夜中に何度も目が覚めてしまい、その後なかなか寝付けない――。
もしかしたら、それは「中途覚醒」かもしれません。
ぐっすり眠ったはずなのに疲れが取れない、日中眠くて集中できない、気分がすぐれない…。そんな中途覚醒のお悩みは、多くの人が経験することです。
しかし、それが長く続くと、心身の健康に大きな影響を与える可能性があります。
この記事では、中途覚醒がなぜ起こるのか、その原因となる身体的な問題、ストレス、生活習慣、さらには隠れている可能性のある病気について、専門的な知見に基づきながら詳しく解説します。
また、今日からできる具体的な対策や、医療機関を受診する目安についてもご紹介します。
中途覚醒の原因を知り、適切な対策を講じることで、質の高い睡眠を取り戻し、快適な毎日を送るための一歩を踏み出しましょう。

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中途覚醒の原因
中途覚醒とは、睡眠中に何度も目が覚めてしまい、その後に再び眠りにつくことが困難になる状態を指します。
一度目が覚めると、寝ようとしても考え事をしてしまったり、体が興奮状態になってしまったりして、なかなか眠れないといった悩みを抱える方も多いでしょう。
この中途覚醒の原因は多岐にわたります。
単に寝室の環境が悪いといった単純なものから、日中のストレス、加齢に伴う体の変化、さらには何らかの病気が隠れている可能性まで考えられます。
原因が一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていることも少なくありません。
まずは、中途覚醒とは具体的にどのような状態を指すのか、そして私たちの睡眠がどのようにメカニズムで成り立っているのかを理解することから始めましょう。
その上で、考えられる様々な原因について掘り下げていきます。
自分の状態に当てはまる原因が見つかるかもしれません。
中途覚醒とは?定義とメカニズム
中途覚醒の定義と症状
中途覚醒は、不眠症の一つのタイプとして分類されます。
不眠症は主に以下の4つのタイプに分けられます。
- 入眠困難(寝つきが悪い): 寝床に入ってから眠りにつくまでに30分~1時間以上かかる状態。
- 中途覚醒(途中で目が覚める): 睡眠中に何度も目が覚め、その後に再び眠りにつくことが難しい状態。
- 早朝覚醒(早く目が覚める): 起床希望時刻よりも2時間以上早く目が覚め、その後眠れない状態。
- 熟眠障害(眠りが浅い): 睡眠時間は十分なのに、ぐっすり眠った感じがしない状態。
厚生労働省のウェブサイトによると、中途覚醒は「睡眠障害の一つの症状で、夜中に何回も目覚め、再入眠が困難な状態」を指し(参照:厚生労働省)、週の半分以上でそのような現象があり、それによって苦痛を感じる場合に症状として捉えられます。
中途覚醒の症状は、文字通り「睡眠中に目が覚めること」ですが、その頻度や、再び眠りにつくまでの時間、覚醒回数には個人差があります。
夜中に1回だけ目が覚めてもすぐに眠れる場合は問題ないことが多いですが、毎晩のように複数回目が覚めたり、一度目が覚めると1時間も2時間も眠れなくなったりする場合は、中途覚醒として問題視されることが多いです。
こうした中途覚醒が週に3日以上あり、それが3ヶ月以上続くような場合は、慢性不眠症の可能性が高くなります。
短期間であれば、一時的なストレスや環境の変化によるものと考えられますが、慢性化すると日中の活動にも影響が出やすくなります。
睡眠サイクルと中途覚醒(レム睡眠との関係)
私たちの睡眠は、約90~120分の周期で繰り返される「睡眠サイクル」によって成り立っています。
このサイクルは、大きく分けて「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の2つの段階で構成されます。
- ノンレム睡眠: 脳も体も休息している深い眠りです。
睡眠の初期に長く出現し、時間とともに浅くなっていきます。
ノンレム睡眠はさらに4つの段階に分けられますが、深い段階ほど目覚めにくいとされています。 - レム睡眠: 体は休息していますが、脳は活動している浅い眠りです。
夢を見ることが多いのがこの段階です。
レム睡眠中は、外部の刺激に対して比較的敏感になります。
通常の健康な睡眠でも、一晩に4~5回の睡眠サイクルを繰り返す中で、レム睡眠の終盤や睡眠段階が移行するタイミングで、ごく短時間、意識が覚醒に近い状態になることがあります。
しかし、通常はすぐにまた次のサイクルへとスムーズに移行するため、目が覚めたことを覚えていないか、すぐに眠りにつくことができます。
