子供の癇癪に悩む親御さんへ、専門家監修のもと、その原因や年齢別の特徴、具体的な対処法について詳しく解説します。
お子さんの突然の激しい泣きや叫び、物に当たり散らすといった行動に、戸惑い、疲れ果て、時には自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
この記事では、なぜ子供が癇癪を起こすのかを理解し、年齢に合わせた適切な関わり方を知ることで、親子の負担を少しでも減らすヒントをお届けします。
お子さんの癇癪との向き合い方について一緒に考えていきましょう。
「癇癪(かんしゃく)」とは、主に乳幼児期から学童期初期にかけて見られる、感情の爆発的な表出を伴う行動を指します。
医学的な正式名称ではありませんが、一般的には「テンプラム・タントラム(temper tantrum)」と呼ばれ、子供が自分の感情や欲求をうまくコントロールできないために起こる、一時的で強い不機嫌や怒りの表現として理解されています。
具体的な行動としては、以下のようなものが含まれます。
- 激しく泣き叫ぶ、奇声をあげる
- 床に寝転がって手足をバタつかせる
- 体を反らせる
- 物を投げる、叩きつける
- 頭を打ち付ける、自分を叩く
- 息を止める(数秒程度)
- 噛みつく、ひっかく
- 言葉にならないうなり声や不満をぶつける
これらの行動は、特定の状況(例えば、思い通りにならない、眠い、お腹が空いたなど)で突然始まり、数分から長い場合は数十分続くこともあります。
癇癪は、子供の成長過程における自然な一環であり、特に自己主張が芽生え始める2歳頃から増え、3~4歳頃にピークを迎えることが多いとされています。
多くの子供は、言葉や感情のコントロールが発達するにつれて、徐々に癇癪の頻度や程度が減っていきます。
癇癪は、子供が「困っている」「助けてほしい」「うまくできない」といったSOSを、まだ適切な言葉で伝えられないがために起こる行動であると捉えることが重要です。
これは、親を困らせようとしているのではなく、自分の内側で処理しきれない強い感情(怒り、悲しみ、 frustrated 、不安など)があふれ出した結果なのです。
癇癪を起こしやすい子の具体的な特徴
全ての子供が同じように癇癪を起こすわけではありません。
癇癪を起こしやすい子には、いくつかの特徴が見られることがあります。
ただし、これらの特徴があるからといって必ずしも癇癪持ちになるわけではなく、あくまで傾向として理解してください。
- 気質的に敏感、こだわりが強い: 生まれつき、音、光、触感などの感覚刺激に敏感だったり、物事へのこだわりが強かったりする子は、自分の思い通りにならない状況や、不快な刺激に対して強く反応し、癇癪を起こしやすいことがあります。
- 言葉の発達が追いついていない: 自分の欲求や感情を言葉でうまく伝えられない子供は、もどかしさから癇癪という行動で表現することがあります。
特に、理解できる言葉の量に比べて、話せる言葉の量が少ない時期に起こりやすい傾向があります。 - 疲れやすい、空腹など体調が不安定: 体力がなく疲れやすかったり、睡眠不足や空腹などの身体的な不調があると、感情をコントロールするエネルギーが低下し、些細なことでも癇癪に繋がりやすくなります。
- 環境の変化への適応に時間がかかる: 新しい場所や状況に慣れるのに時間がかかる、予期せぬ出来事に弱いといった特性を持つ子は、不安感から癇癪を起こすことがあります。
ルーティンが崩れることへの抵抗も強い場合があります。 - 感情の起伏が大きい: 喜怒哀楽の感情が豊かで、感情の波が大きい子供は、その分、怒りや悲しみといったネガティブな感情も強く表れることがあります。
これらの特徴は、必ずしも問題行動として捉える必要はありません。
これらは子供一人ひとりの個性や発達段階によるものであり、親や周囲の理解と適切なサポートによって、子供は徐々に自分の感情と向き合い、表現する方法を学んでいきます。

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子供が癇癪を起こす主な原因
子供の癇癪は、一つの原因だけで起こることは少なく、様々な要因が複雑に絡み合って生じることがほとんどです。
主な原因を理解することで、子供の癇癪への向き合い方が見えてくるかもしれません。
年齢別の癇癪の原因(1歳、2歳、3歳など)
子供の成長段階によって、癇癪の原因となる主な要因は変化していきます。
年齢別の特徴を理解することは、その子に合った対応を考える上で非常に役立ちます。
年齢 | 主な原因 | 癇癪の出方(傾向) |
---|---|---|
0歳~1歳頃 | 身体的な不快感(空腹、眠気、おむつ、暑い/寒い)、痛み、構ってほしい要求 | 泣き叫ぶ、体を反らせる、手足をバタバタさせる、顔を真っ赤にする |
1歳~2歳頃 | 言葉にならない欲求(「あれ欲しい」「これやりたい」)、行動制限への抵抗、親への試し行動 | 激しい泣き叫び、床に寝転がる、物を投げる/叩く、体を反らせる(「イヤイヤ期」の萌芽) |
2歳~3歳頃 | 自己主張と能力のギャップ、言葉での表現の難しさ、思い通りにならないことへの frustrated 、「イヤイヤ期」本格化 | 泣き叫び、暴れる、物を破壊しようとする、息を止める、噛みつく/ひっかく、公共の場でも起こりやすい |
