パワハラが原因で心身の不調を感じ、毎日の通勤に重い足を引きずっている方もいるかもしれません。職場で受ける精神的な苦痛は、体調不良や精神的な疾患につながり、働くこと自体が困難になることがあります。そんな時、「休職」という選択肢を考えるのは自然なことです。しかし、休職の手続き、休職中のお金のこと、そしてその後のことなど、分からないことが多く、不安を感じている方もいるでしょう。この記事では、パワハラによって休職を考えているあなたが知っておくべき、手続き、休職中の生活、復帰や退職といった選択肢、そして問題を解決するための具体的な方法について詳しく解説します。この記事を読むことで、あなたの不安が少しでも和らぎ、次の一歩を踏み出すためのヒントを得られることを願っています。
パワハラで休職する前に知るべきこと
「パワハラで休職」と一口に言っても、その状況は人によって様々です。休職は、心身を回復させるために必要な期間ですが、同時に今後のキャリアや生活にも影響を与える可能性のある重要な決断です。まずは、パワハラによって休職に至るメカニズムや、休職がもたらす影響について理解しておきましょう。
パワハラは、上司や同僚からの優越的な関係性を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境が害される行為です。精神的な攻撃(暴言、脅迫)、身体的な攻撃、人間関係からの切り離し(無視、仲間外れ)、過大な要求、過小な要求、個の侵害(プライベートへの過剰な立ち入り)などが含まれます。
これらのパワハラ行為を継続的に受けることは、単なるストレスにとどまらず、深刻な心身の不調を引き起こします。具体的には、睡眠障害、食欲不振、頭痛や腹痛といった身体症状、集中力の低下、意欲の喪失、強い不安感、抑うつ状態、さらには適応障害やうつ病などの精神疾患につながることがあります。こうした状態になると、通常通り業務を遂行することが困難になり、休職が必要となります。
休職は、会社に籍を置きながら一時的に労働義務を免除される制度です。これは労働者の権利として法律で定められているものではなく、多くの場合は会社の就業規則に規定されている制度です。したがって、休職できるかどうか、またその期間や条件は、勤めている会社の就業規則によって異なります。
休職の最大のメリットは、パワハラの環境から一時的に離れ、心身の回復に専念できることです。精神的な負担が軽減され、治療や休息に時間を費やすことができます。また、会社に籍を置いたままなので、将来的に同じ会社での復帰を目指すことも可能です。
一方で、デメリットも存在します。最も大きな影響は、休職期間中の給与です。多くの会社では、休職期間中は給与が支払われません。そのため、公的な支援制度などを利用しないと収入が途絶える可能性があります。また、休職期間が長引くと、復職が難しくなったり、キャリアパスに影響が出たりする可能性もゼロではありません。さらに、休職中であっても会社とのやり取りが発生する場合があり、それが新たな精神的な負担となることもあります。
パワハラによる休職を検討する際は、単に会社を休むというだけでなく、ご自身の心身の状態、会社の休職規定、経済的な準備、そして休職後の選択肢(復帰か退職か)について、事前に十分に情報収集を行い、計画的に進めることが重要です。特に、ご自身の健康状態を正確に把握し、休職の必要性を判断するためには、医師の診断が不可欠です。

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パワハラが原因で休職したい場合の手続き
パワハラによって心身に不調をきたし、休職を決意した場合、適切な手続きを踏むことが重要です。手続きを誤ると、休職が認められなかったり、会社との間で無用なトラブルが発生したりする可能性があります。ここでは、医師の診断書の取得から会社への伝え方まで、具体的な手続きの流れを解説します。
休職の申し出は、一般的に以下のステップで進めます。
- 体調不良の原因がパワハラにある可能性を認識し、医療機関を受診する。
- 医師に症状と状況を正直に伝え、診断書の発行を依頼する。
- 診断書に基づき、会社に休職の意向を伝える。
- 会社の規定に従い、休職願や必要な書類を提出する。
- 会社からの休職承認の通知を受け取る。
この中でも特に重要なのが、医師の診断書の取得と、会社への適切な伝え方です。
医師の診断書のもらい方
パワハラによる心身の不調で休職する場合、ほとんどの会社で医師の診断書の提出が求められます。診断書は、あなたの病状が業務遂行を困難にするほど深刻であること、そして休職が必要であることを医学的に証明する重要な書類です。
まず、受診すべき医療機関ですが、パワハラによる精神的な不調であれば、精神科や心療内科を受診するのが一般的です。これらの専門医は、精神的なストレスが心身に与える影響について専門的な知識を持っており、適切な診断と治療を行ってくれます。かかりつけの内科医に相談し、紹介状を書いてもらうという方法もあります。
医師に症状を伝える際は、以下の点を具体的に説明することが大切です。