中途覚醒が起こる場合、この「意識が覚醒に近い状態」から完全に目が覚めてしまったり、一度覚醒するとスムーズに次のサイクルへ移行できなかったりすることが問題となります。
特に、睡眠の後半になるにつれてレム睡眠の割合が増え、ノンレム睡眠が浅くなるため、夜中や明け方近くに目が覚めやすくなります。
また、加齢によっても睡眠の質は変化します。
深いノンレム睡眠が減少し、浅いノンレム睡眠やレム睡眠の割合が増える傾向があるため、外部からの刺激や身体の不快感によって覚醒しやすくなります。
これが、高齢者で中途覚醒が多く見られる一因と考えられます。
中途覚醒の主な原因
中途覚醒の原因は多岐にわたり、しばしば複数の要因が複合的に関与しています。
原因を特定することは、効果的な対策を講じる上で非常に重要です。
ここでは、考えられる主な原因を「身体的な原因」「精神的な原因」「環境的な原因」「生活習慣による原因」の4つに分けて詳しく見ていきましょう。
自分の睡眠パターンや日中の過ごし方、体の状態などを振り返りながら、どの原因が当てはまりそうか考えてみてください。
身体的な原因
体の不調や病気が、直接的に睡眠を妨げ、中途覚醒を引き起こすことがあります。
体に不快な感覚があると、脳が覚醒させられてしまうためです。
頻尿
夜間にトイレに行くために目が覚める「夜間頻尿」は、中途覚醒の代表的な原因の一つです。
特に高齢者では、加齢に伴う膀胱機能の変化や、男性の前立腺肥大、女性の骨盤底筋の衰えなどが原因となることが多いです。
また、糖尿病による多尿、心不全や腎臓病による夜間の水分貯留なども、夜間頻尿の原因となり得ます。
就寝前の水分の摂りすぎはもちろんですが、カフェインやアルコールには利尿作用があるため、夕食後や就寝前に摂取すると夜間頻尿を悪化させる可能性があります。
トイレに行きたくないという意識が、かえって軽い膀胱の感覚にも敏感になり、覚醒を促すこともあります。
痛み・かゆみ
慢性的な痛みやかゆみは、睡眠を大きく妨げます。
腰痛、関節痛、神経痛などの痛みは、寝返りを打つたびに強くなったり、特定の姿勢で痛んだりすることで目が覚める原因となります。
また、アトピー性皮膚炎やじんましんなどの皮膚疾患による強いかゆみも、体をかいているうちに目が覚めてしまい、一度覚醒するとかゆみが気になって眠れなくなるという悪循環を引き起こします。
痛みやかゆみといった不快な感覚は、脳の覚醒システムを活性化させ、深い眠りを妨げる要因となります。
これらの症状がある場合は、原因疾患の治療を行うことが中途覚醒の改善につながります。
むずむず脚症候群
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)は、夕方から夜にかけて、特に寝床に入って安静にしている時に、脚に「むずむずする」「虫が這うような」「かゆい」「痛い」といった不快な感覚が生じ、その感覚を抑えるために脚を動かしたくなるという病気です。
脚を動かしている間は不快感が和らぎますが、再び安静にすると症状が現れるため、寝つきが悪くなるだけでなく、睡眠中にも症状が出て目が覚めてしまう(中途覚醒)原因となります。
むずむず脚症候群の約8割の人には、睡眠中に脚が周期的にぴくつく「周期性四肢運動障害」を伴うこともあり、これが無意識のうちに睡眠を中断させて中途覚醒を引き起こしている場合もあります。
鉄欠乏が原因の一つとされることもあり、詳しい検査が必要です。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に何度も呼吸が止まったり(無呼吸)、浅くなったり(低呼吸)することを繰り返す病気です。
無呼吸や低呼吸によって体内の酸素濃度が低下すると、脳は危険を感じて覚醒し、呼吸を再開させようとします。
この覚醒は数秒程度の短いものであることが多く、本人は目が覚めたことを自覚していないこともありますが、実際には睡眠が中断されており、中途覚醒として現れることがあります。
睡眠時無呼吸症候群は、大きないびき、日中の強い眠気、起床時の頭痛などを伴うことが多いですが、中途覚醒が唯一の症状である場合もあります。
肥満体型の方、首が短い方、あごが小さい方などに多く見られますが、痩せている方でも発症することがあります。
放置すると高血圧や心臓病、脳卒中などのリスクを高めるため、疑わしい場合は専門医の診察が不可欠です。
精神的な原因
心の状態は、私たちの睡眠に非常に大きな影響を与えます。