3歳~4歳頃 | 複雑な要求への戸惑い、ルール理解の難しさ、友達との関わり、感情コントロールの難しさ | 言葉と行動が混ざる(「やだー!」と叫びながら暴れる)、比較的長時間続くことも(ピーク) |
4歳~5歳頃 | 集団生活でのストレス、状況判断の難しさ、負けず嫌い、友達とのトラブル | 言葉での抵抗が増える、場所や相手によって癇癪の出方が変わることも、ズルをしようとする場合も |
5歳以降 | 学校での環境変化、学習面での困難、人間関係、プライド、自己肯定感の低さ | 頻度は減る傾向だが、一度起こると冷静になるのに時間がかかる場合も、拗ねる、物に当たる |
7歳頃 | 小学校生活への不適応、学習の遅れ、友達との孤立、先生との関係、不安感 | 以前より言葉で訴えることも増えるが、手がつけられない場合は根本的な原因がある可能性も |
このように、年齢が上がるにつれて、癇癪の原因は身体的な不快感から、感情、社会性、認知といったより複雑なものへと変化していきます。
欲求不満や感情表現の未熟さ
子供の癇癪の最も一般的な原因の一つは、自分の欲求や感情を適切に表現できないことによる欲求不満( frustration )です。
- 「〜したい」「〜してほしい」が伝えられない: まだ言葉が十分でない時期は、「おもちゃを取りたい」「抱っこしてほしい」「遊びたい」といった単純な欲求でさえ、言葉で伝えきれず、全身を使って不満を表現するしかありません。
少し言葉が出始めたとしても、自分の感じている複雑な気持ち(「悲しいけど、怒っているような、なんだか悔しいような…」)を言葉にすることは、大人でも難しいことです。 - 感情の識別と表現の難しさ: 子供は、怒り、悲しみ、喜び、不安といった様々な感情を経験しますが、それらがどのような感情なのかを理解し、相手に伝える術をまだ知りません。
特にネガティブな感情は、どう処理していいか分からず、行き場を失って爆発的な行動として表れることがあります。 - 自己主張と能力のギャップ: 「自分でやりたい!」という強い自己主張が芽生えても、実際の能力が追いつかないことで生じる frustrated も癇癪の原因となります。
例えば、靴を自分で履こうとしてうまくいかない、ブロックがうまく積めない、といった状況です。
これらの欲求不満や感情の未熟さが、子供の心の中に溜まり、些細なきっかけで癇癪という形で噴き出してしまいます。
これは、子供が言葉や感情コントロールのスキルを学ぶ過程で必ず通る道であり、親や周囲が根気強くサポートしていく必要があります。
環境の変化や体調不良
子供は大人以上に、周囲の環境や自身の体調に影響を受けやすい存在です。
以下のような要因も、癇癪の引き金となることがあります。
- 大きな環境の変化:
- 保育園や幼稚園への入園・転園
- 弟や妹の誕生
- 引っ越し
- 親の仕事の変化(在宅勤務が増えた/減ったなど)
- 習い事の開始
これらの変化は、子供にとって大きなストレスや不安となり、いつもはしないような癇癪を起こす原因となることがあります。
- 日常的な環境要因:
- 騒がしい場所、人混み( Sensory Overload )
- 見慣れない場所や初めて会う人
- 普段と違うスケジュール
感覚過敏の傾向がある子供などは、特定の音や光、匂いなど、日常的な刺激が不快で癇癪を起こすこともあります。
- 体調不良:
- 睡眠不足
- 空腹
- 発熱や風邪などの病気
- 疲れすぎ
大人でも体調が悪いとイライラしやすくなるように、子供も体調が万全でないときは、感情のコントロールが難しくなり、普段なら我慢できることも癇癪として表れてしまいます。
- 食事の内容:
- 糖分の摂りすぎによる血糖値の急激な変動
特定の食品添加物への感受性
といった、食事の内容が情緒の不安定さに繋がる可能性も指摘されることがありますが、これらは個人差が大きく、科学的な根拠が確立されているわけではありません。
しかし、気になる場合は専門家に相談してみる価値はあるでしょう。
これらの環境の変化や体調不良によって、子供はいつも以上に不安を感じたり、感情を抑えるエネルギーがなくなったりするため、癇癪が起こりやすくなります。
特に、大きな変化や体調不良の後は、子供をいつも以上に気遣い、安心できる環境を整えてあげることが大切です。
子供の癇癪は親のせい?保護者が知っておくべきこと
子供が激しい癇癪を起こすと、親は「自分の育て方が悪かったのだろうか」「愛情が足りないのだろうか」と、自分を責めてしまうことがよくあります。
しかし、子供の癇癪は、基本的に親の愛情不足や育て方の失敗が原因で起こるものではありません。
繰り返しになりますが、癇癪は子供が成長する過程で、言葉や感情のコントロールがまだ十分にできないために起こる、一時的で自然な現象です。
特に2歳から4歳頃の「イヤイヤ期」における癇癪は、子供が自己主張を学び、自立心や自分自身の境界線を確立しようとしている大切な発達段階のサインでもあります。
親が知っておくべき重要なことは以下の点です。
- 癇癪は成長の過程である: 多くの子供が経験する通過点であり、異常なことではありません。
適切に関わることで、子供は感情表現の方法を学んでいきます。 - 親の愛情は関係ない: 癇癪を起こすのは、親から十分に愛情を受けている子供でも起こりえます。