- いつから、どのような症状(不眠、食欲不振、気分の落ち込み、動悸、頭痛など)が出ているか。
- その症状が仕事にどのように影響しているか(集中できない、ミスが増えた、出社がつらいなど)。
- 症状の原因として考えられるパワハラの具体的な内容(誰から、いつ、どこで、どのような言動があったか)。
- 過去に精神的な疾患や治療経験があるか。
- 休職を考えていること、そしてそのために診断書が必要であること。
医師はこれらの情報をもとに診断を行い、休職の必要性があると判断すれば診断書を発行してくれます。診断書には、病名(例:適応障害、うつ病など)、現在の病状、休職が必要であること、そして必要な休職期間(例:〇ヶ月間の休職を要する)などが記載されます。
診断書の発行には通常、初診日から数日かかる場合があります。また、病状が安定しない場合は、最初の診断書に記載される休職期間が比較的短く(例:2週間~1ヶ月)、その後に再診して期間を延長していく形になることも多いです。
診断書にパワハラが原因であると明記してもらうべきかについては、医師と相談して決めましょう。会社によっては、パワハラが原因であることを記載することで、会社が問題に向き合うきっかけになる可能性もあります。一方で、会社との関係性を考慮し、「精神的な不調により、当面の間の休養を要する」といった表現にとどめることもあります。いずれにしても、医師の判断とあなたの希望をすり合わせて内容を決定してください。
診断書は重要な書類ですので、受け取ったら必ずコピーを取って保管しておきましょう。原本は会社に提出しますが、万が一のトラブルに備え、手元に控えを残しておくことが賢明です。
会社への伝え方と注意点
診断書を受け取ったら、次は会社に休職の意向を伝えます。誰に伝えるか、どのようなタイミングで伝えるかは、会社の規模や組織体制によって異なりますが、一般的には以下のいずれかになります。
- 直属の上司
- 人事部
- 産業医
パワハラを行っているのが直属の上司である場合は、その上司に直接伝えるのは避けた方が良いでしょう。その場合は、人事部やさらに上の役職者に相談するか、会社の窓口(ハラスメント相談窓口などがあればそこへ)を利用するのが適切です。産業医がいる会社であれば、産業医に相談することも有効です。産業医は労働者の健康管理の専門家であり、中立的な立場でアドバイスをくれたり、会社とあなたの間に入ってくれたりすることがあります。
伝えるタイミングは、体調が許す限り、できるだけ早く行うことが望ましいです。急な欠勤が続くと、会社側も状況を把握できず対応が遅れる可能性があります。可能であれば、診断書を受け取った後、体調の良い日を選んで、面談や電話、あるいはメールなどで申し出を行いましょう。
会社に伝える内容は、診断書の内容に基づき、冷静に、簡潔に伝えることが重要です。「医師から体調不良により〇ヶ月間の休職が必要であるとの診断を受けました。つきましては、就業規則に基づき休職を申請させていただきたく存じます」といった形で、病状や休職の必要性を説明し、診断書を提出します。
この際、以下の点に注意しましょう。
- 感情的にならない: パワハラへの怒りや不満をぶつけたくなる気持ちも理解できますが、休職の手続きにおいては、あくまで「体調不良により業務遂行が困難であるため休職したい」という点を軸に伝えましょう。感情的な言動は、かえって会社との建設的な話し合いを妨げる可能性があります。
- 診断書を添える: 診断書の提出は、休職の必要性を客観的に示すために不可欠です。申し出の際に、診断書を提出する旨を伝え、会社の指示に従って提出しましょう。
- 書面でのやり取りを心がける: 可能であれば、休職の申し出や会社からの指示などは、メールや書面など、記録に残る形で行いましょう。後々のトラブルを防ぐために有効です。
- 会社からのハラスメントに注意: 休職を申し出た後、会社側から休職を認めない方向でのプレッシャーや、休職理由(パワハラ)について追及されるなど、新たなハラスメントを受ける可能性もゼロではありません。もし会社からの対応に疑問や不当な点がある場合は、一人で抱え込まず、弁護士や労働組合などの専門家に相談しましょう。
- 会社の規定を確認する: 会社の就業規則に定められている休職に関する規定を事前に確認しておきましょう。休職期間、休職中の給与、休職中の扱いなどが明記されています。不明な点があれば、人事部などに確認が必要です。
会社に休職の申し出を行った後、会社は提出された診断書やあなたの状況を考慮し、休職を承認するかどうかを判断します。承認されれば、正式な休職となります。休職期間中は、原則として会社からの連絡は最小限に抑えられるはずですが、定期的な連絡や書類の提出を求められる場合もありますので、会社の指示に従いましょう。
休職期間中の生活とお金について
パワハラによる心身の不調から休職に入った場合、一番の不安はお金のことでしょう。休職期間中は給与が支払われないことが多いため、生活費や治療費の心配が出てきます。しかし、公的な支援制度を利用できる可能性があります。ここでは、休職中の経済状況と、利用できる可能性のある制度について詳しく解説します。
休職中の給与はどうなる?傷病手当金は?