精神的なストレスや不安、あるいは精神疾患が、中途覚醒の大きな原因となることがあります。
ストレス・不安
過度なストレスや、将来への不安、仕事や人間関係の悩みなどは、脳を常に興奮状態に保ち、リラックスして眠りにつくことを困難にします。
また、一度眠りについても、夢を見たり、些細な物音に敏感に反応したりして目が覚めやすくなります。
特に、夜中に目が覚めた際に、心配事や考え事が頭の中を駆け巡り始めると、脳が活性化してしまい、ますます眠れなくなってしまいます。
ストレスや不安は自律神経のバランスを崩し、交感神経が優位な状態が続いてしまうことも睡眠を妨げる原因となります。
リラクゼーション法やストレス解消法を見つけることが重要です。
うつ病などの精神疾患
うつ病は、不眠症と非常に高い確率で合併します。
うつ病の症状として、気分の落ち込みや意欲の低下だけでなく、睡眠障害も多く見られます。
うつ病による睡眠障害は、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒など様々なパターンがありますが、特に早朝覚醒や中途覚醒が多く報告されています。
うつ病の他にも、不安障害、パニック障害、統合失調症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)なども睡眠障害を伴うことがあります。
これらの精神疾患が原因で中途覚醒が起こっている場合は、原因となっている精神疾患の治療を行うことが、睡眠障害の改善につながります。
中途覚醒とともに、気分の落ち込み、興味の喪失、疲れやすさ、食欲不振、イライラなどの症状がある場合は、精神科や心療内科への相談を検討することが大切です。
環境的な原因
私たちが眠る寝室の環境も、睡眠の質に大きく影響し、中途覚醒の原因となることがあります。
寝室の環境(明るさ、温度、湿度)
- 明るさ: 睡眠を誘発するホルモンであるメラトニンは、光を浴びることで分泌が抑制され、暗くなると分泌が促進されます。
寝室が明るすぎると、メラトニンの分泌が不十分になり、深い眠りが得られにくく、目が覚めやすくなります。
特に、夜中にトイレに行く際に明るい電気をつけたり、寝る直前まで強い光(スマートフォンやPCの画面など)を浴びたりすることは避けるべきです。 - 温度・湿度: 快適な睡眠のための最適な温度と湿度は個人差がありますが、一般的には温度は18℃~22℃、湿度は50%~60%程度が良いとされています。
寝室が暑すぎたり寒すぎたりすると、体温調節のために体が活動的になり、深い眠りが妨げられ、中途覚醒の原因となります。
また、乾燥しすぎると喉や鼻が不快になり、かゆみを引き起こすこともあります。
季節に応じた寝具の調整や、エアコン、加湿器・除湿器などを適切に活用することが重要です。
騒音
睡眠中に大きな音や、不規則な音(例えば、車の走行音、上階からの足音、ペットの鳴き声など)に曝されると、脳が覚醒させられて目が覚める原因となります。
たとえ目が覚めなくても、騒音は睡眠を浅くし、睡眠の質を低下させることが分かっています。
特に、普段から慣れている音であっても、睡眠中は脳が音に敏感になっていることがあります。
耳栓を使ったり、二重窓にしたり、ホワイトノイズ(特定の周波数帯の音を持続的に流すことで、他の音を気にならなくさせる効果がある)を活用したりすることも有効です。
生活習慣による原因
日中の過ごし方や、就寝前の習慣も、睡眠のリズムや質に大きな影響を与え、中途覚醒の原因となります。
アルコール、カフェイン、ニコチン
- アルコール: アルコールには一時的に眠気を誘う作用がありますが、睡眠の後半になると分解されてアセトアルデヒドとなり、交感神経を刺激して睡眠を浅くし、中途覚醒や早朝覚醒を引き起こしやすくなります。
また、利尿作用によって夜間頻尿の原因にもなります。
寝酒は習慣化しやすく、睡眠の質をさらに低下させるため避けるべきです。 - カフェイン: コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、脳を覚醒させる作用があります。
カフェインの効果は摂取後数時間持続するため、夕方以降に摂取すると寝つきが悪くなるだけでなく、睡眠中も脳が完全に休息できず、睡眠が浅くなったり、中途覚醒しやすくなったりします。
カフェインの半減期(効果が半分になるまでにかかる時間)は個人差がありますが、一般的には4~6時間程度とされているため、寝る数時間前からは摂取を控えることが望ましいです。 - ニコチン: タバコに含まれるニコチンにも覚醒作用があります。
