イライラや不眠、神経のたかぶりといった心の不調や、それに伴う体の不調にお悩みではありませんか?
実はこれらの症状に、漢方薬である「抑肝散(よくかんさん)」が効果を示すことがあります。古くから使われてきたこの漢方薬は、特に神経過敏や興奮しやすい傾向がある方に選ばれることが多く、近年ではさまざまな研究も進んでいます。しかし、漢方薬と聞くと、効果がよく分からない、時間がかかりそう、副作用はないの?といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、抑肝散の効果やどんな人に適しているのか、飲み方、副作用など、知っておきたい情報を詳しく解説していきます。

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抑肝散の効果とは
抑肝散は、東洋医学の考え方に基づき、いくつかの生薬を組み合わせて作られた漢方薬です。もともとは小児の「疳症(かんしょう)」、つまり夜泣きやひきつけ、神経の興奮などに対して用いられてきました。しかし、その効果は小児だけでなく、大人にも広く応用されるようになり、現在では様々な心身の不調に対して処方されています。
抑肝散の基本的な考え方は、体のバランスが崩れることで起こる「肝」の異常を整えることにあります。漢方における「肝」は、現代医学の肝臓だけでなく、精神活動や血液、自律神経の調整に関わる機能を広く指します。「肝」の機能が乱れると、気の巡りが滞り、イライラしたり、興奮しやすくなったり、筋肉が緊張したりといった症状が現れると考えられています。抑肝散は、この「肝」の乱れを鎮め、心身の緊張を和らげることで効果を発揮します。
抑肝散の主な効果・効能
抑肝散は、主に精神神経症状と身体症状の両方に対して効果が期待できます。それぞれの症状について具体的に見ていきましょう。
精神神経症状に対する効果
抑肝散が最もよく知られている効果の一つは、精神神経症状に対するものです。特に、次のような症状に悩む方に有効である可能性が示されています。
- イライラ・怒りっぽい: 些細なことで腹を立てやすい、カッとなりやすいといった衝動的な感情を抑える働きが期待できます。
- 神経過敏・興奮: 物音に敏感、落ち着きがない、興奮して眠れないといった状態を和らげます。
- 不安・焦燥感: 漠然とした不安感や、そわそわして落ち着かない、じっとしていられないといった焦燥感を軽減する可能性があります。
- 不眠: イライラや神経の興奮が原因で寝つきが悪い、眠りが浅い、夜中に何度も目が覚めるといった不眠症状の改善が期待できます。
- 幻覚・妄想: 特に高齢者の認知症に伴う周辺症状として現れる幻覚や妄想、徘徊といった行動を鎮める効果も研究されています。抑肝散の精神神経疾患への応用
これらの症状は、ストレスや環境の変化、体調不良など様々な要因で起こり得ますが、抑肝散は体の内側からバランスを整えることで、症状の根本的な改善を目指します。
身体症状に対する効果
精神的な不調は、しばしば身体的な症状を伴います。抑肝散は、精神的な緊張が体に与える影響を和らげることで、以下のような身体症状にも効果を示すことがあります。
- 筋肉のけいれん・ひきつけ: 特に小児の疳症に見られる症状ですが、大人のストレスによる体のこわばりやぴくつきにも有効な場合があります。
- 歯ぎしり: 寝ている間の歯ぎしりは、無意識の緊張やストレスが原因の一つと考えられており、抑肝散がこれを軽減する可能性が指摘されています。
- めまい: ストレスや自律神経の乱れによるめまいに対して効果が期待できることがあります。
- 頭痛・肩こり: 精神的な緊張からくる筋緊張性の頭痛や肩こりの緩和にも繋がる可能性があります。
- 倦怠感: 心身の疲労や緊張が原因で全身の倦怠感がある場合にも、バランスを整えることで改善が見られることがあります。