前述の通り、多くの会社では、休職期間中は給与が支払われません。これは、休職が労働義務を免除される期間であり、労働の対価として支払われる給与の支払義務が会社にはないためです。ただし、会社の就業規則によっては、休職期間中の一定期間(例:最初の1ヶ月間は基本給の〇割支給など)給与が支給される場合もありますので、必ず会社の就業規則を確認してください。
給与が支給されない、あるいは一部しか支給されない場合、生活費を補填するために利用できる可能性のある制度が健康保険の「傷病手当金」です。
傷病手当金は、健康保険の被保険者が、業務外の事由による病気や怪我のために仕事に就くことができず、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給される手当金です。パワハラによる精神疾患は、業務が原因であると認定されない限り(労災認定されない限り)、原則として業務外の事由とみなされるため、傷病手当金の支給対象となります。
傷病手当金を受給するための主な条件は以下の通りです。
- 業務外の事由による病気や怪我であること: パワハラによる精神疾患がこれに該当します。
- 療養のため労務不能であること: 医師により、仕事に就くことが困難であると診断されていること。
- 連続する3日間の待期期間があること: 労務不能となった日から連続して3日間(有給休暇や公休日を含む)仕事を休むと、その翌日から傷病手当金の支給対象となります。この3日間を「待期期間」といいます。
- 給与の支払いがないこと: 労務不能期間について、事業主から給与の支払いがないこと。給与が支払われていても、傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。
傷病手当金の支給額は、以下の計算式で算出されます。
支給開始日以前12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2
標準報酬月額とは、毎月の給与を一定の幅で区分したものです。協会けんぽの場合、健康保険料の金額決定通知書や給与明細で確認できます。組合健保の場合は、加入している健康保険組合に問い合わせてください。
例えば、支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均が30万円だった場合、1日当たりの支給額は約6,667円(30万円 ÷ 30日 × 2/3)となります。
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から最長1年6ヶ月です。この期間内であれば、仕事を休んだ日数に対して支給されます(土日祝日を含む連続した休業期間)。途中で一時的に仕事に復帰し、再度休業した場合でも、最初に支給が開始された日から1年6ヶ月以内であれば、合算して支給されます。
傷病手当金の申請手続きは、加入している健康保険組合(または協会けんぽ)に対して行います。申請書には、医師の意見書欄と事業主の証明欄があり、それぞれ医師と会社に記入してもらう必要があります。申請は療養のため労務不能であった期間ごとに、随時行うことができます。申請期間の締め切りは療養のため労務不能であった日ごとに、その翌日から2年以内です。手続きの詳細については、加入している健康保険組合または協会けんぽのウェブサイトを確認するか、問い合わせてみてください。
傷病手当金以外にも、状況によっては自立支援医療制度(精神通院医療)や高額療養費制度などが利用できる可能性もあります。自立支援医療制度は、精神疾患の治療のために通院する場合に、医療費の自己負担額が軽減される制度です。高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が一定額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。これらの制度についても、お住まいの自治体や加入している健康保険組合に確認してみましょう。
労働災害(労災)認定の可能性と手続き
パワハラが原因で精神疾患を発症し、休職に至った場合、それが労働災害(労災)として認定される可能性があります。労災認定されれば、傷病手当金よりも手厚い補償(療養補償、休業補償など)を受けることができます。
パワハラによる精神疾患が労災として認定されるためには、厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の認定基準」に照らして判断されます。この基準では、「業務による心理的負荷評価表」を用いて、具体的な出来事や状況から労働者に加わった心理的負荷の強さを評価します。心理的負荷の強さが「強」と判断され、かつ、その心理的負荷以外の原因(例:私生活での大きな出来事、元々の精神疾患など)が精神疾患の発症に影響していないと判断された場合に、労災認定される可能性があります。
パワハラに関する出来事は、「ひどいいじめ・嫌がらせ、またはセクシュアルハラスメント」として評価されることが多く、その具体的な内容や継続性、会社の対応などが心理的負荷の強さを判断する上で考慮されます。
労災申請の手続きは、以下の流れで進めます。
- 労働基準監督署への相談: まずは、会社の所在地を管轄する労働基準監督署の労災課に相談しましょう。労災申請に関するアドバイスや必要な書類についての説明を受けることができます。
- 労働者災害補償保険支給請求書の提出: 労働基準監督署で入手した所定の請求書に必要事項を記入し、提出します。請求書には、事業主の証明欄がありますが、事業主が証明を拒否したり、事実と異なる内容を記載したりした場合は、その旨を記載して提出することも可能です。