喫煙者は、非喫煙者に比べて睡眠の質が低い傾向があり、寝つきが悪く、中途覚醒しやすいことが知られています。
また、睡眠中にニコチンが切れることによる軽い離脱症状が、覚醒を引き起こす原因となることもあります。
就寝前の飲食
就寝直前に食事を摂ると、消化活動のために胃腸が活発に働き、体温が上昇するため、スムーズな入眠が妨げられたり、睡眠が浅くなったりして中途覚醒の原因となることがあります。
特に、脂肪分の多い食事は消化に時間がかかるため、避けるべきです。
就寝3時間前までには食事を終えるのが理想とされています。
また、就寝前の多量の水分摂取は夜間頻尿の原因となります。
ただし、喉が渇いた状態で眠るのも不快なため、適度な水分補給は必要です。
就寝前に空腹を感じる場合は、消化の良い軽いものを少量だけ摂るか、温かい飲み物(ノンカフェイン)を飲む程度にとどめましょう。
不規則な睡眠・覚醒リズム
体内時計は、ほぼ24時間の周期で私たちの体の様々な機能を調整しています。
この体内時計が乱れると、睡眠と覚醒のリズムが崩れ、中途覚醒を含む様々な睡眠障害を引き起こします。
特に、シフトワークで働く人や、平日は寝不足の分を週末に寝溜めする人、夜更かしが習慣になっている人などは、体内時計が乱れやすくなります。
体内時計を整えるためには、毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きるという規則正しい生活が重要です。
特に、朝起きてすぐに日光を浴びることは、体内時計をリセットする効果があります。
運動習慣
適度な運動は、心身のリフレッシュになり、深い睡眠を促す効果が期待できます。
しかし、就寝直前の激しい運動は、体温を上昇させたり、交感神経を活性化させたりするため、かえって目が冴えてしまい、寝つきが悪くなったり、睡眠が浅くなったりして中途覚醒の原因となることがあります。
運動をするなら、就寝の少なくとも3時間前までには終えるのが良いでしょう。
軽いストレッチやヨガなど、リラックス効果のある運動であれば、就寝前に行っても問題ない場合が多いです。
就寝前のデジタルデバイス使用
スマートフォンやタブレット、PCなどのデジタルデバイスの画面からは、ブルーライトが多く放出されています。
ブルーライトは、脳を覚醒させ、睡眠を誘発するメラトニンの分泌を抑制する作用があります。
そのため、就寝直前までデジタルデバイスを使用していると、寝つきが悪くなるだけでなく、睡眠全体が浅くなり、中途覚醒しやすくなります。
また、SNSや動画、ゲームなどは脳を興奮させ、精神的な覚醒を引き起こす可能性もあります。
寝る前の1時間程度は、デジタルデバイスの使用を避け、読書や音楽鑑賞など、リラックスできる活動に切り替えることが推奨されます。
特定の時間に目が覚める原因
中途覚醒に悩む人の中には、「いつも決まった時間に目が覚める」「だいたい2時か3時頃に目が覚める」「2時間おきに目が覚める」といった特定のパターンを持つ方もいます。
このような特定の時間帯に目が覚める現象も、その時間帯の睡眠サイクルや、体の生理的な変化、あるいは特定の原因と関連している可能性があります。
夜中2時・3時に目が覚める理由
夜中の2時から3時頃に目が覚めやすいという経験は、多くの人が持っています。
この時間帯は、睡眠サイクルが深いノンレム睡眠から浅い睡眠(ノンレム睡眠の浅い段階やレム睡眠)へと移行するタイミングであることが多いです。
健康な睡眠でもこの時間帯は比較的目が覚めやすいのですが、以下のような要因があると、完全に覚醒してしまいやすくなります。
- 睡眠サイクルの自然な移行: 睡眠の前半は深いノンレム睡眠が多く、後半になるにつれて浅いノンレム睡眠やレム睡眠が増加します。
2~3時頃は、この睡眠の構造が変化する時間帯にあたることが多く、軽い刺激や不快感に対して覚醒しやすくなります。 - 体内時計のリズム: 体内時計は、体温、ホルモン分泌など様々な生理機能のリズムを調整しています。
例えば、覚醒作用のあるコルチゾールというホルモンの分泌は、通常、明け方に向けて徐々に増加し始めます。
2~3時頃は、このコルチゾール分泌が上昇し始める時間帯にあたる可能性があり、これが覚醒を促す一因となることも考えられます。 - 身体的な不快感の悪化: むずむず脚症候群の症状は夜間に悪化しやすい傾向があります。
また、睡眠時無呼吸症候群による無呼吸イベントも、この時間帯に多く発生する場合があります。