このように、抑肝散は精神と体の両面からアプローチし、心身の緊張状態を緩和することで、幅広い症状に効果を発揮する可能性があります。
抑肝散が用いられる病名・症状
医療機関では、抑肝散は以下のような病名や症状に対して保険適用で処方されることがあります。
- 神経症: 不安神経症、強迫性障害など、精神的な不安定さを主とする病気に対して。
- 不眠症: 特に神経の興奮やイライラが原因で眠れない場合に。
- 小児の疳症(ひきつけ、夜泣き、食欲不振など): 興奮しやすく、落ち着きがない小児に。
- 更年期障害: イライラ、不眠、情緒不安定などの精神症状に対して。
- 認知症に伴う周辺症状(BPSD): 興奮、攻撃性、易怒性(いどせい:怒りやすさ)、幻覚、妄想、徘徊など、行動・心理症状に対して有効性が示されています。抑肝散の精神神経疾患への応用 非薬物療法が奏功しないせん妄の薬物療法において、抑肝散が考慮される場合があることも示されています。重症治療ガイドライン(2024 年版)
- ひきつけ: 特に小児のてんかんや熱性けいれんなど、けいれんを起こしやすい体質に対して予防的に。
- 脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症など: これらの疾患に伴う精神症状・行動異常に。
ただし、これらの病気や症状があるからといって、必ず抑肝散が適しているわけではありません。個々の体質や症状、病歴などを考慮して、医師が適切に判断します。
抑肝散が特に有効とされる対象者
抑肝散は、特定の体質や傾向を持つ人に対して特に効果を発揮しやすいと言われています。漢方では、「証(しょう)」という体質や病状を総合的に判断する概念に基づいて処方されます。抑肝散の「証」は、一般的に次のような特徴を持つとされます。
- 比較的体力がない、または中くらい: 体力が非常に充実している人よりも、やや虚弱傾向の人や、心身の疲労がある人に向いています。
- 神経過敏、イライラしやすい: 精神的に不安定で、感情の起伏が激しい傾向がある人。
- 筋肉が緊張しやすい: 体がこわばりやすい、手足がピクつく、歯ぎしりをするなどの傾向がある人。
- 顔色が比較的良い: 青白いというよりは、やや赤みを帯びていることもあります。
このような特徴を持つ方の中で、前述したような精神神経症状や身体症状が見られる場合に、抑肝散が有効である可能性が高いと考えられます。
小児の夜泣き・疳症
抑肝散はもともと小児薬として発展しました。現代でも、夜泣きがひどい、昼夜逆転している、ちょっとしたことで泣き叫ぶ、落ち着きがない、爪を噛む、歯ぎしりをする、食べ物の好き嫌いが激しいといった、いわゆる「疳の虫」の症状を持つお子さんに対して有効な場合があります。特に、生まれつき神経が繊細で興奮しやすい傾向のあるお子さんに適しているとされます。
神経症・不眠症への効果
ストレス社会において、神経症や不眠に悩む大人は少なくありません。抑肝散は、過剰なストレスや不安、緊張によって自律神経のバランスが乱れ、イライラや不眠が生じている場合に効果を発揮します。抑肝散の精神神経疾患への応用 心が休まらず、常に何かに追われているような感覚や、考え出すと止まらないといった状態を和らげ、リラックス効果をもたらすことで、質の良い睡眠へと導くことが期待できます。
認知症に伴う周辺症状
近年の研究で、抑肝散は高齢者の認知症に伴う周辺症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)に対して有効であるという報告が増えています。抑肝散の精神神経疾患への応用 認知症の中核症状(記憶障害など)そのものを治すわけではありませんが、徘徊、興奮、暴力、暴言、不穏、幻覚、妄想、睡眠障害といった、介護者の負担を増大させるBPSDを軽減する効果が認められています。特に、攻撃性や易怒性が目立つタイプの方に効果が期待できることが多いようです。これは、脳内の神経伝達物質であるグルタミン酸の過剰な働きを抑える作用などが関与していると考えられています。抑肝散の精神神経疾患への応用 また、重症治療ガイドラインにおいて、非薬物療法が奏功しないせん妄への薬物療法として抑肝散が考慮される場合があることも示されています。重症治療ガイドライン(2024 年版)