むしろ、安心できる存在である親の前だからこそ、感情を爆発させられるという側面もあります。 - 親のストレスや疲労も影響する: 親が強いストレスを抱えていたり、疲労困憊していると、子供のサインに気づきにくくなったり、冷静な対応が難しくなったりすることはあります。
しかし、それは親が「悪い」のではなく、サポートが必要なサインです。
親自身が休息を取ることも大切です。 - 完璧な親はいない: どんな親でも、子供の癇癪にうまく対処できないと感じたり、イライラしたりすることはあります。
自分自身を追い詰めすぎないでください。
子供の癇癪に直面したとき、親が自分を責めることは、さらに親自身の精神的な負担を増やし、子供への対応を困難にする可能性があります。
「これは成長の過程なんだ」「私のせいじゃない」と理解し、自分自身に優しくなることが、結果的に子供にとって最善のサポートに繋がります。
必要であれば、パートナーや家族、友人、専門機関などに相談し、サポートを求めることをためらわないでください。
子供の癇癪、年齢別の特徴とピーク
子供の癇癪は、その年齢によって特徴や頻度、程度が異なります。
一般的に「癇癪のピーク」と言われる時期がありますが、全ての子供に当てはまるわけではありません。
ここでは、年齢別の癇癪の特徴と、ピークについて詳しく見ていきます。
1歳、2歳頃の癇癪の特徴
この時期の癇癪は、主に身体的な不快感や単純な欲求不満から生じることが多いです。
言葉でのコミュニケーションがまだ未発達なため、全身を使って感情を表現します。
- Durationが短い傾向: 比較的短時間で終わることが多いです。
しかし、頻繁に起こる場合もあります。 - 理由が単純: 「お腹が空いた」「眠い」「暑い/寒い」「これに触りたいけど届かない」「抱っこしてほしい」「これをやりたくない」など、シンプルで具体的な理由が背景にあることが多いです。
- 全身を使った表現: 泣き叫ぶ、大声でうなる、体を反らせる、手足をバタバタさせる、床に寝転がる、頭を打ち付ける(軽く)といった、身体的な行動が中心となります。
- 言葉での慰めが伝わりにくい: まだ言葉の理解が進んでいないため、「大丈夫だよ」「泣かないで」といった言葉での説得や共感が伝わりにくく、物理的な安心感(抱っこ、寄り添うなど)の方が効果的な場合があります。
- 親への試し行動: 特に2歳頃からは、親がどのように反応するかを試すような行動(親の気を引くための癇癪など)も見られることがあります。
1歳、2歳頃の癇癪は、子供が自分の体と感情の繋がりを感じ取り、基本的な欲求表現の方法を学んでいる段階と捉えられます。
親は、子供の身体的なサイン(眠そう、お腹が空いてそうなど)に注意し、できる限り事前に不快感を取り除くように努めることが、癇癪の予防に繋がります。
3歳、4歳頃の癇癪の特徴(ピーク)
この時期は、多くの子供にとって癇癪の頻度や激しさが増し、ピークを迎えると言われています。
「魔の2歳児」に続く「悪魔の3歳児」と呼ばれることもあり、親にとっては最も大変な時期の一つかもしれません。
- Durationが長くなる傾向: 一度の癇癪が数十分続くこともあり、親の体力と精神力を消耗させます。
- 言葉と行動が混ざる: 言葉の発達が進み、「やだ!」「違う!」「〇〇が欲しい!」といった言葉で主張しながらも、同時に泣き叫ぶ、物を投げる、暴れるといった行動を伴います。
言葉で伝えたい気持ちがあるのに、うまく伝えきれない frustrated が強まる時期でもあります。 - 要求が複雑化: 「お菓子が食べたい」「公園に行きたい」「あの服を着たい」といった具体的な要求から、「なぜ〇〇しちゃいけないの?」「ずるい!」といった、ルールや公平さに関する不満まで、原因が複雑になります。
- 公共の場での発生: 外出先やお店、公園など、公共の場で癇癪を起こすことが増え、親は周囲の視線を感じて強いプレッシャーを感じやすくなります。
- 感情コントロールの難しさ: 自分の強い感情(怒り、悲しみ、悔しさなど)を、言葉や理性で抑え込むことが非常に難しい時期です。
感情の波に飲み込まれてしまう感覚に近いかもしれません。
この時期に癇癪がピークを迎えるのは、子供の認知能力、社会性、感情コントロールといった様々な能力が急速に発達する一方で、それらのバランスがまだ不安定であるためです。
自己主張が強まり、自分の思い通りにしたい気持ちと、現実との間に大きなギャップを感じやすいことも原因です。
親は、この時期の癇癪が成長の証であると理解し、根気強く子供の感情を受け止め、適切な行動を促していくことが求められます。
5歳以降の癇癪の特徴
5歳頃になると、多くの子で癇癪の頻度や激しさは落ち着いてくる傾向が見られます。
小学校入学を控えるなど、社会性がより育まれる時期です。
- 頻度は減る傾向: 毎日癇癪を起こすといったことは少なくなり、特定の状況でのみ発生することが増えます。
- 言葉での訴えが増える: 自分の気持ちや状況を言葉で説明できることが増えるため、癇癪に至る前に言葉で不満を表現したり、交渉したりすることが可能になります。
- 場所や相手を選んで出す: 親や家の中など、安心できる場所や相手の前でだけ癇癪を起こし、外や友達の前では我慢するといった、場所や相手によって癇癪の出方を変えることができる子供もいます。