これらの身体的な不快感がピークを迎える時間帯と一致して目が覚めることがあります。 - 精神的な要因: 寝る前に抱えていた心配事やストレスが、この時間帯に再び頭をもたげ、考え事をしてしまうことで脳が活性化し、覚醒してしまうこともあります。
静かな夜中に一人で考え事をしてしまうと、より深く悩みに囚われやすくなることも影響しているかもしれません。
2時間おきに目が覚める理由
約2時間おき、あるいはそれよりも短い周期で頻繁に目が覚める場合は、睡眠サイクルが非常に浅い状態が続いているか、断続的な刺激によって睡眠が中断されている可能性が考えられます。
- 浅い睡眠サイクルの繰り返し: 加齢や睡眠障害によって、深いノンレム睡眠がほとんどなく、浅いノンレム睡眠やレム睡眠が短い周期で繰り返されている場合、数時間おきに目が覚めやすくなります。
特に高齢者では、睡眠の分断が多く見られる傾向があります。 - 断続的な身体的な不快感: 痛みやかゆみが持続的にある場合、あるいは睡眠時無呼吸症候群による無呼吸イベントが頻繁に発生している場合、周期的に睡眠が中断され、2時間おきといった短い間隔で目が覚めることがあります。
むずむず脚症候群による周期性四肢運動障害も、睡眠中に周期的なぴくつきが起こることで睡眠を分断し、中途覚醒の原因となります。 - 夜間頻尿の繰り返し: 夜間に何度もトイレに行く必要がある場合、排尿のために目が覚めるサイクルが比較的短い間隔で繰り返されることがあります。
特定の時間帯や短い周期での中途覚醒が続く場合は、身体的な要因や睡眠障害の可能性が高いと考えられます。
症状が続く場合は、専門医に相談し、詳しい検査を受けることを検討しましょう。
中途覚醒が示す可能性のある病気
単なる一時的な寝不足や生活習慣の乱れだけでなく、中途覚醒の背景に何らかの病気が隠れている可能性も否定できません。
特に、中途覚醒が長く続いたり、日中の活動に支障が出たりする場合は、医療機関で診察を受けることが重要です。
不眠症以外の睡眠障害
不眠症(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害)自体も病気ですが、中途覚醒は不眠症以外の様々な睡眠障害の症状としても現れます。
- 概日リズム睡眠障害: 体内時計が乱れることで、本来寝るべき時間に寝られず、起きていなければならない時間に眠くなる病気です。
体内時計が大きく前後にずれるタイプ(睡眠相前進症候群、睡眠相後退症候群など)や、非24時間睡眠・覚醒症候群などがあり、夜間に何度も目が覚めてしまうことがあります。 - 睡眠関連運動障害: 睡眠中に体が不随意に動くことによって睡眠が妨げられる病気です。
前述のむずむず脚症候群や周期性四肢運動障害などが含まれます。
これらの症状によって睡眠が分断され、中途覚醒が起こります。 - 睡眠関連呼吸障害: 睡眠中に呼吸に問題が生じる病気です。
最も代表的なものが睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠中に何度も呼吸が止まる・弱くなることで、脳が覚醒を繰り返し、中途覚醒の原因となります。
身体疾患
中途覚醒は、様々な身体疾患の症状として現れることがあります。
- 呼吸器疾患: 喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などがある場合、夜間に咳や息苦しさが増強し、目が覚めてしまうことがあります。
- 消化器疾患: 逆流性食道炎がある場合、横になることで胃酸が逆流しやすくなり、胸やけや咳、ゲップなどの不快感で目が覚めることがあります。
- 内分泌疾患: 甲状腺機能亢進症では、代謝が亢進して体温が高くなり、寝汗をかいたり、動悸がしたりして眠りを妨げることがあります。
糖尿病では、血糖コントロールが不良な場合に、夜間低血糖で目が覚めたり、多尿で目が覚めたりすることがあります。 - 循環器疾患: 心不全や狭心症がある場合、夜間に横になることで呼吸が苦しくなったり、胸痛が起きたりして目が覚めることがあります。
高血圧も睡眠障害と関連があると言われています。 - 神経疾患: パーキンソン病やアルツハイマー型認知症などの神経疾患も、睡眠障害を伴うことが多く、中途覚醒が見られることがあります。
- その他: 腎臓病、関節リウマチなどの自己免疫疾患、前立腺疾患(男性)、子宮筋腫(女性)など、様々な病気が痛みやかゆみ、頻尿などを引き起こし、中途覚醒の原因となり得ます。
精神疾患
前述の通り、うつ病や不安障害といった精神疾患は、中途覚醒の大きな原因となります。