更年期障害への効果
女性の更年期には、ホルモンバランスの変化に伴い、身体症状だけでなく精神症状も現れやすくなります。イライラ、ゆううつ、不安、不眠、集中力の低下などが代表的です。抑肝散は、これらの精神的な不安定さ、特にイライラや不眠といった症状に対して効果を発揮することがあります。ただし、更年期障害には他の漢方薬(例:加味逍遥散、桂枝茯苓丸など)が適している場合もありますので、専門家と相談することが重要です。
その他の適用症状
上記以外にも、月経前症候群(PMS)に伴う精神的な不安定さ、チック症、むずむず脚症候群、線維筋痛症に伴う不眠やイライラなど、心身の緊張や興奮が関与している可能性のある様々な症状に対して、応用的に使用されることがあります。ただし、これらの症状に対する効果は、保険適用外であったり、十分なエビデンスが確立されていなかったりする場合もあります。
抑肝散の効果が出るまでの期間と即効性
漢方薬は、西洋薬のようにすぐに効果が現れるわけではない、と思われがちですが、抑肝散に関しては、比較的早期に効果を実感できるケースもあります。しかし、基本的には体のバランスを整えることで効果を発揮するため、ある程度の継続が必要です。
効果を実感するまでの目安期間
抑肝散の効果が現れるまでの期間は、個人の体質、症状の程度、病歴、服用量などによって大きく異なります。
- 比較的早期に効果を実感するケース: 神経の興奮やイライラ、不眠といった症状が強い場合、数日~1週間程度で何らかの変化(例えば、寝つきが少し良くなった、イライラする回数が減ったなど)を感じる方もいらっしゃいます。
- 効果を実感するまでに時間がかかるケース: 体質の改善を目指す場合や、症状が慢性化している場合などは、効果を実感するまでに数週間から1ヶ月以上かかることもあります。
効果が感じられないからといって、すぐに服用を中止するのではなく、少なくとも数週間は続けてみるのが一般的です。ただし、症状が悪化したり、体に合わないと感じたりした場合は、すぐに専門家に相談してください。
即効性はあるのか
抑肝散に、西洋薬のような「即効性」を期待することは難しいでしょう。例えば、痛み止めのように飲んで数十分で痛みが消える、といった性質の薬ではありません。
しかし、全く効果がないわけではなく、服用後数時間で鎮静作用を感じる方もゼロではありません。特に、強い興奮やイライラがある場合に、一時的に症状を和らげる効果を少し早く感じる可能性はあります。
基本的に、抑肝散は継続して服用することで、体質の偏りを徐々に改善し、症状が出にくい状態を作ることを目指す薬です。したがって、「頓服薬」として一時的な症状緩和のために使うのではなく、「定時薬」として毎日決まった時間に服用することが推奨されます。
抑肝散の正しい飲み方・服用方法
抑肝散の効果を最大限に引き出し、安全に服用するためには、正しい飲み方を守ることが重要です。
服用タイミング(食前・食間)について
漢方薬は、一般的に食前や食間に服用することが推奨されています。抑肝散も例外ではありません。
- 食前: 食事の約30分前。
- 食間: 食事と食事の間、つまり食後約2時間後。
胃の中に食べ物がない空腹時に服用することで、漢方薬の成分がより効率良く吸収されると考えられているためです。
ただし、飲み忘れを防ぐために、毎日決まった時間に服用することが最も重要です。もし食前・食間に飲むのが難しい場合は、食後に服用しても全く効果がなくなるわけではありませんので、飲み忘れよりは食後に飲む方が良いでしょう。服用タイミングについては、処方された医師や薬剤師の指示に従ってください。