これは、感情をある程度コントロールできるようになった証拠とも言えますが、一方で無理に我慢させている可能性も示唆します。 - 原因の多様化: 友達とのトラブル、ルールの理解や遵守の難しさ、負けず嫌いからくる悔しさ、学習面でのつまずきなど、より社会的な関わりや認知的な課題が原因となることがあります。
- 拗ねる、ふてくされるといった表現: 激しく泣き叫ぶだけでなく、黙り込む、拗ねる、乱暴な言葉を使う、物に当たる(程度は軽減されることが多い)といった、より複雑な感情表現として表れることもあります。
5歳以降の癇癪は、子供が自分の感情を言葉で表現したり、社会的なルールの中で感情をコントロールする方法を学んだりしている段階で見られるものです。
完全に癇癪がなくなるわけではありませんが、その性質は変化していきます。
この時期に頻繁に癇癪を起こしたり、手がつけられないほど激しい癇癪が続く場合は、後述する発達特性やその他の原因も考慮し、専門家に相談することも検討しましょう。
7歳でも手がつけられない癇癪の場合
多くの子で癇癪が落ち着くと言われる7歳(小学校入学後)になっても、頻繁に、あるいは一度始まると手がつけられないほど激しい癇癪が続く場合は、成長に伴う一時的なものではない可能性も考慮する必要があります。
7歳頃の子供は、小学校という新しい環境に適応しようとしています。
ここでは、家庭や幼稚園・保育園とは異なる、より複雑なルールや人間関係、学習への取り組みが求められます。
この時期に癇癪が続く原因としては、以下のようなものが考えられます。
- 小学校での環境変化やストレスへの適応困難: 新しい環境に馴染めない、友達作りがうまくいかない、先生との関係に悩んでいる、といったストレスが癇癪として表れることがあります。
- 学習面での困難: 授業についていけない、宿題が難しい、といった学習に関するつまずきが、 frustrated や自信喪失につながり、癇癪の原因となることがあります。
- 人間関係のトラブル: 友達とのいざこざ、いじめといった問題が背景にある場合。
- 自己肯定感の低さや不安感: 自分に自信が持てず、些細な失敗や指摘に対しても過剰に反応し、癇癪を起こすことがあります。
不安感が強い場合も同様です。 - 発達特性との関連: ADHDやASDといった発達障害の特性が、環境への不適応や感情コントロールの困難さ、コミュニケーションの問題として現れ、癇癪に繋がっている可能性があります。
後述する「癇癪と発達障害の関連性」で詳しく解説します。
7歳になっても癇癪が改善しない、あるいは悪化していると感じる場合は、「これも成長の過程だろう」と楽観視せず、専門機関に相談することを強くお勧めします。
早期に原因を探り、適切なサポートを受けることが、子供自身の生きづらさを軽減し、今後の成長にとって非常に重要です。
子供の癇癪への具体的な対処法
子供の癇癪に直面したとき、親は冷静さを保つことが非常に難しいと感じるものです。
しかし、親が適切に対応することで、子供は少しずつ感情のコントロール方法を学んでいきます。
ここでは、癇癪中の対応と、癇癪を予防するための関わり方について具体的な方法を紹介します。
癇癪中の子供への対応(安全確保、落ち着くのを待つ)
子供が癇癪を起こしている最中は、言葉での説得や叱責はほとんど効果がありません。
最優先すべきは、子供と周囲の安全確保と、子供が落ち着くのを待つことです。
- 安全確保:
- まず、子供と周囲に危険なものがないか確認します。
ガラス製品や尖ったもの、倒れやすい家具などを子供から遠ざけたり、子供を安全な場所に移動させたりします。 - 子供が自分自身を傷つけようとする(頭を打ち付けるなど)場合は、怪我をしないように優しく保護します。
ただし、強く抑えつけたり、無理に動きを止めようとすると、かえって子供の興奮を招くことがあるため、注意が必要です。 - 公共の場の場合は、可能であれば人通りの少ない場所へ移動させましょう。
- まず、子供と周囲に危険なものがないか確認します。
- 静かに見守る、寄り添う:
- 子供が泣き叫んだり暴れたりしていても、まずは静かに見守りましょう。
親が慌てたり、大きな声を出すと、子供はさらに不安になったり興奮したりすることがあります。 - 子供によっては、抱きしめてもらうことで落ち着く子もいれば、触られることを嫌がり、一人になりたい子もいます。
子供の様子をよく見て、その子にとって最も安心できる方法を選びましょう。
近くに座ってただ寄り添うだけでも、子供は安心感を得られることがあります。 - 子供が言葉で何かを訴えている場合も、癇癪が激しい間は話を聞き出すのは困難です。
「悲しかったんだね」「嫌だったんだね」など、子供の感情に寄り添う言葉を短く伝える程度にとどめましょう。
問い詰めたり、理由を問いただしたりするのは逆効果です。
- 子供が泣き叫んだり暴れたりしていても、まずは静かに見守りましょう。
- 落ち着くのを待つ:
- 癇癪は、感情のエネルギーが噴き出して、それが収まるのを待つ時間が必要です。
親は「早く泣き止んでほしい」と焦る気持ちになりますが、子供自身が感情を処理し、クールダウンするのを待ちましょう。 - 親自身も深呼吸をしたり、「これは成長の過程だ」「私のせいじゃない」と心の中で唱えたりして、冷静さを保つよう努めましょう。
親が落ち着いていることが、子供が安心を取り戻すための土台となります。 - 「泣き止んだら話を聞いてあげるね」など、落ち着いた後の見通しを短く伝えるのも良いでしょう。