これらの疾患は、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることなどによって、睡眠を調節する機能に影響を与えると考えられています。
中途覚醒とともに、以下のような症状が見られる場合は、精神疾患の可能性も考慮し、精神科や心療内科に相談することが重要です。
- 気分の落ち込みが続く、何事にも興味が持てない(うつ病)
- 過剰な心配や不安、落ち着きのなさ(不安障害)
- 突然の動悸、息苦しさ、めまい、死の恐怖(パニック障害)
- 過去のトラウマ体験がフラッシュバックする(PTSD)
中途覚醒は、これらの精神疾患の初期症状として現れることもあります。
睡眠の質だけでなく、心の状態にも目を向け、必要であれば専門家のサポートを求めることが大切です。
中途覚醒の対策と改善方法
中途覚醒の原因が分かったら、次は具体的な対策を講じていきましょう。
原因に応じた対策を行うことが改善への近道です。
ここでは、今日から実践できる睡眠環境や生活習慣の見直し、ストレス対策、そして必要に応じて専門的なアプローチについてもご紹介します。
睡眠環境の改善策
快適な睡眠環境を整えることは、中途覚醒の改善に非常に有効です。
- 寝室を暗くする: 遮光カーテンを使用したり、外部からの光(街灯など)を遮ったりして、寝室をできるだけ暗く保ちましょう。
寝る前は間接照明にするなど、光の刺激を減らす工夫も有効です。
夜中にトイレに行く際は、最小限の明かり(フットライトなど)を使用し、強い光は避けましょう。 - 適切な温度と湿度を保つ: 季節に応じてエアコンや加湿器・除湿器などを利用し、寝室の温度を18℃~22℃、湿度を50%~60%程度に調整しましょう。
体感温度には個人差があるため、快適に感じる温度を見つけることが大切です。
寝具も、吸湿性や通気性の良いものを選ぶと、快適な睡眠をサポートします。 - 騒音対策をする: 外部や内部の騒音が気になる場合は、耳栓を使用したり、窓やドアの防音対策をしたりすることが有効です。
換気扇の音や冷蔵庫の音など、生活音も意外と睡眠を妨げることがあります。
また、一定のリズムで静かな音を流すホワイトノイズマシンやアプリを活用するのも一つの方法です。 - 寝具を見直す: 自分に合ったマットレスや枕を選ぶことも重要です。
体が沈み込みすぎたり、硬すぎたりするマットレス、高すぎたり低すぎたりする枕は、体に負担をかけ、痛みやかゆみを引き起こし、睡眠を妨げる可能性があります。
生活習慣の見直しポイント
日中の過ごし方や就寝前の習慣を見直すことは、体内時計を整え、睡眠の質を高める上で非常に重要です。
- 規則正しい生活を送る: 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように心がけましょう。
特に、休日に寝坊しすぎると体内時計が乱れ、月曜日の夜に寝つきが悪くなったり、中途覚醒しやすくなったりします(社会的ジェットラグ)。
平日と休日の起床・就寝時間の差を1~2時間以内にするのが理想です。 - 朝、光を浴びる: 起床後すぐに日光を浴びることで、体内時計がリセットされ、覚醒を促すセロトニンの分泌が促進されます。
ベランダに出たり、窓を開けて外を眺めたりするだけでも効果があります。 - アルコール、カフェイン、ニコチンを控える: これらには覚醒作用や睡眠の質を低下させる作用があります。
特に、アルコールやカフェインは就寝数時間前からは摂取を避けるようにしましょう。
禁煙することも睡眠の質を大幅に改善させる可能性があります。 - 就寝前の飲食を避ける: 就寝3時間前までには食事を終えるようにしましょう。
特に消化に時間のかかるものや、刺激物は避けるべきです。 - 適度な運動をする: 日中に適度な運動をすることは、夜間の睡眠を深くする効果があります。
ただし、就寝直前の激しい運動は避けましょう。
夕方から就寝3時間前までの間に、軽いジョギングやウォーキングなどを行うのがおすすめです。 - 就寝前にリラックスできる習慣を作る: 寝る前にぬるめのお風呂(38℃~40℃程度)にゆっくり浸かる、軽いストレッチやヨガを行う、静かな音楽を聴く、アロマを焚く、読書をする(ただし、面白すぎると目が覚める可能性がある)、といったリラックスできる習慣を取り入れましょう。
- 寝床は眠るためだけに使う: 寝床でスマートフォンを操作したり、テレビを見たり、考え事をしたりするのをやめましょう。
「寝床=眠る場所」という関連付けを強くすることで、寝床に入ったときに自然と眠気を感じやすくなります。 - 眠れない時は一度寝床から出る: 15~20分経っても眠れない場合は、無理に寝ようとせず、一度寝床から出て、寝室以外の場所で静かに過ごしましょう。
