務内容の変更を会社に求める根拠となります。
- 労災申請: パワハラが原因で精神疾患(うつ病、適応障害など)を発症した場合、労災保険の適用を申請することができます。
この際に、医師の診断書が必要になります。 - 裁判や示談交渉: 加害者や会社に対して損害賠償を請求する際に、パワハラによる健康被害の証拠として提出します。
診断書のもらい方:
- 医療機関を受診する: まずは動悸やその他の症状について医師の診察を受けます。
この際に、パワハラを受けている状況や、それによってどのような心身の不調(動悸、不眠、食欲不振、抑うつ気分など)が起きているのかを具体的に伝えましょう。 - 診断書の発行を依頼する: 診察の最後に、医師に診断書の発行を依頼します。
「パワハラによるストレスが原因で、動悸や〇〇(他の症状)が起きており、就労が困難なため休職が必要である」といった、診断書の用途と必要な内容を具体的に伝えましょう。 - 診断書に記載される内容: 診断書には、患者さんの氏名、生年月日、病名(例: 適応障害、うつ病、神経症性障害など)、現在の病状、今後の見通し、必要な療養期間(例: ○ヶ月の休養が必要)、就労上の配慮事項などが記載されます。
病名が「パワハラによる〇〇」と直接的に記載されることは少なく、「ストレス反応」「適応障害」など、診断名として認められている病名が記載されるのが一般的です。
しかし、医師に状況を詳細に説明し、パワハラが原因である旨を診療録に記載してもらうことは、後々重要になる可能性があります。 - 診断書の費用: 診断書の発行には費用がかかります。
金額は医療機関によって異なりますが、概ね数千円程度です。 - 診断書の提出: 受け取った診断書を、会社の担当部署(人事部など)や労災申請を行う労働基準監督署などに提出します。
診断書を取得することは、自身の心身の状態が医療的に認められた証となり、会社や外部機関に対して協力を得るための有力な根拠となります。
パワハラによる不調が深刻な場合は、ためらわずに医療機関を受診し、必要に応じて診断書の発行を依頼しましょう。
パワハラによる動悸を根本的に解決するには
パワハラによる動悸やその他の心身の不調を根本的に解決するためには、単に症状を抑えるだけでなく、問題の根源であるパワハラそのものへの対処が必要です。
パワハラの停止または環境変化の重要性
最も効果的かつ不可欠な解決策は、パワハラ行為を停止させるか、パワハラが行われている環境から離れることです。
パワハラが続いている限り、どれだけセルフケアや医療的な治療を行っても、ストレス源が除去されないため、症状の改善は限定的となり、再発のリスクも高まります。
パワハラの停止を目指す場合、前述したように、社内相談窓口や人事部への報告、労働組合への相談、外部機関(弁護士、労働基準監督署など)の利用といった手段があります。
これらのアクションを通じて、会社にパワハラの実態を認めさせ、加害者への指導や懲戒処分、再発防止策の実施などを求めることになります。
しかし、会社がパワハラ問題に真摯に対応しない場合や、加害者との関係性が修復不可能なほど悪化している場合、あるいは職場環境そのものが改善の見込みがないと判断される場合は、自身がその環境から離れることが現実的な解決策となります。
具体的には、部署異動を願い出る、あるいは退職・転職という選択肢を検討することになります。
「退職・転職」は勇気が必要な決断ですが、心身の健康を回復させ、平穏な生活を取り戻すためには、やむを得ない、あるいは最善の選択となることもあります。
パワハラによって受けたダメージは、働き続けることでさらに悪化する可能性が高いからです。
退職後の生活費や次の仕事への不安は大きいかもしれませんが、公的な支援制度(失業保険など)や転職支援サービスを利用することも可能です。
何よりも、健康を損なってしまっては元も子もありません。
PTSDや適応障害などの後遺症について
長期にわたるパワハラや、特に深刻なパワハラ体験は、パワハラが終結した後も心身に様々な後遺症を残すことがあります。