- 癇癪は、感情のエネルギーが噴き出して、それが収まるのを待つ時間が必要です。
癇癪中の対応のポイント:
- 怒らない、叱らない: 癇癪中に叱っても、子供は内容を理解できませんし、かえって逆効果です。
- 要求を全て受け入れない: 癇癪を起こせば要求が通るという成功体験を与えないようにしましょう。
ただし、危険な状況を避けるためなど、やむを得ない場合は別です。 - 物理的に無理やり止めない: 危険な行動以外は、無理に動きを止めず、見守ることが大切です。
- 親自身もクールダウン: 癇癪を見守る親も大きなストレスを感じます。
可能であればパートナーと交代したり、数分間だけ別の部屋へ行ったりして、自分自身も気持ちを落ち着かせる時間を取りましょう。
対応策 | 具体的な行動 | 効果(期待されること) | 注意点 |
---|---|---|---|
安全確保 | 危険物を遠ざける、安全な場所へ移動させる | 子供と周囲の怪我を防ぐ | 無理やり引きずったりしない |
静かに見守る | 少し離れて子供の様子を見守る、口出ししない | 子供が自分の感情と向き合う時間を与える、親の興奮を子供に伝えない | 子供が危険な行動をとっていないか常に注意を払う |
寄り添う | 子供の近くに座る、優しく背中をさする(嫌がらない場合)、抱きしめる(受け入れる場合) | 子供に安心感を与える、一人ではないことを伝える | 子供が触られるのを嫌がっている時は無理強いしない |
感情に寄り添う | 「悲しかったね」「嫌だったんだね」と短い言葉で伝える | 子供は自分の気持ちを理解してもらえたと感じる、信頼関係を築く | 理由を問い詰めたり、長い説明をしない |
待つ | 子供が落ち着くまで時間をかける、親も深呼吸するなどクールダウンする | 子供が感情を処理し、冷静になる時間を与える、親の精神的な安定につながる | 親が完全に無視しているように見えないように注意(見守っていることを伝える) |
要求への対応 | 癇癪によって要求が通るような対応は避ける(ただし、危険を回避する場合などは柔軟に) | 癇癪をすれば願いが叶うという学習を防ぐ | 一方的に拒否するのではなく、落ち着いた後に代替案などを提示する |
癇癪を予防するための関わり方
癇癪が起こってしまった後の対応だけでなく、日頃からの関わり方が癇癪の予防に繋がります。
- 子供の気持ちを言葉にする練習: 親が子供の気持ちを言葉にして伝える手本を見せます。
「〇〇ができて嬉しいね」「これができなくて残念だったね」「今、怒っているんだね」など、様々な感情を言葉で表現することを日常的に行うことで、子供は自分の感情に名前をつけ、言葉で表現することを学んでいきます。 - 肯定的な声かけを増やす: 子供の良い行動や頑張りを具体的に褒めることで、自己肯定感を育みます。
「〜しなさい」といった指示だけでなく、「〜ができたね!すごいね!」「〇〇してくれてありがとう、助かったよ」といった肯定的な言葉をたくさんかけましょう。 - 選択肢を与える: 子供に自分で物事を選ぶ経験をさせることで、自立心や自己決定能力を育みます。
例えば、「この服とあの服、どっちを着る?」「絵本とブロック、どっちで遊ぶ?」など、簡単な選択肢から始めましょう。
自分で選んだことに対しては、たとえうまくいかなくても癇癪になりにくい傾向があります。 - 見通しを持たせる(ルーティンを作る): 次に何が起こるか、スケジュールがどうなっているかが見えないことは、子供にとって大きな不安になります。
朝起きてから夜寝るまでのルーティンを決めたり、「これが終わったら、次はお風呂だよ」「あと〇分でお出かけするよ」と事前に声をかけたりすることで、子供は安心して過ごすことができます。 - 十分な睡眠と栄養、適度な運動: 体調が安定していることは、感情をコントロールするための基盤となります。
規則正しい生活リズムを心がけ、バランスの取れた食事、十分な睡眠、そして体を動かす時間を確保しましょう。 - 親自身の休息: 親が疲れていると、子供の癇癪に対して冷静に対応することが難しくなります。
パートナーや家族に協力してもらったり、一時的に子供と離れて一人の時間を持ったりするなど、親自身も休息を取ることを忘れずに。
親が心身ともに健康であることが、子供への適切なサポートに繋がります。 - 癇癪が起きやすい状況を把握し、可能な限り避ける: 子供が空腹時や疲れている時に癇癪を起こしやすいのであれば、おやつの時間を早めたり、無理な外出を控えたりするなどの配慮ができます。
子供の癇癪パターンを観察し、対策を立てましょう。 - 事前にルールや約束を確認する: 外出する前に「お店の中では走らないよ」「騒がないでね」など、その場所でのルールや約束を事前に子供と確認しておくと、いざという時に「さっき約束したよね」と伝えることができます。
落ち着いた後のフォロー
癇癪が収まって子供が落ち着きを取り戻したら、その後のフォローが非常に重要です。
このフォローによって、子供は自分の感情や行動を振り返り、次にどうすれば良いかを学ぶ機会を得ます。
- 安心感を与える: 子供が落ち着いたら、まずは優しく声をかけたり、抱きしめたりして、安心感を与えましょう。
「落ち着いたね」「大丈夫だよ」といった、子供を受け入れるメッセージを伝えます。