推奨される服用量と注意点
抑肝散の服用量は、製品(医療用エキス顆粒、市販薬など)や、個人の年齢、体重、症状の程度などによって異なります。
- 医療用エキス顆粒: 通常、成人1日7.5gを2〜3回に分けて服用します。小児の場合は、年齢や体重に応じて減量されます。
- 市販薬: 製品によって含有量や推奨量が異なりますので、必ず製品の添付文書に記載されている用法・用量を守ってください。
服用上の注意点:
- 水またはぬるま湯で服用: 漢方薬は苦味がありますが、効果を損なう可能性があるため、原則として水またはぬるま湯で服用しましょう。お茶やジュースなどで飲むのは避けた方が無難です。
- 用法・用量を守る: 自己判断で服用量を増やしたり減らしたりしないでください。効果が出ないと感じても、決められた量以上を服用しても効果が高まるわけではなく、副作用のリスクが高まる可能性があります。
- 他の薬との飲み合わせ: 現在、他の医療用医薬品や市販薬、サプリメントなどを服用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。思わぬ相互作用を起こす可能性があります。
- 特定の疾患がある場合: 肝臓病、腎臓病、高血圧、心臓病など、持病がある場合は、服用前に必ず医師に相談してください。
正しい服用方法を守り、不明な点があれば必ず専門家に確認することが、安全に抑肝散を使うために不可欠です。
抑肝散の副作用について
漢方薬は自然の生薬からできているため、副作用がないと思われがちですが、残念ながら副作用はゼロではありません。抑肝散も例外ではなく、体質や体調によっては副作用が現れることがあります。
報告されている主な副作用
比較的頻繁に報告される副作用は、消化器系の症状や皮膚症状です。
- 消化器症状:
- 食欲不振
- 胃部不快感
- 吐き気、嘔吐
- 下痢、軟便
- 腹痛
- 皮膚症状:
- 発疹、かゆみ
これらの症状は、一般的に軽度であり、服用を中止するか、継続するうちに軽減することが多いです。しかし、症状が続く場合や悪化する場合は、専門家に相談してください。
まれに起こる重篤な副作用
頻度は非常に低いものの、重篤な副作用が報告されています。これらは早期発見と適切な対応が重要です。
- 肝機能障害、黄疸: 肝臓の機能が悪化し、体が黄色くなる症状(黄疸)が現れることがあります。
- 間質性肺炎: 肺に炎症が起こり、息切れや咳、発熱などの症状が現れることがあります。
- 偽アルドステロン症: 体液や電解質のバランスが崩れ、むくみ、高血圧、脱力感、手足のしびれやこわばりなどの症状が現れることがあります。これは、含まれている生薬(特に甘草)の影響で起こる可能性があります。他のグリチルリチン含有製剤との併用によりリスクが高まる可能性も指摘されています。グリチルリチンと抑肝散の併用で偽アルドステロン症を呈し
肝機能障害への注意
抑肝散に含まれる一部の成分が、まれに肝臓に負担をかけることがあります。特に、過去に肝臓病を患ったことがある方や、現在肝機能に問題がある方は注意が必要です。初期症状として、倦怠感、食欲不振、吐き気などが現れることがありますが、自覚症状がないこともあります。重症化すると黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が現れます。定期的に服用する際には、必要に応じて肝機能検査を行うことが推奨される場合があります。
副作用かな?と思った時の対応
もし抑肝散を服用中に、上に挙げたような症状や、いつもと違う体の変調を感じた場合は、自己判断で服用を続けるのは危険です。
- 服用を中止する: まずは抑肝散の服用を一時的に中止してください。
- 医師または薬剤師に相談する: 服用を中止した上で、できるだけ早く処方してもらった医師か、購入した薬局の薬剤師に連絡し、症状を伝えてください。いつから、どのような症状が現れたのかを具体的に説明できるようにしておくと良いでしょう。