- 医師の診断書や申立書の提出: 精神疾患の診断書や、パワハラに関する詳しい状況を記載した申立書などを提出します。パワハラの証拠(後述)があれば、これも添付または提出します。
- 労働基準監督署による調査: 労働基準監督署は、提出された書類や関係者(本人、事業主、同僚など)への聞き取り調査などを通じて、業務と精神疾患との間の因果関係や心理的負荷の強さなどを詳細に調査します。調査には数ヶ月かかることが一般的です。
- 労災認定または不支給決定: 調査の結果、基準を満たすと判断されれば労災認定となり、各種保険給付が支給されます。基準を満たさない場合は不支給決定となります。不支給決定に不服がある場合は、審査請求を行うことができます。
労災認定された場合、以下の補償を受けることができます。
- 療養(補償)給付: 治療費、薬剤費、通院費などが支給されます。自己負担なしで治療を受けることができます。
- 休業(補償)給付: 労務不能のため賃金を受けられない期間について、賃金の約8割が支給されます。支給期間に原則として制限はありません(治癒するまで)。
- その他: 傷病(補償)年金、障害(補償)給付、遺族(補償)給付などがあります。
パワハラによる精神疾患の労災認定は、心理的負荷の評価が難しく、必ずしも容易ではありません。しかし、認定されれば経済的な不安が大きく軽減され、治療に専念しやすくなります。労災申請を検討する際は、弁護士や労働組合などの専門家に相談することをおすすめします。専門家は、労災認定基準に詳しいだけでなく、会社からの協力が得られない場合や、証拠収集が難しい場合にもサポートしてくれます。
傷病手当金と労災の休業補償は、両方同時に受けることはできません。労災認定された場合は、労災保険からの休業補償が優先されます。労災申請の結果が出るまでは傷病手当金を受給し、労災認定されたら傷病手当金の受給を打ち切り、労災保険から改めて休業補償を受けることになります。
比較項目 | 傷病手当金(健康保険) | 休業補償給付(労災保険) |
---|---|---|
原因 | 業務外の病気・怪我 | 業務上の病気・怪我、または通勤中の災害 |
支給主体 | 健康保険組合、協会けんぽ | 労働基準監督署 |
支給額 | 標準報酬月額の約2/3 | 賃金の約8割(休業補償給付 + 休業特別支給金) |
支給期間 | 最長1年6ヶ月 | 原則として治癒するまで制限なし |
医療費 | 自己負担3割(自立支援医療などで軽減可能性あり) | 自己負担なし(療養補償給付) |
申請手続き | 健康保険組合等へ(医師・事業主の証明必要) | 労働基準監督署へ(事業主の証明は拒否の場合も申請可能) |
パワハラの場合 | 原則として業務外扱い | 業務上の心理的負荷「強」と判断されれば対象 |
ご自身の状況がどちらの制度に該当する可能性があるのか、また、両方の申請を検討すべきかなど、迷う場合は専門家や会社の担当者(労務、人事など)に相談してみましょう。
パワハラ休職の期間はどれくらいが一般的?
パワハラによる精神的な不調で休職する場合、どれくらいの期間休むことになるのか不安に思う方もいるでしょう。休職期間は、病状の回復状況や会社の規定によって異なりますが、一般的な目安や注意点について解説します。
診断書に記載される期間と会社の休職規定
医師が診断書に記載する休職期間は、病状によって様々ですが、最初の診断書では比較的短期間(例:2週間、1ヶ月、3ヶ月など)とされることが多いです。これは、診断時における病状を基に判断されるため、その後の回復の見込みを正確に予測するのが難しいためです。まずは一定期間休養し、その後の回復状況を見て、必要に応じて再診し、休職期間を延長していくのが一般的な流れです。
休職期間の上限は、会社の就業規則によって定められています。多くの会社では、勤続年数などに応じて、休職できる期間が設定されています。例えば、「勤続年数1年以上3年未満は3ヶ月、3年以上5年未満は6ヶ月、5年以上は1年」といった規定や、「一回の病気につき最長1年間」といった規定などがあります。休職期間の通算について規定がある場合もあります。
会社の休職規定には、休職期間満了時の取り扱いについても定められています。多くの場合、「休職期間満了までに復職できない場合は、原則として退職とする」と規定されています。つまり、定められた休職期間内に心身が回復し、業務を遂行できる状態に戻らなければ、その会社での雇用関係が終了する可能性があるということです。
平均的な休職期間と注意点
パワハラを含む精神疾患による休職の平均的な期間は、厚生労働省の調査などによると、半年から1年程度とするデータが多く見られます。ただし、これはあくまで平均であり、個人の病状、治療への反応、休職中の過ごし方、そして復職を目指すのか、それとも別の道を選択するのかといった意向によって、期間は大きく変動します。軽症であれば数週間から数ヶ月で回復することもありますし、重症の場合や再発を繰り返す場合は、1年以上の治療期間を要することもあります。
休職期間中の過ごし方で最も重要なのは、治療に専念し、心身の回復を図ることです。無理に焦って回復を早めようとしたり、休職中に無理な活動をしたりすることは、かえって回復を遅らせる可能性があります。医師の指示に従い、十分な休息を取り、必要に応じて治療(薬物療法や精神療法など)を受けましょう。