癇癪を起こしたことを責める言葉は絶対に避けましょう。 - 感情や状況を振り返る: 子供が完全に落ち着きを取り戻し、話を聞く準備ができたら、なぜ癇癪が起こったのかを一緒に振り返ってみましょう。
子供の年齢に合わせて、簡単な言葉で話します。
「さっき、〇〇ができなくて悲しかったんだね」「〇〇がしたかったんだね」など、子供の気持ちに寄り添いながら、状況を整理する手助けをします。 - 感情の表現方法を教える: 癇癪を起こした時に感じた気持ち(怒り、悲しみなど)を、どうすれば言葉で伝えられるか、他の方法で表現できるかを一緒に考えます。
「怒った時は、『怒っているよ』って言ってみようね」「悲しかった時は、お母さん(お父さん)に教えてね」など、具体的な言葉や行動を提案します。
絵やぬいぐるみを使って気持ちを表現する方法を教えるのも効果的です。 - 代替行動を考える: 「〇〇できなかった時は、どうしたらよかったかな?」と、癇癪以外の解決策を子供と一緒に考えます。
「助けてって言ってみようか」「一回休憩しようか」など、子供自身に考えさせることが大切です。 - 蒸し返さない: 癇癪が収まり、フォローが終わったら、その件について何度も蒸し返すのは避けましょう。
「また癇癪起こすんじゃないか」と親が不安に思っていても、それを子供に悟らせないように努めます。
終わったことは一旦リセットし、普段通りの関わりに戻ることが大切です。
落ち着いた後のフォローは、癇癪の再発を防ぎ、子供が感情を調整するスキルを身につけるための重要なステップです。
子供のペースに合わせて、根気強く関わっていきましょう。
手がつけられないほどひどい場合の対応
子供の癇癪があまりにも激しく、手がつけられない、危険な行動を伴う、頻繁に起こるといった場合は、家庭での対応だけでは限界があることがあります。
- 最優先は安全確保: 子供が自分や他人を傷つけたり、物を壊したりするような危険な行動をとっている場合は、まず安全確保が最優先です。
可能であれば、子供が怪我をしないような広い場所へ移動させたり、危険なものを片付けたりします。
一時的に子供の動きを優しく抑制する必要がある場合もありますが、これはあくまで安全のための最小限にとどめ、力任せにならないように注意が必要です。 - 一時的なクールダウン: 子供が激しく興奮している場合、落ち着くまで物理的に距離を置くことが必要な場合もあります。
安全な部屋やスペースで、一人で落ち着く時間を与える「タイムアウト」といった方法がありますが、これは罰としてではなく、クールダウンのための時間として設定することが重要です。
子供が一人でいられる年齢や性格であるかを見極めて行いましょう。 - 無理に対話しない: 手がつけられないほど興奮している子供に、言葉で何かを伝えたり、理由を聞き出そうとしたりしても、ほとんど効果がありません。
かえって火に油を注ぐことになりかねません。
この場合は、子供が落ち着くのをひたすら待つことが最も賢明な対応です。 - 専門機関への相談: 癇癪の頻度や激しさが年齢に比べて極端に強い、一度癇癪を起こすと1時間以上続く、毎日何回も起こる、危険な自傷他害行為を伴う、といった場合は、単なる「イヤイヤ期」や「成長の過程」ではない可能性を疑い、専門機関に相談することを強くお勧めします。
どのような場合に相談すべきかについては、後述するセクションで詳しく解説します。
手がつけられないほどひどい癇癪は、親にとっても非常に辛く、精神的な負担が大きい状況です。
一人で抱え込まず、専門家のサポートを借りることをためらわないでください。
癇癪と発達障害の関連性
子供の癇癪の背景に、発達障害(ADHD、ASDなど)の特性が関連している場合があります。
しかし、「癇癪を起こす子供=発達障害」というわけでは断じてありません。
多くの子供は発達障害とは無関係に癇癪を起こします。
重要なのは、単なる一時的な癇癪なのか、それとも発達特性からくる生きづらさが癇癪という形で表れているのかを見極めることです。
発達障害(ADHD、ASDなど)の特性と癇癪
発達障害のある子供は、その特性ゆえに、定型発達の子供とは異なる理由や状況で癇癪を起こしやすいことがあります。
- ADHD(注意欠如・多動症)と癇癪:
- 衝動性: 感情を抑え込むのが難しく、思いついたままに行動したり、カッとなったりしやすい特性があります。
この衝動性が癇癪に繋がりやすい要因となります。 - 感情調節の困難さ: 自分の感情を認識し、調整することが苦手な場合があります。
怒りや悲しみといった強い感情を、言葉で表現したり、落ち着かせたりするのが難しいため、爆発的な癇癪という形で表れやすいです。 - 待てない、順番が守れないことへの frustrated: 自分の番が来るまで待てない、ルールが守れないといった状況で、思い通りにならないことへの苛立ちから癇癪を起こすことがあります。
- 衝動性: 感情を抑え込むのが難しく、思いついたままに行動したり、カッとなったりしやすい特性があります。
- ASD(自閉スペクトラム症)と癇癪:
- 感覚過敏・鈍麻: 特定の音、光、匂い、肌触りといった感覚刺激に対して、非常に敏感であったり、逆に鈍麻であったりします。
感覚過敏がある場合、不快な刺激から逃れられない状況で強いパニックや癇癪を起こすことがあります。 - こだわり、変化への抵抗: 決まったやり方やRoutineへのこだわりが強く、予期せぬ変化やRoutineが崩れることに強い抵抗を感じ、不安や混乱から癇癪を起こすことがあります。