副作用と決めつけず、他の原因も考えられますので、専門家の判断を仰ぐことが重要です。
「やばい」と感じる可能性のあるケース
「抑肝散、やばい?」というキーワードで検索される方もいるかと思います。これは、おそらく重篤な副作用や、期待した効果が得られない、逆に症状が悪化する、といった不安からくるものと推測されます。
抑肝散が「やばい」と感じる可能性があるのは、前述した重篤な副作用の初期症状が現れた場合です。
- 体のだるさ、食欲不振、吐き気、皮膚や白目の黄色い変色(黄疸): 肝機能障害の可能性
- 息切れ、から咳、発熱: 間質性肺炎の可能性
- むくみ、血圧の上昇、手足の脱力感やしびれ: 偽アルドステロン症の可能性
- 急激な症状の悪化: 服用前よりイライラや興奮がひどくなった、幻覚や妄想が悪化したなど。
これらの症状は、すぐに医療機関を受診すべきサインです。
また、体質に合わない場合や、本来抑肝散が適さない「証」である場合に、効果がないだけでなく、胃もたれや下痢、発疹といった比較的軽い不調が現れることもあります。これも広い意味で「やばい」(=体に合わない)と感じるケースと言えるでしょう。
適切な診断のもと、正しく服用すれば、抑肝散は多くの人にとって安全で有効な漢方薬です。しかし、どんな薬にもリスクはあります。不安な場合は、必ず専門家に相談し、自己判断での服用や中止は避けましょう。
抑肝散加陳皮半夏との違い
抑肝散とよく似た名前で、「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」という漢方薬があります。「加(か)」は「加える」という意味で、抑肝散に「陳皮(ちんぴ)」と「半夏(はんげ)」という生薬が加わった処方です。
配合生薬の違いと効果・効能
基本的な構成生薬は抑肝散と同じですが、陳皮と半夏が加わることで、以下のような効果が期待できます。
- 陳皮: ミカンの皮を乾燥させたもの。気の巡りを良くし、特に消化器系の機能を整える働きがあります。胃もたれ、吐き気、食欲不振などに効果があると言われています。
- 半夏: サトイモ科の植物の根茎。消化器系の水分代謝を調整し、吐き気や嘔吐、痰などを鎮める働きがあります。不安や不眠に伴う胃の不調にも用いられます。
これらの生薬が加わることで、抑肝散の精神神経症状への効果に加えて、
- 食欲不振、胃もたれ、吐き気などの消化器症状
- 痰が多い、咳が出る
- 不安や不眠に伴う胃腸の不調
といった症状にも対応できるようになります。
つまり、抑肝散が精神症状や筋緊張に主眼を置くのに対し、抑肝散加陳皮半夏は、それに加えて消化器症状や水分代謝の乱れ(痰など)を伴う場合に適しています。 精神的な不調だけでなく、胃腸の調子が悪い、吐き気がある、という方に選ばれることが多い処方です。
副作用の違い
基本的な副作用は抑肝散と共通しますが、陳皮や半夏が加わることで、わずかに副作用の傾向が変わる可能性はあります。例えば、消化器系の症状がある方には抑肝散加陳皮半夏の方が合うことが多いですが、逆に半夏によって吐き気が誘発される可能性もゼロではありません。
特徴 | 抑肝散 | 抑肝散加陳皮半夏 |
---|---|---|
基本処方 | 抑肝散 | 抑肝散に陳皮・半夏を追加 |
構成生薬 | 釣藤鉤、柴胡、甘草、当帰、川芎、茯苓、白朮 | 上記+陳皮、半夏 |
主な得意症状 | イライラ、興奮、不眠、筋緊張、小児の疳症 | 上記+食欲不振、胃もたれ、吐き気、痰、消化器症状 |
適するタイプ | 神経過敏、イライラ、筋緊張、体力中程度~やや虚弱 | 上記に加え、胃腸が弱い、食欲不振があるタイプ |
どちらの処方が適しているかは、個々の症状や体質によって異なりますので、専門家(医師や薬剤師)の判断が不可欠です。
抑肝散はどこで買える?市販薬と医療用の違い
抑肝散は、医療用医薬品としても、一般用医薬品(市販薬)としても流通しています。それぞれに入手方法や特徴が異なります。