また、休職期間中は会社との連絡をどうするか、事前に話し合っておくことをおすすめします。基本的には治療に専念するため、会社からの業務に関する連絡は不要ですが、定期的な病状報告や、復職に向けた面談などの連絡は必要になる場合があります。連絡頻度や連絡手段(電話、メールなど)を決めておくと、休職中の不安を軽減できます。
休職期間が満了に近づいてきたら、復職が可能かどうかの判断が必要になります。多くの場合、復職するためには、再度医師の診断書(復職可能である旨が記載されたもの)の提出が求められます。また、会社によっては、産業医との面談や、体力・集中力が回復しているかを確認するためのリハビリ出勤(後述)などを経て、最終的な復職が判断されます。
休職期間満了までに復職が難しいと判断された場合でも、すぐに退職となるわけではありません。会社の規定や状況によっては、休職期間の延長が認められたり、傷病手当金の支給期間内であれば引き続き療養を続けたりする選択肢もあります。ただし、会社の規定を無視して長期間休職を続けることは難しいため、規定に沿って今後の道を検討する必要があります。
重要なのは、休職期間中もご自身の状態を把握し、会社の規定や医師の意見を踏まえながら、今後の選択肢について考えていくことです。不安なことや不明な点があれば、一人で悩まず、会社の人事担当者や産業医、そして必要に応じて弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
休職後の選択肢:復帰か退職か
パワハラによる休職を経て、いよいよ今後の働き方について考える時期が来ます。選択肢は大きく分けて「職場復帰」と「退職」の二つです。それぞれの選択肢について、検討すべき点や進め方について解説します。
職場復帰に向けた準備とリハビリ出勤
心身が回復し、再び働くことができる状態になった場合、まずは元の職場への復帰を検討することになります。職場復帰のためには、いくつかの準備が必要です。
- 医師による復職可能の判断: 最も重要なのは、主治医が復職可能であると判断することです。回復したと感じても、ご自身の判断だけで復職するのではなく、必ず医師の診察を受け、診断書を発行してもらいましょう。診断書には、復職が可能であること、そして必要であれば業務内容や労働時間に関する配慮事項(例:当面の間は残業を控える、部署異動を検討するなど)を記載してもらうと、スムーズな復職につながります。
- 会社との面談: 復職の意思を会社に伝えた後、多くの場合、会社との面談が行われます。この面談には、人事担当者、直属の上司、産業医などが同席することがあります。面談では、あなたの病状の回復状況、復職後の業務内容、労働時間、部署配置、そしてパワハラ対策(パワハラの再発防止策が講じられているか、パワハラ加害者と距離を置けるかなど)について話し合います。あなたの希望や不安を正直に伝え、会社側と十分にすり合わせを行うことが重要です。
- 復職支援プログラムやリハビリ出勤の活用: 会社によっては、円滑な復職を支援するためのプログラムや制度を設けている場合があります。例えば、本格的な業務復帰の前に、短時間勤務から始めたり、簡単な事務作業から段階的に業務量を増やしたりする「リハビリ出勤」があります。リハビリ出勤を通じて、体力や集中力が業務に耐えられるかを確認し、自信を取り戻すことができます。リハビリ出勤の期間や内容は、会社の規定やあなたの状況に合わせて調整されます。
- 復帰後のフォロー体制の確認: 復帰後も、再発予防や体調管理のために、会社からのフォローアップが重要です。産業医との定期的な面談や、上司とのコミュニケーションの機会などが設けられるか確認しましょう。パワハラが原因で休職した場合は、特にパワハラ再発防止策や、問題を起こした加害者への対応について、会社がどのような取り組みを行うのかを確認し、不安が解消されるかどうかが復職の判断に大きく影響します。
パワハラがあった職場への復帰は、心理的な抵抗があるかもしれません。会社がパワハラ問題を真摯に受け止め、再発防止策を講じているか、パワハラ加害者との関係性がどうなるかなどを十分に確認し、安心して働ける環境が整っているかどうかを慎重に判断することが大切です。不安が大きい場合は、復職の前に専門家(弁護士、労働組合など)に相談することも検討しましょう。
パワハラが続く場合の退職の判断
残念ながら、休職期間中に会社のパワハラ体質が変わらなかったり、パワハラ加害者がそのままだったりする場合、元の職場への復帰が困難であると判断せざるを得ない状況もあります。また、病状の回復が思わしくなく、定められた休職期間内に復職が難しい場合も退職を検討することになります。
パワハラが原因で退職する場合、それは自己都合退職ではなく、会社都合退職または正当な理由のある自己都合退職とみなされる可能性があります。特に、会社がパワハラ防止対策を講じなかったり、パワハラを放置したりしていた場合は、会社に責任があるとして会社都合退職となる可能性が高まります。会社都合退職となれば、失業保険(雇用保険の基本手当)の受給において、自己都合退職よりも有利になります(給付制限期間がない、給付日数が長くなるなど)。
退職を決断した場合も、感情的にならず、冷静に手続きを進めることが重要です。
- 退職の意思表示: 会社の規定に従い、退職届を提出します。退職理由について詳しく説明する必要はありませんが、「体調不良により、現状での就業継続が困難なため」といった形で伝えると良いでしょう。パワハラを退職理由として明確に伝えるか(損害賠償請求などを検討する場合)、あるいは体調不良のみを理由とするかなど、今後の法的手段を考慮して検討が必要です。