パワハラが原因で発症しやすい精神疾患として、適応障害、うつ病、不安障害などが挙げられますが、中でも強い精神的な外傷を伴う場合は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症することもあります。
PTSDは、生命の危険を感じるほどの強い精神的な衝撃を受けた後に発症することがある疾患です。
パワハラの場合、物理的な暴力だけでなく、精神的な攻撃や孤立、尊厳の否定などが、人によってはPTSDのトリガーとなり得ます。
PTSDの主な症状には、以下のようなものがあります。
- フラッシュバック、悪夢: パワハラ体験が意図せず鮮明に蘇り、まるでその場にいるかのような感覚になる。
- 回避行動: パワハラを思い出す場所や状況、人物を避けるようになる。
- 感情の麻痺: 感情が鈍くなり、喜びや悲しみを感じにくくなる。
- 過覚醒: 常に緊張しており、ささいな物音にも驚きやすい、イライラしやすい、集中できない、眠れないといった状態が続く。
適応障害やうつ病、不安障害も、パワハラによって心身のバランスが崩れた結果として現れる深刻な状態です。
これらの精神疾患は、動悸や不眠といった身体症状を伴うだけでなく、日常生活や社会生活を送ることが困難になる場合があります。
これらの後遺症から回復するためには、専門的な治療が必要です。
精神科医や心療内科医による診察を受け、必要に応じて薬物療法(抗うつ薬、抗不安薬など)や精神療法(カウンセリング、認知行動療法など)を受けることになります。
回復には時間がかかることが多く、焦らずじっくりと治療に取り組むことが大切です。
また、信頼できる家族や友人からのサポート、同じ経験を持つ人との交流(ピアサポート)も、回復を支える大きな力となります。
パワハラの後遺症に苦しんでいる場合は、一人で抱え込まず、専門家の助けを借りることが重要です。
まとめ:パワハラの動悸は心身からのサイン
パワハラによる動悸は、単なる気のせいではなく、あなたの心と身体が発している重要なSOSサインです。
パワハラという強いストレスが自律神経を乱し、心拍数の増加や息苦しさといった身体症状を引き起こしています。
これは、心因性の動悸とも呼ばれ、不安や恐怖といった心理的な苦痛と密接に関連しています。
動悸以外にも、息苦しさ、めまい、吐き気、不眠、抑うつ気分など、様々な心身の不調を伴うことが多く、これらの症状は日常生活や仕事に大きな影響を与えます。
もしパワハラによる動悸に苦しんでいるのであれば、一人で抱え込まず、まず行動を起こすことが大切です。
- セルフケア: 深呼吸やリラクゼーションなどで症状を和らげ、適度な運動や休息でストレス耐性を高めましょう。
- 職場内での相談: 信頼できる同僚、社内相談窓口、人事部、労働組合などを通じて、問題解決を働きかけましょう。
- 外部機関への相談: 労働基準監督署、弁護士、NPOなど、専門的な立場からのサポートを求めましょう。
- 医療機関の受診: 動悸の原因が心臓病でないかを確認するため循環器内科を受診し、ストレスが原因であれば心療内科や精神科で診断と治療を受けましょう。
必要に応じて診断書を取得することも、自身の権利を守る上で有効です。
そして何より、パワハラによる心身の不調を根本的に解決するためには、パワハラそのものを停止させるか、パワハラが行われている環境から離れることが不可欠です。
勇気を出して退職・転職を選ぶことも、心身の健康を取り戻すための重要な選択肢となり得ます。
パワハラは決してあなたが悪いわけではありません。
つらい状況から抜け出し、心身の健康を取り戻すための第一歩を、今日踏み出しましょう。
あなたの心と身体は、回復を待っています。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、医療行為や法的なアドバイスを推奨するものではありません。
心身の不調を感じる場合は必ず医療機関を受診し、具体的な問題については専門家(医師、弁護士など)にご相談ください。