静かな夜、布団に入って目を瞑ると、なぜか決まって嫌なことばかり思い出してしまう…。
忘れたいはずの過去の失敗や、つらい記憶が次々と浮かび上がってきて、眠りにつけない夜を過ごしている方も少なくないでしょう。
日中は忙しくて気にならないのに、なぜ眠る前になると、このように目を瞑るとつらいことを思い出すのでしょうか。
この記事では、その心理的な原因を紐解きながら、今日からすぐに実践できる具体的な対策を解説します。つらい記憶にとらわれず、心穏やかな夜を取り戻すためのヒントがここにあります。
目を瞑るとつらい記憶が蘇るのは、決してあなただけではありません。これには、脳の働きや心理状態が深く関係しています。
夜に思考が活発化?脳とつらい記憶の関係
日中、私たちの脳は仕事や勉強、人とのコミュニケーションなど、外からのたくさんの情報を処理することに追われています。しかし、夜になりベッドに入って目を瞑ると、そうした外部からの刺激が遮断されます。
すると、脳は「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる、いわばアイドリング状態に入ります。このDMNが活発になると、脳は内側、つまり自分自身の過去の経験や未来の計画、人間関係などについて考えを巡らせ始めます。この過程で、特に感情と強く結びついたつらい記憶が、意図せず浮かび上がりやすくなるのです。
眠る前のリラックスと嫌な思い出の関連性
意外に思われるかもしれませんが、眠るためにリラックスしようとすることが、かえって嫌な思い出を呼び起こすきっかけになることがあります。
日中は、無意識のうちに「つらいことは考えないようにしよう」と心に壁を作って自分を守っています。しかし、眠る前にはその緊張が緩み、心の壁が低くなります。リラックスした状態は、普段抑圧している感情や記憶が心の表面に浮かび上がりやすい状態でもあるのです。そのため、リラックスしているはずなのに、かえって不安や過去のつらい出来事が頭をよぎってしまうのです。
過去のつらい記憶がフラッシュバックするメカニズム
特に強いショックやストレスを伴う出来事を経験した場合、その記憶は「トラウマ記憶」として脳に強く刻まれることがあります。これは、通常の記憶とは異なり、時間や場所の感覚が薄れ、まるで今まさに起きているかのように生々しく感じられるのが特徴です。
このような記憶は、何気ない音や匂い、あるいは「目を瞑る」という行為そのものが引き金(トリガー)となって、突然鮮明に蘇る「フラッシュバック」を引き起こすことがあります。これは、脳が危険を避けようとする本能的な防衛反応の一部とも考えられていますが、本人にとっては非常につらい体験となります。

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目を瞑るだけでつらいことを思い出さない対策
では、どうすればつらい記憶の連鎖を断ち切り、穏やかに眠りにつくことができるのでしょうか。ここでは、具体的な対策をいくつかご紹介します。
寝る前に思考を止める方法
次から次へと考えが浮かんでくるのを無理に止めようとすると、逆効果になることがあります。大切なのは、思考をコントロールする練習です。
- 呼吸に集中する: 目を瞑り、自分の呼吸だけに意識を向けます。「吸って、吐いて」というリズムに集中していると、他の考えが入り込む隙が少なくなります。雑念が浮かんでも、「また考えていたな」と気づき、そっと意識を呼吸に戻すことを繰り返しましょう。
- マインドフルネス瞑想: 呼吸法と似ていますが、「今、この瞬間」に意識を集中する練習です。体の感覚(足が布団に触れている感覚など)や、聞こえてくる音にただ気づくだけで、評価や判断はしません。思考が過去や未来に飛んでしまうのを防ぐ効果が期待できます。
- ジャーナリング(書く瞑想): 寝る前に、頭に浮かんだことをありのままノートに書き出してみましょう。心配事や嫌な記憶を紙に書き出すことで、頭の中から外に出す(アウトプットする)ことができ、思考が整理されてスッキリします。
リラックスして眠りにつくための習慣
寝る直前だけでなく、就寝1〜2時間前から心と体をリラックスモードに切り替える習慣を取り入れましょう。