- 退職日の調整: 会社の引き止めや、後任への引き継ぎなどがあるかもしれませんが、無理のない範囲で調整しましょう。体調が最優先です。
- 離職票の確認: 退職後、会社から発行される離職票は、失業保険を受給するために必要な書類です。離職理由の欄が「会社都合」となっているか、「正当な理由のある自己都合」となっているか、必ず確認しましょう。もし事実と異なる記載があれば、ハローワークに異議を申し立てることができます。
- 有給休暇の消化: 残っている有給休暇がある場合は、退職日までに消化できるか会社と交渉しましょう。
パワハラを理由に退職する場合、退職後の生活や次の働き方について不安があるかもしれません。ハローワークで失業保険の手続きをするとともに、求職活動に関する支援を受けることができます。また、必要であれば引き続き医療機関を受診し、治療を続けることも大切です。
損害賠償請求の可能性と手続き
パワハラによって精神的な苦痛を受け、休職や退職に至った場合、会社やパワハラ加害者に対して損害賠償請求を行うことができる可能性があります。これは、会社には労働者が安全に、健康に働けるように配慮する義務(安全配慮義務)があり、パワハラを防止できなかった、あるいは放置した場合には、この義務を果たさなかったとして責任を問われる可能性があるためです。また、パワハラ行為自体は、加害者による不法行為(民法第709条)にあたります。
損害賠償請求で認められる可能性のある損害には、以下のようなものがあります。
- 治療費: パワハラによる精神疾患の治療のためにかかった医療費、薬剤費、通院費など。
- 休業損害: パワハラによって休職せざるを得なくなった期間の収入の減少分。
- 逸失利益: パワハラの後遺症により、将来的に得られるはずだった収入が減少した場合の損失。
- 慰謝料: パワハラによって受けた精神的な苦痛に対する賠償。慰謝料の額は、パワハラの内容、期間、頻度、被害者の精神状態、会社の対応などによって大きく変動し、事案によっては数十万円から数百万円になることもあります。
損害賠償請求の手続きは、以下の方法が考えられます。
- 会社への直接交渉: 弁護士などを通じて、会社に直接損害賠償を求める交渉を行う。
- 労働審判: 裁判所で、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名が関与して行う手続き。原則として3回以内の期日で審理が終結し、調停または審判によって解決が図られる。比較的短期間で解決できる可能性がある。
- 民事訴訟: 裁判所に訴訟を提起し、最終的に裁判所の判決によって権利関係を確定させる手続き。解決までに時間がかかることが多いが、争点を詳細に審理できる。
損害賠償請求を行うためには、パワハラの事実、それによって心身の不調をきたし休職・退職に至ったこと、そして会社や加害者の責任を証明するための証拠が非常に重要になります(後述)。
損害賠償請求を検討する場合、まずは弁護士に相談することを強くおすすめします。弁護士は、あなたのケースで損害賠償請求が可能かどうか、請求できる金額の目安、必要な証拠、手続きの流れなどについて専門的なアドバイスをくれます。また、会社との交渉や裁判手続きを代行してもらうことも可能です。費用が心配な場合は、法テラスの民事法律扶助制度(弁護士費用などの立替え制度)を利用できるか確認してみましょう。
パワハラで休職する際に重要な証拠
パワハラを理由に休職する場合、あるいは休職後に退職や損害賠償請求などを検討する場合、パワハラの事実を示す証拠が非常に重要になります。証拠がなければ、あなたの主張が会社や第三者(労働基準監督署、裁判所など)に認められない可能性があります。休職を考える段階から、証拠収集を意識することが大切です。
どのような証拠が必要か
パワハラの証拠として有効なものは多岐にわたりますが、主に以下の点を示す証拠が必要となります。
- パワハラの具体的な内容: いつ、どこで、誰から、どのような言動(暴言、無理な指示、無視など)があったのか。
- パワハラによる心身への影響: パワハラによって体調不良や精神疾患を発症したこと、そしてそれが業務遂行を困難にしていること。診断書や通院記録、症状の記録などがこれにあたります。
- 会社への相談・報告の履歴: パワハラについて会社(上司、人事部、相談窓口など)に相談したことや、その後の会社の対応を示すもの。
- 会社の責任: 会社がパワハラ防止義務を怠っていたこと、パワハラを認識しながら適切な措置を講じなかったことなどを示すもの。会社のハラスメント規定、社内調査の記録、会社の対応に関するやり取りなどがこれにあたります。
これらの点を示すための具体的な証拠の種類を以下に示します。
- 日記や業務日誌: パワハラを受けた日時、場所、加害者、具体的な言動、その時の感情や体調の変化などを詳細に記録したもの。後から書くよりも、パワハラを受けたその日のうちに記録することが望ましいです。
- 録音・録画: パワハラを受けている状況を音声レコーダーやスマートフォンの録音・録画機能で記録したもの。ICレコーダーなどを常に持ち歩き、危険だと感じた時に録音を開始できるように準備しておくと有効です。録音・録画は、パワハラの決定的な証拠となり得ますが、相手に無断で録音・録画したものが法的に有効な証拠として認められるかについては、状況によります(基本的には違法ではありませんが、使用目的や内容によっては問題となる可能性もゼロではありません。しかし、自身の防御のために行う録音は有効とされるケースが多いです)。