市販薬の利用について
薬局やドラッグストア、インターネット通販などで購入できるのが市販薬です。
- メリット:
- 医師の処方が不要で、手軽に購入できる。
- 自分の判断で試しやすい。
- デメリット:
- 医療用と比較して生薬の含有量が少ない場合が多い: これは、安全性を考慮して、副作用のリスクを低く抑えるためです。そのため、効果がマイルドである可能性や、医療用ほどの効果が得られない可能性があります。
- 含まれている添加物などが異なる場合がある: 製薬会社によって製造方法や添加物が異なります。
- 専門家(医師)の診断がない: 自分の症状が本当に抑肝散に適しているのか、他の病気が隠れていないかなどの判断ができません。
- 保険適用外: 全額自己負担となります。
市販薬は、比較的症状が軽い場合や、医療機関を受診するほどではないけれど試してみたい、という場合に利用を検討できます。ただし、購入時には薬剤師に相談し、自分の症状がその市販薬に適しているか、他に服用している薬はないかなどを確認することが強く推奨されます。添付文書をよく読み、用法・用量を守って使用し、数週間服用しても効果が見られない場合や症状が悪化する場合は、医療機関を受診してください。
医療用抑肝散について
医療機関(病院やクリニック)を受診し、医師の診断を受けて処方してもらうのが医療用医薬品です。
- メリット:
- 医師が症状や体質を診断し、最適な漢方薬(抑肝散であるか、他の漢方薬か、西洋薬との併用かなど)を判断してくれる: より的確な治療が期待できます。
- 市販薬より生薬の含有量が多い場合が多い: 医療用として、より効果が高まるように調整されています。
- 副作用などについて専門家(医師、薬剤師)から詳しい説明が受けられる: 安全に服用するための情報が得られます。
- 保険適用となる: 診察料や薬代が医療保険の対象となるため、自己負担額を抑えられます。
- デメリット:
- 医療機関を受診する手間と時間がかかる。
症状が比較的重い場合、他の病気の可能性がある場合、他の薬を服用している場合、市販薬で効果がなかった場合などは、医療機関を受診して医療用抑肝散の処方を検討するのが良いでしょう。特に、認知症に伴う周辺症状や、重度の不眠、神経症などに対しては、医師の管理下で医療用を用いることが一般的です。
抑肝散に関するよくある質問 (FAQ)
抑肝散に関して、多くの方が疑問に思うであろう点についてまとめました。
抑肝散はどんな人に効く薬ですか?
抑肝散は、主に神経過敏でイライラしやすく、興奮しやすい傾向のある方に適した漢方薬です。特に、ストレスや緊張によって精神的なバランスを崩し、不眠、不安、焦燥感、怒りっぽいといった症状や、それに伴う体のこわばり、歯ぎしり、めまいといった症状がある方に効果が期待できます。小児の夜泣きやひきつけ(疳症)、認知症に伴う周辺症状(BPSD)にも用いられます。体質としては、比較的体力が中程度~やや虚弱な方に合いやすいと言われています。
抑肝散は落ち着く効果がある?
はい、抑肝散には「落ち着く」効果が期待できます。これは、神経の興奮を鎮め、高ぶった感情や精神的な緊張を和らげる作用によるものです。抑肝散の精神神経疾患への応用 イライラしたり、ソワソワしたり、眠れなかったりといった状態を改善することで、心が穏やかになり、落ち着きを取り戻す助けとなります。ただし、効果の感じ方には個人差があります。
抑肝散 効果 いつ飲む?
抑肝散は、一般的に「食前(食事の約30分前)」または「食間(食事と食事の間、食後約2時間後)」に服用することが推奨されています。これは、胃の中に食べ物がない空腹時に飲むことで、成分の吸収が良くなると考えられているためです。ただし、最も大切なのは毎日決まった時間に飲み続けることです。食前や食間が難しい場合は、医師や薬剤師に相談してください。
抑肝散は不眠に効く?