リラックスできる音楽を聴いたり、軽い読書をしたりして、眠気を感じたら再び寝床に戻ります。
「眠らなければ」という焦りや不安は、かえって脳を覚醒させてしまいます。
ストレスマネジメントの方法
精神的なストレスや不安は中途覚醒の大きな原因です。
効果的なストレスマネジメントは、睡眠の質を高める上で非常に重要です。
- リラクゼーション法を取り入れる: 深呼吸、腹式呼吸、漸進的筋弛緩法(体の各部分の筋肉に順番に力を入れたり抜いたりすることで、全身の緊張をほぐす方法)、瞑想などは、心身のリラックスに効果があります。
寝る前や、夜中に目が覚めた際に行ってみるのも良いでしょう。 - 考え事を整理する: 寝る前に心配事や考え事が頭から離れない場合は、寝る時間の1~2時間前に、その日あったことや心配事を紙に書き出す「ジャーナリング」という方法が有効です。
頭の中にあることを外に出すことで、少し冷静に整理でき、寝床で考え込むのを減らせる可能性があります。 - 趣味や楽しい時間を持つ: ストレス発散のためには、仕事や義務から離れて、自分が心から楽しめる時間を持つことも大切です。
友人との交流や、好きな音楽を聴く、映画を観る、体を動かすなど、自分に合った方法でリフレッシュしましょう。 - 信頼できる人に相談する: 一人で悩みを抱え込まず、家族や友人、職場の同僚など、信頼できる人に話を聞いてもらうことも、精神的な負担を軽減する上で非常に有効です。
認知行動療法について
不眠に対する認知行動療法(CBT-I:Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia)は、慢性的な不眠症に対して効果的な非薬物療法として推奨されています。
CBT-Iは、睡眠に関する誤った考え方(認知)や、睡眠を妨げるような行動を修正していくアプローチです。
CBT-Iには、以下のような要素が含まれます。
- 睡眠衛生教育: 睡眠に良い生活習慣や環境について学びます。
- 刺激制御法: 寝床は眠るためだけに使用し、眠れないときは寝床から出る、といったルールを設定し、寝床と覚醒を結びつける習慣を断ち切ります。
- 睡眠制限法: 寝床で過ごす時間を、実際に眠っている時間に近い時間に制限することで、睡眠欲求を高め、睡眠効率(寝床にいる時間のうち眠っている時間の割合)を改善します。
- 認知療法: 「眠れないと大変なことになる」「○時間寝ないとダメだ」といった睡眠に関する非現実的または不適切な考え方を特定し、より現実的で建設的な考え方に修正していきます。
- リラクゼーション法: 筋弛緩法や瞑想などを実践し、心身の緊張を和らげます。
CBT-Iは、専門的な知識を持つ医療従事者(医師、心理士など)のもとで行われることが一般的です。
薬物療法に抵抗がある方や、薬物療法で十分な効果が得られない方などに特に有効です。
医療機関を受診する目安
中途覚醒の原因の多くは生活習慣や環境の改善、ストレスマネジメントで対処可能ですが、中には病気が隠れていたり、専門家のサポートが必要だったりする場合もあります。
ここでは、どのような場合に医療機関を受診すべきか、そして何科を受診すれば良いのかについて解説します。
どんな時に専門家へ相談すべきか
以下のような場合は、一度医療機関で専門医に相談してみることを強く推奨します。
- 自分で対策しても改善しない場合: 生活習慣の見直しや環境改善などを試みても、中途覚醒が全く改善しない、あるいは悪化している場合。
- 中途覚醒によって日中の活動に支障が出ている場合: 睡眠不足による日中の強い眠気、集中力低下、判断力の低下、意欲の低下、イライラなどの症状があり、仕事や学業、日常生活に支障が出ている場合。交通事故などのリスクも高まります。
- いびきや呼吸停止を指摘された場合: 同居している家族などから大きないびきや、睡眠中に呼吸が止まっている様子を指摘された場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高く、早急に専門医の診察を受ける必要があります。
- 脚の不快感で眠れない場合: 寝床で安静にしている時に、脚に不快な感覚が生じ、動かしたくなる衝動に駆られる場合は、むずむず脚症候群の可能性が考えられます。
- 精神的な落ち込みや不安が強い場合: 中途覚醒とともに、気分の落ち込み、興味の喪失、疲れやすさ、強い不安、パニック発作などの精神的な症状がある場合は、うつ病や不安障害などの可能性も考慮し、専門家のサポートが必要です。