- メールやSNSのやり取り: パワハラの内容が記載されたメール、チャット、LINEなどのやり取り。加害者本人からのものだけでなく、パワハラについて相談した同僚や友人とのやり取りも、状況証拠として役立つ場合があります。
- 診断書・医療記録: 医療機関で発行された診断書、お薬手帳、通院記録、医師との問診記録など。パワハラと心身の不調の因果関係を示すために非常に重要です。
- 会社の就業規則や規定: ハラスメントに関する規定がどのように定められているか、会社がパワハラ防止にどのような取り組みを行っているかを示すもの。
- 同僚や元同僚の証言: パワハラを目撃した、あるいは同じようにパワハラを受けていた同僚や元同僚からの証言。可能であれば、書面で署名捺印をもらっておくと、より強力な証拠となります。ただし、同僚に協力を求めることが難しい場合も多いでしょう。
- 会社への相談記録: パワハラについて上司、人事部、社内の相談窓口などに相談した際のメール、書面、あるいは相談記録。会社がパワハラを認識していたことを示す証拠となります。
- 物理的な証拠: 物を投げられた、暴力を振るわれたなど、身体的なパワハラがあった場合は、怪我の写真や診断書なども重要な証拠です。
証拠の集め方と保管方法
証拠は、意識して集めなければなかなか手に入りません。パワハラを受けていると感じたら、その瞬間から積極的に証拠集めに取り組みましょう。
- 継続的な記録: 日記や業務日誌は、毎日欠かさず記録を続けましょう。日時、場所、内容、関係者、自分の状態などを具体的に書きます。
- 音声・動画の活用: ICレコーダーやスマートフォンの録音機能は、パワハラ発言の決定的な証拠になり得ます。会議中や個別に呼び出された時など、パワハラが起こりそうな状況では、録音を開始するように心がけましょう。
- デジタルデータの保存: メールやSNSのやり取りは、スクリーンショットを撮る、データをエクスポートするなどして、確実に保存しておきましょう。パソコンやスマートフォンの故障、あるいは会社からの削除指示などに備え、複数の場所にバックアップを取ることも重要です。
- 書類のコピー: 診断書、会社の規定、会社とのやり取りに関する書面などは、必ずコピーを取っておきましょう。可能であれば、自宅など会社から離れた場所で保管してください。
- 証拠の共有: 信頼できる家族や友人など、第三者と証拠を共有しておくことも有効です。万が一、証拠が失われた場合に備えられます。
証拠集めは精神的に負担のかかる作業かもしれませんが、あなたの正当な権利を守るために非常に重要です。無理のない範囲で、できることから始めましょう。
集めた証拠は、安全な場所に、複数の方法で保管することをおすすめします。会社のロッカーやパソコンにだけ保管していると、会社に証拠を消されたり、持ち出せなくなったりするリスクがあります。自宅のパソコン、外付けハードディスク、クラウドストレージ、印刷した紙媒体など、分散して保管しましょう。
パワハラは密室で行われることも多く、証拠を集めるのが難しい場合もあります。しかし、上記のような証拠が一つでもあれば、あなたの主張の信用性を高めることができます。完璧な証拠が揃わなくても、諦めずに相談してみることが大切です。
専門家への相談
パワハラによる休職やその後の対応は、法的な問題や会社の規定、公的な制度などが複雑に絡み合います。一人で抱え込んで悩むよりも、専門家の知恵を借りることで、より適切かつスムーズな解決につながることが多いです。どのような専門家がいて、どのように活用できるのかを解説します。
弁護士に相談するメリット
パワハラ問題において、弁護士は最も強力な味方となり得ます。弁護士に相談するメリットは以下の通りです。
- 法的なアドバイス: あなたの状況が法的にどのように評価されるのか、会社や加害者に対してどのような権利を行使できるのかなど、法律に基づいた正確なアドバイスを得られます。パワハラの定義、会社の安全配慮義務、不法行為責任などについて詳しく説明してくれます。
- 適切な証拠の選別と活用法: 集めた証拠が法的に有効か、どのように活用すべきかについてアドバイスを受けられます。また、証拠が不十分な場合の対処法についても助言を得られます。
- 会社との交渉代行: 会社に対して休職の承認、パワハラ再発防止策の実施、配置転換、退職条件の交渉、損害賠償請求などを行う際に、あなたの代理人として会社と交渉してもらえます。弁護士が間に入ることで、会社が問題を真摯に受け止め、対応が改善される可能性があります。また、あなた自身が会社と直接やり取りする精神的な負担を軽減できます。
- 労働審判や訴訟手続きの代行: 労働審判や民事訴訟といった法的手続きに進む場合、弁護士に手続きの全て、または一部を代行してもらえます。裁判書類の作成、期日への出席、相手方とのやり取りなど、複雑な手続きを任せられるため、あなたは治療や回復に専念しやすくなります。
- 損害賠償請求の実現: 会社や加害者への損害賠償請求を検討する場合、弁護士は請求額の算定、請求書の作成、交渉、そして必要であれば裁判手続きを通じて、損害賠償の実現を目指してくれます。
弁護士への相談は有料となることが一般的ですが、初回相談を無料としている事務所もあります。また、前述の法テラスの民事法律扶助制度を利用すれば、弁護士費用の立替えを受けることができます(収入や資産などの条件があります)。パワハラ問題に強い弁護士、特に労働問題やハラスメント問題の経験が豊富な弁護士を選ぶことが重要です。インターネットで「パワハラ 弁護士」などのキーワードで検索したり、弁護士会の相談窓口に問い合わせたりして、適切な弁護士を探しましょう。
労働組合や公的機関の活用