はい、抑肝散は不眠に対して効果を示すことがあります。特に、イライラや神経の興奮、不安、焦燥感といった精神的な高ぶりが原因で、寝つきが悪い、眠りが浅い、夜中に目が覚める、といったタイプの不眠に有効性が期待されます。ただし、不眠の原因は様々ですので、抑肝散がすべてのタイプの不眠に効くわけではありません。不眠の原因に応じた他の治療法や漢方薬の方が適している場合もあります。
抑肝散と加味逍遥散など他の漢方薬との比較
イライラや精神的な不調に用いられる漢方薬は、抑肝散以外にもいくつかあります。代表的なものに「加味逍遥散(かみしょうようさん)」や「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」などがあります。それぞれの漢方薬は、適する体質や症状の組み合わせ(「証」)が異なります。
簡単な比較を以下の表に示します。
漢方薬 | 主な構成生薬 | 適する体質や傾向 | 主な得意症状 |
---|---|---|---|
抑肝散 | 釣藤鉤、柴胡、甘草、当帰、川芎、茯苓、白朮 | 神経過敏、イライラ、筋緊張 | イライラ、興奮、不眠、筋緊張、小児の疳症、認知症の周辺症状 |
加味逍遥散 | 柴胡、芍薬、当帰、茯苓、白朮、甘草、牡丹皮、山梔子、生姜、薄荷 | 体力中程度~やや虚弱、冷え性気味 | 女性の心身の不調(イライラ、ゆううつ、疲労感、のぼせ、冷え、生理不順、肩こりなど) |
半夏厚朴湯 | 半夏、茯苓、厚朴、紫蘇葉、生姜 | 体力中程度、神経質 | 喉のつかえ感(ヒステリー球)、不安、神経症、動悸、めまい、吐き気 |
抑肝散加陳皮半夏 | 抑肝散の生薬 + 陳皮、半夏 | 抑肝散タイプ+胃腸が弱い | 抑肝散の症状 + 食欲不振、胃もたれ、吐き気、痰 |
この表はあくまで一般的な目安であり、漢方医学的な診断(「証」の判定)はより複雑です。どの漢方薬が自分に合っているかは、専門家である医師や薬剤師に相談して判断してもらうことが最も重要です。自己判断で安易に選ばず、専門家のアドバイスを受けましょう。
まとめと専門家への相談の重要性
抑肝散は、イライラや神経の興奮、不眠、筋緊張といった心身の不調に対して効果が期待できる漢方薬です。特に神経過敏な体質の方や、小児の疳症、認知症に伴う周辺症状に対して有用性が報告されています。抑肝散の精神神経疾患への応用 また、抑肝散に陳皮と半夏を加えた抑肝散加陳皮半夏は、これらの症状に加えて消化器症状を伴う場合に適しています。
抑肝散は比較的安全性の高い漢方薬とされていますが、副作用が全くないわけではありません。まれに肝機能障害や間質性肺炎、偽アルドステロン症などの重篤な副作用も起こり得ます。グリチルリチンと抑肝散の併用で偽アルドステロン症を呈し 市販薬として手軽に入手できますが、医療用と比較すると効果や安全性の管理が異なります。
あなたの症状が抑肝散に適しているのか、他の病気が隠れていないか、適切な服用量や期間はどのくらいか、他の薬との飲み合わせは大丈夫か、といった点は、専門家でなければ判断できません。
心身の不調にお悩みの場合は、自己判断で市販薬を漫然と服用したり、「やばい」と不安になったりする前に、まずは医師や薬剤師といった専門家に相談しましょう。漢方薬に詳しい医師(漢方医)に相談できれば、より正確な「証」に基づいた診断と、適切な処方・アドバイスを受けることができます。
本記事は、抑肝散に関する一般的な情報を提供するものであり、特定の治療法を推奨したり、自己判断での使用を促したりするものではありません。個人の症状や体質は千差万別です。安全かつ効果的に抑肝散を使用するためには、必ず専門家の指導のもとで検討・服用してください。