- コミュニケーションの困難さ: 自分の気持ちや意図を相手にうまく伝えることが難しかったり、相手の言っていることや感情を理解するのが難しかったりします。
このコミュニケーションのすれ違いや孤立感が、癇癪の原因となることがあります。 - 見通しの立たなさへの不安: 次に何が起こるか、どのように行動すれば良いかの見通しが立たない状況で、強い不安を感じ、癇癪を起こすことがあります。
- 感覚過敏・鈍麻: 特定の音、光、匂い、肌触りといった感覚刺激に対して、非常に敏感であったり、逆に鈍麻であったりします。
ADHDやASDの特性を持つ子供の癇癪は、単なるわがままや反抗ではなく、その特性ゆえに感じる生きづらさや、環境とのミスマッチから生じていることが多いです。
これらの子供たちには、特性に配慮した環境調整や、感情調整、コミュニケーションスキル獲得のための専門的なサポートが必要となります。
発達障害の可能性を疑うサイン
癇癪が頻繁で激しいことに加え、以下のような他の発達面での特徴が同時に見られる場合は、発達障害の可能性も視野に入れ、専門機関に相談することを検討するサインとなります。
カテゴリ | 疑うサイン(例) |
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癇癪の性質 | ・年齢に見合わない頻度や強さ(5歳以降も毎日/頻繁に、長時間、危険な行動を伴う) ・特定の状況(音、光、触感など)でひどくなる ・切り替えが極端に苦手 |
コミュニケーション | ・言葉の発達の遅れや偏り ・一方的な話し方、会話のキャッチボールが苦手 ・相手の表情や気持ちを読み取るのが苦手 ・比喩や皮肉が理解できない |
社会性 | ・集団の中で孤立しがち、友達との関わり方がぎこちない ・暗黙のルールやTPOが理解できない ・他の子供への共感が難しい ・場の雰囲気を読むのが苦手 |
行動・興味 | ・特定の物事への異常なこだわりや反復行動 ・落ち着きがなく衝動的な行動が非常に多い ・極端な偏食や感覚への過敏さ/鈍感さ ・不器用さ(運動面、手先) |
学習 | ・特定の教科だけ極端に苦手 ・板書が写せない、忘れ物が多い ・読み書き計算に著しい困難がある(LDの可能性) |
これらのサインはあくまで可能性を示唆するものであり、これらの特徴がいくつか見られるからといって必ずしも発達障害であると診断されるわけではありません。
また、子供の成長には個人差があります。
しかし、気になる点が多い場合や、これらの特徴が子供の日常生活や集団生活に大きな困難をもたらしている場合は、一人で悩まず専門家の意見を聞くことが大切です。
専門家による適切なアセスメントと診断を受けることで、子供の特性を深く理解し、その子に合ったサポート方法を見つけることができます。
専門機関への相談を検討するケース
子供の癇癪に悩む親御さんの中には、「いつまで様子を見ていいのだろうか」「どこに相談すればいいのだろうか」と迷う方も多いでしょう。
ここでは、どのような場合に専門機関への相談を検討すべきか、そして具体的にどのような機関に相談できるのかを解説します。
どのような場合に相談すべきか
子供の癇癪について専門機関への相談を検討すべきサインはいくつかあります。
以下のチェックリストを参考に、当てはまる項目が多い場合は、専門家のサポートを検討する良い機会かもしれません。
- 癇癪の頻度や強さが年齢に比べて極端に強い:
- 3歳を過ぎても毎日、あるいは日に何度も激しい癇癪を起こす。
- 一度の癇癪が30分~1時間以上続くことが頻繁にある。
- 危険な行動を伴う:
- 自分自身を強く叩く、頭を何度も打ち付ける、壁に頭をぶつけるなど、自傷行為を伴う。
- 他の家族や友達に噛みつく、ひっかく、物を投げつけるなど、他害行為を伴う。
- 物を激しく破壊する。
- 癇癪の後でひどく落ち込む、自己肯定感が低い:
- 癇癪を起こした後に強い自己嫌悪に陥り、泣き続けたり、自分を責めたりする。
- 「どうせ僕(私)なんてダメだ」といった、自己肯定感の低い発言が目立つ。
- 他の発達面での遅れや偏りがある:
- 言葉の発達が遅れている。
- 運動面(歩く、走る、飛ぶなど)がぎこちない、不器用さが目立つ。
- 集団行動が苦手、友達との関わり方がわからない。
- 極端なこだわりや感覚過敏/鈍感がある。
- 集団生活(保育園、幼稚園、小学校)での適応に困難がある:
- 先生の指示が通りにくい、ルールが守れない。
- 友達とのトラブルが多い、孤立している。
- 園や学校に行きたがらない、強い抵抗を示す。
- 親自身の育児ノイローゼやストレスが強い:
- 子供の癇癪を見るのが辛くて、毎日が苦痛に感じる。
- 子供に対して常にイライラしてしまい、優しく接することができない。
- 睡眠不足や体調不良が続いている。
- パートナーや家族に相談しても解決しない、あるいは相談できる相手がいない。
これらの項目に複数当てはまる場合、または一つでも深刻に悩んでいる場合は、専門機関に相談することを強くお勧めします。
早期に相談することで、子供に合った適切なサポートを見つけられるだけでなく、親自身の負担も軽減される可能性があります。
相談できる専門機関(小児科、児童相談所、発達支援センターなど)