- 温かい飲み物を飲む: カフェインの入っていないハーブティー(カモミールなど)やホットミルクは、心身をリラックスさせる効果があります。
- ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる: 38〜40℃程度のお湯に15分ほど浸かると、副交感神経が優位になり、心身の緊張がほぐれます。
- アロマや好きな香りを活用する: ラベンダーやサンダルウッドなど、リラックス効果のあるアロマオイルを焚いたり、ピローミストを使ったりするのもおすすめです。
- デジタルデトックス: 就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は、ブルーライトが脳を覚醒させるだけでなく、ネガティブな情報に触れてしまう可能性もあります。寝る1時間前には使用をやめましょう。
嫌な思い出にとらわれない考え方のヒント
つらい記憶が浮かんできたときに、その記憶に飲み込まれないための考え方のコツがあります。
例: 仕事で大きな失敗をした記憶が蘇ってきたら…
- ラベリングする: 「あ、これは『過去の失敗の記憶』だ」と、心の中でラベルを貼ります。記憶そのものではなく、「記憶という思考」として客観的に捉えることができます。
- 事実と感情を分ける: 「失敗した」という事実と、「自分はダメだ」という感情を切り離して考えます。失敗は誰にでもあることであり、あなたの人格全体を否定するものではありません。
- 視点を変える: その経験から学べたことはなかったか、少しだけ視点を変えて考えてみます。無理にポジティブになる必要はありませんが、「あの経験があったから、次はこうしようと思えた」という側面が見つかるかもしれません。
これらの方法は、すぐにはうまくいかないかもしれませんが、繰り返し練習することで、つらい記憶との距離の取り方が上手になっていきます。
専門家に相談するタイミング
セルフケアを試しても、以下のような状況が続く場合は、一人で抱え込まずに専門家に相談することを検討してください。
- つらい記憶が原因で、1ヶ月以上よく眠れない日が続いている
- フラッシュバックが頻繁に起こり、日常生活に支障が出ている
- 気分の落ち込みが激しく、何事にも意欲がわかない
- 自分を傷つけたいという気持ちが湧いてくる
相談先としては、カウンセラーや臨床心理士、心療内科、精神科などがあります。専門家は、あなたの話をじっくりと聞き、トラウマへのアプローチ(EMDRや認知行動療法など)を含め、あなたに合った適切なサポートを提供してくれます。
目を瞑ること自体が睡眠に与える効果
つらい記憶を呼び起こすきっかけになり得る「目を瞑る」という行為ですが、本来は質の良い睡眠に不可欠なものです。
目を瞑ることで、目から入ってくる膨大な視覚情報が遮断されます。これにより、脳は「休息モード」に入りやすくなり、心拍数や血圧が下がるなど、体全体がリラックス状態へと移行していきます。つまり、目を瞑ることは、心身を眠りに導くためのスイッチのような役割を果たしているのです。
今、目を瞑ることがつらく感じているのは、記憶と結びついてしまっているからです。この記事で紹介した対策を通じて、本来のポジティブな役割を取り戻していきましょう。
まとめ:つらい思い出と向き合い、穏やかな眠りへ
目を瞑るとつらいことを思い出すのは、夜に脳の働きが内省的になることや、リラックスによって心のガードが緩むことが原因です。しかし、思考をコントロールする練習や、リラックス習慣、考え方の工夫によって、その苦痛は和らげることができます。
まずは、今日からできそうなことを一つ試してみてください。そして、もし自分一人の力ではどうしようもなくつらいと感じたら、ためらわずに専門家の力を借りてください。つらい記憶に夜を奪われることなく、あなたが安心して穏やかな眠りにつける日が来ることを心から願っています。
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、医学的アドバイスに代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、医療機関や専門家にご相談ください。