- 持病がある場合: 慢性的な痛み、かゆみ、頻尿、呼吸器疾患、循環器疾患など、すでに持病がある場合は、その病気が中途覚醒の原因となっている可能性があります。
主治医に相談してみましょう。 - 市販薬やサプリメントに頼りすぎている場合: 市販の睡眠改善薬やサプリメントを常用しないと眠れない、あるいは効果を感じなくなってきたという場合は、専門医の指導を受けることが望ましいです。
受診すべき診療科
中途覚醒の原因によって、受診すべき診療科は異なります。
まずはかかりつけ医に相談するのが最も手軽で良い方法です。
かかりつけ医はあなたの全体的な健康状態を把握しているため、適切な診療科を紹介してくれたり、初期的なアドバイスや治療を行ってくれたりします。
具体的な症状や疑われる原因に応じて、以下の専門科を受診することも検討できます。
症状・疑われる原因 | 受診すべき診療科(専門医) |
---|---|
不眠全般、日中の強い眠気、睡眠パターンの異常 | 不眠症専門外来、睡眠外来、精神科、心療内科 |
大きないびき、睡眠中の呼吸停止、日中の眠気 | 呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠外来 |
寝床での脚の不快感、脚のぴくつき | 神経内科、睡眠外来 |
夜間頻尿 | 泌尿器科(男性は前立腺疾患、女性は泌尿器科または婦人科) |
体の痛み、かゆみ | 整形外科、皮膚科、リウマチ科など(原因に応じる) |
気分の落ち込み、強い不安、パニック発作 | 精神科、心療内科 |
息苦しさ、咳(夜間悪化)、胸痛、動悸 | 呼吸器内科、循環器内科 |
糖尿病、甲状腺疾患など内分泌系の問題 | 内分泌内科 |
睡眠外来は、様々な睡眠障害に対応できる専門的な医療機関です。
複数の原因が考えられる場合や、他の診療科で原因が特定できなかった場合に適しています。
医療機関では、問診や質問票、必要に応じて睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)などの検査を行い、中途覚醒の原因を特定します。
原因に応じて、生活習慣の指導、認知行動療法、薬物療法(睡眠導入剤、原因疾患の治療薬など)といった適切な治療法が提案されます。
【まとめ】中途覚醒の原因を知り、質の高い睡眠を取り戻そう
夜中に目が覚めてしまう中途覚醒は、多くの人が経験する一般的な悩みですが、それが慢性化すると心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
中途覚醒の原因は、身体的な不快感、精神的なストレスや不安、寝室の環境、そして日々の生活習慣など、非常に多岐にわたります。
また、中には睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群、うつ病といった病気が隠れている可能性も考えられます。
中途覚醒を改善するためには、まずその原因を特定することが重要です。
この記事でご紹介した様々な原因に照らし合わせ、ご自身の状況を振り返ってみてください。
原因が特定できたら、まずは睡眠環境の整備や生活習慣の見直しといった、自分でできる対策から始めてみましょう。
規則正しい生活、適切な寝室の環境、アルコールやカフェインの制限、ストレスマネジメントなどは、中途覚醒の改善に大きく貢献します。
しかし、自分で対策を講じても改善が見られない場合や、日中の活動に支障が出ている場合、あるいは大きないびきや脚の不快感、気分の落ち込みといった気になる症状がある場合は、迷わず医療機関を受診することが大切です。
専門医による診察や検査によって、中途覚醒の本当の原因が明らかになり、一人一人に合った適切な治療やアドバイスを受けることができます。
中途覚醒は決して諦める必要のある症状ではありません。
原因を正しく理解し、適切な対策を継続することで、質の高い睡眠を取り戻し、健康で充実した毎日を送ることは十分に可能です。
ご自身の睡眠と体の声に耳を傾け、必要であれば専門家の力を借りながら、より良い睡眠を目指しましょう。
免責事項
本記事は、中途覚醒の原因と対策に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、
医療行為や個別の診断、治療を代替するものではありません。
ご自身の症状や健康状態については、必ず医師またはその他の医療専門家にご相談ください。
本記事の情報に基づくいかなる判断や行動についても、著者および運営者は一切の責任を負いかねます。