子供の癇癪について相談できる専門機関はいくつかあります。
どこに相談すべきかは、悩みの内容や地域の状況によって異なります。
相談先 | 特徴・役割 | 相談内容(例) |
---|---|---|
かかりつけの小児科医 | 子供の成長発達全般を見ている身近な存在。体の不調が癇癪の原因でないか確認できる。必要に応じて専門機関を紹介してくれる。 | 風邪でもないのに不機嫌が続く、食欲がない、特定の食べ物で荒れる、原因不明の癇癪、発達について漠然と不安がある |
地域の子育て支援センター/保健センター | 子育てに関する情報提供や相談を受け付けている。気軽に相談できる場所。親子の交流の場を提供していることも。 | 日常的な育児の悩み、他の親との情報交換、地域の育児サービスの紹介、集団健診での相談 |
児童相談所 | 児童福祉の専門機関。虐待の対応だけでなく、子育て全般に関する様々な相談に応じている。専門的な知識を持つ職員(児童福祉司、児童心理司など)が相談に乗ってくれる。必要に応じて行政サービスや専門機関へ繋げてくれる。 | 子供の癇癪がひどく手がつけられない、育児に強い負担を感じている、家族関係の悩み、行政サービスについて知りたい |
発達障害者支援センター/発達支援センター/療育センター | 発達障害に関する専門的な相談、情報提供、発達検査、療育プログラムの提供、家族への支援などを行っている。医療機関と連携している場合が多い。 | 癇癪の背景に発達障害の可能性を疑う、発達検査を受けたい、療育について知りたい、発達障害に関する専門的なアドバイスが欲しい、特性に合わせた関わり方を知りたい |
児童精神科医/小児神経科医 | 子供の心や脳の発達に関する専門医。発達障害の診断や、行動面・情緒面の課題に対する医療的なアセスメントや治療(薬物療法、カウンセリングなど)を行う。 | 発達障害の診断を受けたい、癇癪が重度で医療的な介入が必要か知りたい、他の専門機関で相談したが診断が必要と言われた、心理士によるカウンセリングを受けたい(医師の紹介が必要な場合が多い) |
保育園・幼稚園・学校の担任やスクールカウンセラー | 子供の集団生活での様子をよく知っている。日常的な行動観察から専門機関への相談を勧めてくれることもある。スクールカウンセラーは心理的な相談に応じてくれる。 | 園や学校での子供の様子について相談したい、集団生活での癇癪について悩んでいる、友達との関係について心配がある |
民間の心理カウンセリングルーム | 臨床心理士や公認心理師などが、子供や親の心理的な相談に応じる。遊戯療法など、子供向けのカウンセリングを行っている場合もある。費用は原則自己負担となる。 | 育児のストレス、子供の感情面・行動面の悩み、親子関係の改善、専門機関での診断はまだ考えていないが心理的なサポートを受けたい |
どこに相談すべきか迷う場合は、まずはかかりつけの小児科医や、地域の保健センター・子育て支援センターに相談してみるのが良いでしょう。
そこから、必要に応じてより専門的な機関を紹介してもらうことができます。
一人で抱え込まず、気軽に相談の第一歩を踏み出しましょう。
まとめ:子供の癇癪への理解と向き合い方
子供の癇癪は、多くの親御さんにとって大きな悩みであり、精神的にも体力的にも疲弊するものです。
しかし、この記事を通して、子供の癇癪が、言葉や感情のコントロール能力が未熟な成長過程で見られる、一時的で自然な現象であることをご理解いただけたかと思います。
癇癪は、子供が自分の欲求や感情をうまく伝えられないために起こるSOSであり、親を困らせようとしている行動ではありません。
特に2歳から4歳頃は、自己主張が強まる時期と重なり、癇癪が最も激しくなる傾向があります。
癇癪への対応としては、まず子供と周囲の安全を確保し、子供が落ち着くまで静かに見守ることが基本です。
癇癪中に叱ったり、無理に止めさせたりするのは逆効果です。
子供が落ち着いたら、優しく寄り添い、なぜ癇癪を起こしたのかを一緒に振り返り、感情の表現方法や代替行動を教えていくことが重要です。
日頃からの関わり方としては、子供の気持ちを言葉にする練習をしたり、肯定的な声かけを増やしたり、見通しを持たせることなどが癇癪の予防に繋がります。
そして何よりも、親自身が自分を責めすぎず、休息を取り、心身ともに健康でいることが大切です。
もし、子供の癇癪が年齢に比べて極端にひどい、危険な行動を伴う、他の発達面での遅れや偏りが気になる、親自身が育児に強い負担を感じている、といった場合は、一人で抱え込まず、専門機関への相談を検討してください。
小児科医、児童相談所、発達支援センターなど、様々な相談先があります。
早期に相談することで、子供の特性に合ったサポートを見つけ、親自身の負担を軽減することができます。
子供の癇癪は、親子のコミュニケーションを学ぶ機会でもあります。
大変な時期ではありますが、子供の成長を信じ、温かく見守りながら、一歩ずつ向き合っていきましょう。
免責事項
この記事で提供する情報は一般的なものであり、個別の医療的判断や診断、治療を代替するものではありません。
お子さんの癇癪についてご心配な点がある場合は、必ず専門家(医師、心理士、専門機関の相談員など)の診断やアドバイスを受けてください。
本記事の情報を利用したことによるいかなる結果についても、筆者および掲載サイトは責任を負いかねます。