弁護士以外にも、パワハラ問題について相談できる専門家や公的な機関があります。
- 会社の労働組合または外部のユニオン: 会社に労働組合がある場合は、組合に相談することができます。労働組合は、労働者の権利を守るために会社と団体交渉を行う権限を持っています。組合員であれば、パワハラ問題についても組合を通じて会社と交渉してもらうことができます。会社に労働組合がない場合でも、個人で加入できる地域や産業別のユニオン(合同労働組合)に相談することも可能です。ユニオンも、加入者の代理人として会社と団体交渉を行うことができます。組合費がかかりますが、弁護士費用と比較して安価な場合が多いです。
- 労働局(総合労働相談コーナー、あっせん): 都道府県の労働局内にある総合労働相談コーナーでは、労働問題に関する無料相談を受け付けています。パワハラについても相談することができ、解決のための情報提供やアドバイスをもらえます。また、労働局では、会社との間でトラブルになった場合に、専門家(弁護士など)が間に入って話し合いを促進する「あっせん」という制度を利用することも可能です。あっせんは非公開で行われ、裁判よりも簡易な手続きで早期解決を目指すことができます。利用は無料です。
- 法テラス: 日本司法支援センター法テラスは、法的トラブル解決のための情報提供や、経済的に余裕がない方が法的支援を受けられるようにするための機関です。パワハラに関する無料相談を受け付けているほか、弁護士費用などの立替え制度(民事法律扶助制度)の案内や手続きも行っています。全国に事務所があり、電話や面談で相談できます。
- その他の相談窓口: 各自治体が設置している労働相談窓口や、NPO法人などが運営しているハラスメント相談窓口などもあります。匿名で相談できる場合もあり、まずは情報収集のために利用してみるのも良いでしょう。
相談先 | 主な役割・メリット | 費用 |
---|---|---|
弁護士 | 法的アドバイス、交渉代行、労働審判・訴訟代行、損害賠償請求 | 有料(無料相談、法テラス利用可能な場合あり) |
労働組合/ユニオン | 会社との団体交渉、労働条件改善に向けた活動 | 組合費がかかる(弁護士より安価な場合が多い) |
労働局(総合労働相談コーナー) | 無料相談、情報提供、あっせん制度の利用(無料) | 無料 |
法テラス | 無料相談、法的支援制度(弁護士費用立替えなど)の案内 | 無料相談(制度利用には条件あり) |
自治体・NPOの相談窓口 | 無料相談、情報提供、匿名相談が可能な場合あり | 無料 |
これらの専門家や機関は、それぞれ得意とする分野や利用できる制度が異なります。ご自身の状況に合わせて、複数の窓口に相談してみることをおすすめします。特に、法的な解決(損害賠償請求など)を視野に入れる場合は、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
【まとめ】パワハラによる休職を乗り越えるために
パワハラによる休職は、心身の健康を取り戻すために必要なステップですが、同時に大きな不安を伴うものです。休職の手続き、休職中の経済状況、そして休職後の進路など、一人で解決するにはあまりにも多くの壁があります。
この記事では、パワハラで休職を考えているあなたが知っておくべき情報として、休職のための手続き、傷病手当金や労災といったお金に関する制度、休職期間の目安、そして休職後の復帰や退職といった選択肢、さらにパワハラの証拠の重要性や専門家への相談先について解説しました。
最も重要なことは、心身の不調を抱えたまま無理をせず、まずは医療機関を受診することです。医師の診断書があることで、会社への休職の申し出がスムーズに進みます。
休職期間中は、お金の不安があるかもしれませんが、健康保険の傷病手当金や、場合によっては労災認定による補償制度を利用できる可能性があります。これらの制度を正しく理解し、申請手続きを進めることが、安心して療養に専念するために不可欠です。
休職期間を経て、元の職場への復帰を目指すのか、あるいは退職という道を選ぶのかは、あなたの心身の回復状況と、会社のパワハラに対する改善状況を考慮して慎重に判断する必要があります。復帰が難しい場合や、パワハラによって受けた損害について、会社や加害者への損害賠償請求を検討することも可能です。
これらの手続きや判断を進める上で、パワハラの証拠はあなたの主張を裏付ける強力な武器となります。日々の記録やデジタルデータなど、できる範囲で証拠を集め、大切に保管しておきましょう。
そして何よりも、パワハラ問題は一人で抱え込まず、専門家のサポートを積極的に活用することをおすすめします。弁護士は法的な解決を、労働組合やユニオンは会社との交渉を、労働局や法テラスは情報提供や公的な支援制度の利用をサポートしてくれます。あなたの状況に合った専門家を見つけ、相談してみてください。
パワハラによって傷ついた心と体を癒すことは、決して容易なことではありません。しかし、適切な知識と周囲のサポートを得ることで、この困難な状況を乗り越え、再び安心して働く、あるいは新たな一歩を踏み出すことができます。この記事が、そのための力強い一助となれば幸いです。
免責事項: 本記事は、パワハラによる休職に関する一般的な情報を提供するものであり、個別の状況に対する医学的、法律的なアドバイスを提供するものではありません。ご自身の状況については、必ず医療機関、弁護士、またはその他の専門家にご相談ください。また、各種制度の内容は変更される可能性がありますので、最新の情報は関係機関の公式発表をご確認ください。